モチベーションを大きく左右する「職場環境」について。
「我慢と忍耐が美徳」という根性論がありますが、それは果たして本当に自分のためになるのでしょうか?
上司からの侮辱、同僚からのプレッシャー。これらが過度になると「有害な職場環境」が生まれます。ライターMarcel Shwantesの記事を読むと、どれだけ仕事に影響を与えるかが見えてくるはず。環境に自ら適応していくためには、氏が唱える6つの改善法が参考になるかもしれません。「Inc.」でも反響が大きかったようですよ。
私は、ここ数年で有害な職場について本を出版できるほどたくさんの冷ややかな行為を目の当たりにしてきました。ありがたいことに、名声を轟かせるジョージタウン大学でビジネスの教授を務めているChristine Porath氏が、このトピックを網羅した素晴らしい本を執筆しています。
20年ほどに渡り、職場での無礼な行為や感情的嫌がらせ、いじめ、そしてその他有害な行動を注視してきた彼女は、それら行為が増加の傾向にあることを本書で証明しています。そのせいで金銭的ダメージを受ける会社と、精神的に苦しむ社員が実在するのが現状。彼女はニューヨーク・タイムズにこう語りました。
職場での有害な行為は、集中力の低下に繋がります。4,500人ほどの医者、看護婦、そしてその他病院職員を対象とした調べによると、不正な言動や見下すような態度、それから侮辱する行為を含む乱暴な行為の71%は「医療ミス」を理由とし、27%は「患者の死」としていました。
有害な行為が行き交う環境で働く人は、目の前にある情報を見落としがちなのです。与えられた情報をうまく処理することもできなければ、効率的に噛み砕くことも一仕事。
例として挙げられるのは、「僕が聞くまで君の意見は必要ない」の一言、それから社内コミュニケーションのタイプミスを見落としたがために怒鳴られること。このような場面に遭遇する回数が増えると、社員たちは徐々に貢献する回数が減り、自分への信念を失っていきます。
今回は「上司の有害な行為」、そして「同僚の有害な行為」といったふたつの項目に分けて特徴を記していきます。いずれにしても、これら行為は人のやる気を消失させ、仕事の質や効率性を下げてしまうもの。身に覚えのある言動がいくつあるかチェックしてみてください。
上司からの8つの有害な行為
- 興味を失ったことを理由に、会話を立ち去る
- 会議の途中で会議室を退室せずに電話をとる
- 大勢の人の前で人の弱点を指したり、あざ笑ったりする
- 部下の組織での「役割」や「肩書き」をいちいち強調する
- 同僚や部下の貢献や業績を自分の手柄にしようとする
- 問題が生じると、周りに責任をとらせる傾向にある
- 情報を独占し、共有しないため、社員を困らせてしまう
過ちを決して認めず、責任をとろうとしない
同僚がする9つの有害な行為
- 発言がネガティブであったり、批判的
- 上司から評価を得るために受動的攻撃性や直接的でない会話がなされている
- 語る価値観が行動から見て取れない。言葉と振る舞いが矛盾しているため、誠実さに欠ける
- チームや部署との連携がうまくとれていないため、業務が滞る
- 周りに対する嫉妬心や競争心が健全でないレベルやると言ったことをやらない
誰かを非難するために悪口や噂を囃し立てる
業務をこなすために必要な情報の整理力、集中力、そして自制心に欠ける
変化に順応するのが不得意である。周りを巻き込んだ上で流れを滞らせる
そこで、クリーンな職場を築くために取り入れられることをPorath氏が紹介します。
01.
笑顔を大事にし、
感謝の気持ちを伝える
「人の話を聞くこと、笑顔を見せること、何かを誰かと共有すること、そして感謝の気持ちを伝えることは、周りに大きな影響をもたらします」
とPorath氏。ある調査によると、笑顔で「ありがとう」と口にするだけで、人の温かさを感じる度合いは27%増し、「有能である」と感じる度合いは13%ほど上昇、そして礼儀に叶った行動を起こす確率は22%ほど上がったのだそう。
02.
周りに情報共有をする
自分がこなしている業務が、会社のミッションや策略にどう当てはまるのかを理解することで、人はより効果的に与えられたタスクに取り組むようになります。
03.
礼儀正しく振舞う
周りに礼儀正しく気を配ることができると、のちに自分にいい話が転がってくるかもしれません。
「生命工学の会社で行われた調査によると、礼儀正しく振る舞える人はそうでない人の二倍ほどリーダーとして見られる傾向にありました」というPorath氏の一文が、その証拠。
04.
敬意を示す
「人は尊敬されると、自尊心が高まる上、権力を持っているように感じます。礼儀正しさとは人のポテンシャルを切り開きますが、無礼な行為は人をベストから遠ざけてしまいます。つまり失敬な態度は、人の肩身を狭くさせてしまうのです。
どの志願者を雇うべきなのか、誰がチームで最も効率的に動けるか、誰が最も影響力を持っているのか。これらに該当する人材を考えたときに「尊敬できる人」という印象づけができていると、一番に浮かんできやすいものです」
05.
視線を合わせるときは、
10/5の法則を思い出す
ルイジアナ州最大の医療供給者であるオシュナーヘルスシステムが提案したこの法則は、 従業員が10フィート圏内にいるときは視線を合わせ、5フィート圏内にいるときは挨拶をする、というもの。10/5の法則を導入してからは、オシュナーの患者様の満足度も上がり、患者様を通した紹介者も増えた、とPorath氏。
06.
会議中はPCよりノート
Porath氏は自身の著書に、数十億ドル規模の企業が導入した先鋭的なアプローチを記しています。
毎週行われる会議で、社員が複数のことを同時進行しないように、企業の幹部が会議室の扉の横にスマートフォンを入れる箱を設置したそう。スマホを取り除くことで、彼は集中力を存分に発揮し、周りの意見に耳を傾けられる環境を目指しました。なんと会議ではパソコンの使用も禁止されていたそう。
このアプローチを導入したての頃、社員たちは箱の中で忙しなく鳴るスマホたちを、まるで「コカインを欲しがるかのように」気にかけていたそう。ですが、数週間続けてみると、効率性は著しく上がり、「会議の時間は通常の半分にまで短縮された」とPorath氏は綴っています。
幹部の方の話によると、社員たちは会議により専念することができ、積極的に発言する人数も増え、会議を楽しむようになった人もいたのだとか。