あなたは、蚊に殺されない自信がありますか?「人類 vs 蚊」

どんな動物よりも多く、人間を殺している。
人間の死因としては、戦争よりも多い。

これは、「蚊」がもたらす脅威の話。日本では梅雨から夏にかけて一気にあの不快な音を耳にする機会が増える。ただの炎症による「かゆみ」だけで済むならまだしも、そう簡単な話ではなさそうだ。

ここでは、ディスカバリーチャンネルアニマルプラネットで特集される番組「人類 vs 蚊」より、その因縁の戦いについて見ていきたいと思う。

戦いは300年前から
本格化

その歴史は、300年ほど前に遡る。

デング熱、黄熱、マラリアといった感染症は、約300年前からアフリカ大陸をはじめ、アメリカ大陸へと拡散。さらに、ジカ熱、ウエストナイル熱、チクングニア熱の3種も猛威を振るい始め、この16年ほどでさらに広がりを見せている。

では、なぜそれまでアフリカ大陸や東南アジアといった熱帯のエリアで蔓延した病気が、北アメリカやヨーロッパにまで広がったのか?

理由は大きく2つ。「温暖化」と「グローバル化」だ。

つまり、地球全体の気温が上がっている影響で、今まで熱帯域にしか生息していなかった蚊が、平均気温の上がった北の地域でも生息できるようになったこと。

グローバル化の影響は、厳密には2つの理由に分けられる。1つは、飛行機の発達で人々の移動がより速く、広域に及ぶようになったこと。「エアポート・マラリア」という言葉があるほど、世界中の空港で感染への注意喚起がされていることはご存知の方も多いだろう。もう1つが輸入品の流通だ。たとえば世界中に輸出されるタイヤは、蚊の孵化にうってつけの場。蚊は水により孵るので、雨などに濡れたところに溢れ出すといったサイクルが広がっている。

2000年以降、短期間でジカ熱などの患者が爆発的に増え、また北アメリカやヨーロッパでも患者が出てきてしまったのには、こういった背景があるという。

「ジカ熱」と戦う人々

なかでも「ジカ熱」は、大きな社会問題にまで発展している。妊婦の場合は、母体のみならず、その子どもにまで影響を及ぼすことがある。一番問題視されているのが「小頭症」という発達障害にかかるリスクが高まることだ。

さらに厄介なことに、ジカ熱は主な症状が出ないため、妊娠して数ヶ月経過したあとの超音波診断にならないと、子どもの感染が確認できないのだ。

波紋を呼ぶ
遺伝子組み替えの「蚊」

では人類は、このまま蚊に対して白旗を掲げることになるのだろうか? 当然そうではない。

世界中の科学者や昆虫学者、薬学者や製薬会社、自治体などが立ち上がり、感染病を食い止める方法を研究し、何より子どもたちが犠牲にならないように、日々戦っている。

とはいえ、蚊は根絶したほうがいいとも言い切れない。食物連鎖の破壊に繋がるのではないか、という議論にも広がる問題だからだ。

従来の駆除剤などをヘリコプターから撒く対処法は、人間に対して健康上と精神衛生上の負担をかけてきた。また、このような駆除剤を撒くことで生態系にも危険を及ぼす。

少しでもこのような生態系や人間の暮らしに負担がかからないようにと、新たな提案として、生物工学を専門とする企業「OXITEC」は、遺伝子組み換えをしたオスの蚊を放出するという研究も進めている。

どういうことかというと、人間の血を吸うのはメスの蚊のみと言われているので、遺伝子組み替えされたオスと交配させることによって幼虫を産ませないようにし、蚊の数を減少させるといった対策だ。

ビル・ゲイツ
「マラリアは根絶できる」

ビル・ゲイツも、マラリアなどの撲滅を推進するひとりだ。毎年約100万人がマラリアにより亡くなっていて、つねに2億人が苦しみ、そのほとんどが5歳未満の子どもという現実がある。

彼は、2009年の「TED」でも多くの人に訴えかけた。科学者だけで解決できる問題ではなく、様々なバックグラウンドを持った人がこの問題と向き合っていくことが大切だ、と。

たとえば、メディアがもっとマラリアの現実を伝え、社会学者は蚊帳の普及率向上の方法を研究し、数学者は薬や道具による解決策をシミュレートし、製薬会社の専門家も開発に携わり、裕福な国々からは援助を強化する。

このように、誰もがこの問題に対して意識を持つことができるのだ。ゲイツは「マラリアは根絶できる」と、信じて疑わない姿勢を貫く。

ひとりが感染したら、世界中の人たちも感染してしまうーー。そんなパンデミックが、ものすごく身近な将来の脅威として描かれているドキュメンタリー。2017年7月6日(木)の21:00〜22:30、ディスカバリーチャンネルアニマルプラネットにて同時放送予定だ。

Photo credit:Discovery Communications
Licensed material used with permission by Discovery Communications
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。