彼らはいま、「世界最小の公園」でくつろいでいる
コーヒーとドーナツを手にした男性2人が、路上に座り込んで朝から談笑しているこの写真。見たまんまですが、注目して欲しいのは彼らが腰を下ろしている場所。脇すれすれを自動車がすり抜けていきます。ここは片側2車線、目抜通りのど真ん中。だけど…公園!?
直径わずか60センチ!?
「Mill Ends Park」
フツーならば、これは中央分離帯の「植え込み」です。けれど、れっきとしたポートランド市の公園だというんだから。しかも厳密にいえば、公園とされるのは直径わずか2フィート(60.96cm)の円形の穴のみ(驚)。
この植え込みが、いかにして公園と呼ばれるようになったのか。ポートランド市のHPにこんなストーリーが紹介されていました。はじまりは70年前のこと。ひとりの男性のある行動に端を発した、中央分離帯にできた穴とポートランド市民のほのぼのする物語をどうぞ。
置き去りにされた「穴」を舞台に
人気コラムがスタート
およそ70年前の1946年、第二次大戦の帰還兵としてこの地に戻ってきたDick Faganさんは、地元紙「オレゴン・ジャーナル」で新たな人生をスタートさせました。オフィスはちょうどこの通りの目の前。
あるとき、中央分離帯の真ん中に街灯建設のための作業が始まりました。ところが、なぜかDickさんがオフィスの2階から見下ろす、この場所だけは最後まで街灯が立たず、台座と口をぽっかり開いた穴だけが残ってしまいました。
Dickさんは雑草だらけになった穴をきれいにして、花を植えることに。さらに当時、担当していたコラムの題名『Mill Ends』にちなんで、この穴を公園に見たて、架空の物語を紹介、1969年にDickさんが亡くなるまで、町の人たちに人気のコラムだったようです。
Dickさんが大切に育て、物語の主要な舞台であり続けた架空の公園は、彼の死後、町の人々によって大切に守られ、季節ごとの草花で美しく飾られていたそうです。そうして1976年、市は正式にこの穴を公園と制定。こうして「世界でもっとも小さな公園」は誕生しました。
ちょっぴりキケンな場所にある
町の象徴
地元の人たちから大切に愛され続けるポートランドのアイコン。毎年、ここでコンサートやピクニックが行われるというのですが、きっと歩行者天国にしてのことでしょう。
世界最小のミニマルパークを前に記念撮影、ただしくれぐれも道路の真ん中だということはお忘れなく。