日本一のテレビっ子が選ぶ、いま見ておくべき「ネット番組」
ネットのバラエティ番組に有名芸能人が続々と出演するようになってきた。
地上波とネットで見る有料番組では、規制や予算が違うのはなんとなくわかる。けれど、具体的にどんな違いがあるんだろう。この人ならきっとわかりやすく教えてくれるはず!ってことで、てれびのスキマさんに話を聞いてみた。
1978年生まれ。テレビっ子ライター。2015年に福島県から上京。全録態勢で今日もテレビを見続けている。著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮新書)など。「週刊文春」はじめ、雑誌連載も多い。
ネットの番組は
テレビが便利で面白くなったような存在
「『地上波は不便』という話をよく聞きます。ネットの番組って、スマートフォンやタブレットはもちろん、さまざまな媒体でシーンや時間を選ばず自由に見ることができるので、僕は便利で面白いテレビのような存在だと思っています。いまはAmazonプライム・ビデオなどのネット番組もテレビ画面で簡単に見れます。
そもそも番組をすべてアーカイブできるというのはかなり大きなポイントで、地上波の場合、見逃してしまった番組を後から見返せないこともあります。そのため、作り手も前回見れなかった人のためにシーンを繰り返し挿入しなければなりません。見ていた人にとっては煩わしいもの。それが必要ないので見る側にストレスが少ないんです」
自主規制や視聴率を気にせず入れられる
「無駄なシーン」が重要
「地上波同様、視聴者数を上げることは求められると思いますが、がんじがらめの自主規制や毎分の視聴率を気にしなくてもいい。だから無駄なシーンも入れられます。コレ、じつは見る側にとっても重要だったりします」
「時間という枠の制限がゆるいのも大きなポイントでしょう。そもそも面白さを伝えるために最適な時間というのは各番組で異なるはずですが、地上波の場合、決められた枠に当てはめるように作らなければなりません。ネット番組では、その回ごとで最適な長さに編集すればいいので、作る側にも見る側にも快適だと思います」
おすすめしたい番組はコレ!
「ひとつ目は『戦闘車(※)』。ネット番組の可能性を切り開いたとされる『ドキュメンタル』に続いて配信をスタートした番組です」
※車好きで知られる芸能人たちが浜田雅功軍VS千原ジュニア軍に分かれ、それぞれの“戦闘車”に乗り込んで、さまざまな試合に挑むデンジャー(危険)とエンターテイメントをかけ合わせたデンジャーテイメント。
「もうひとつは『有田と週刊プロレスと』。有田哲平さんが、毎回1冊の『週刊プロレス』を、プロレスに詳しくないゲストに解説する番組で、低予算で趣味性を強く打ち出す、旧来的なネット番組の典型例です。それを超一流の芸人がやるとこんなにも面白くなるのかと感心して、いまでは自分の好きなものの魅力を他人に伝えることの最高の教科書になっています。
とくに、本来の地上波バラエティが好きな人は前者がオススメ。スケール感やなんでもあり感、バカバカしさなどテレビならではのすべての要素が『戦闘車』に詰まっているんじゃないかなと思っています」
「出演者だけでなく、制作陣も地上波テレビの第一線で活躍されている方なので、画面のクオリティは地上波に遜色ないどころか、凌駕しています。また、さっきも少し話しましたが、地上波では時間などの制約で切られてしまいがちな出演者のちょっとした無駄話も活かす編集もされているところもポイントですね」
「単純に命の危険、怪我を負う危険、人によっては自分の愛車が壊れてしまう危険と向かいながら覚悟を決めて対戦に挑むというヒヤヒヤする部分ももちろんあります。でも、それ以上に、いまではなかなかできなくなった、やりたい放題できる自由な環境を与えられ、そこで下手なパフォーマンスを見せられないという芸人としての覚悟やプライドが画面越しにビリビリと伝わってくるんです。みんなで爆発音に歓声をあげながらワイワイ盛り上がって見るのも楽しい番組だと思います」