空気ダクトに見せかけた「オトナの秘密基地」
秘密基地──。この言葉の響きに心が踊るのは、きっと僕だけではないはず。オトナになっても、いや、むしろオトナになったからこそ、現実から逃避できたり、誰にも邪魔されない特別な空間が必要なのかもしれない。
イーストロンドンのリージェント運河沿いに建築された「H-VAC」は、まさに、オトナの秘密基地。パッと見は、空気ダクトにしか見えない。しかし、内部にはロフトのような空間が広がっている。
秘密基地への憧れは、どうやら万国共通のようだ。
128の提案から選ばれた
ベストソリューション
このH-VACは、ロンドンに拠点を置くデザインスタジオのPUPが手がけたもの。同社の強みは、社会や環境に配慮した建築デザインにある。
今回のプロジェクトは、The Architecture Foundationがオーガナイズするロンドンの建築コンペティションで優勝したもの。課題になったのは、都市での代替生活。それを遊び心のあるデザインでクリアして、じつに128もの提案の中から選ばれたそうだ。
ビルの屋上に設置されたフェイクの空気ダクト。これは、NYの有名な給水塔をモチーフにしたものなのだとか。
■外観
シルバーに輝く外壁は、飲料水の廃棄素材。それが、まるで蛇のように曲がりくねった構造を可能にしている。
■内装
内部は、ちょっとした迷路のよう。
ロフトのような上階へのアプローチ。ツリーハウスのような印象もある。
上階には、ロングチェアーが2つ設置されている。目隠し部分からは、柔らかな光が差し込む。外の運河を眺めていたら、時間の経つのを忘れてしまいそうだ。
ビルの最上階と屋上は、増設した階段によって結ばれている。どこまでも秘密基地っぽい。
H-VACは、先月はじめに一般公開されたようだ。今後は、歴史的な建造物や優れた建築が一般に公開される「Open House London」で、再びオープンになる予定。9月16日、17日にロンドンに立ち寄る予定がある人は、ぜひ、このオトナの秘密基地を体験してみてもらいたい。