人生で初めて飛行機に乗り遅れてしまった。きっと「waya」のせいだ

「お前はもう、飛んでいる」。

初雪の朝に「延泊」が決定した。暖かいドミトリールームで、ふかふかの布団に包まれて、目を覚ましたのは午前10時。搭乗予定だった羽田行きの飛行機は、すでに出発している時刻だ。寝坊した無念を決めゼリフで消し去り、ゲストハウス「waya」から真っ白になった札幌の街並みを眺めていた。ちょうど、1年前の出来事である。

時間を忘れてしまう
ゲストハウス

大学の長い長い夏休みを終えたばかりの友人に、リピートせずにはいられないゲストハウスがあると聞いて、紅葉の秋も終盤にさしかかった北海道へ飛んだ。向かった先は、札幌市内にある「waya」。ここは、時間を忘れてしまうほどに居心地の良い空間なのだ。

電車を乗り継ぎ、最寄りの菊水駅に到着。交通量の多い大通りから離れ、静かな住宅街を抜けていくと、ブラウン色の建物が見えてきた。

「ここか」。

友人がしきりに話していたみやげ話を思い出しながら、チェックインした。

清潔感のある室内は、男女混合と女性専用のドミトリーがあり、個室も準備されている。共有スペースのお風呂や洗面台が綺麗なのは、宿泊先で水回りが気になるユーザーにとってはありがたい。そして、受付のフロアは19時からBARへと様変わりし、夜のにぎわいをつくりだす。「気に入った」。紹介してくれた友人にLINEで第一印象を伝え、ウェルカムドリンク1杯無料チケットを持って、談笑する声が聞こえ始めたBARへと足を運んだ。

ここには、国内外から多くの観光客が集まってくる。オープンから3年と、ゲストハウスとしてはまだまだ新しいほうだけれど、落ち着いた雰囲気の老舗旅館のようにゆったりできる場所なのだ。

誰もが「ただいま」と
言える居場所づくり

ここは、「一緒に起業しよう!」の一言から始まった。立ち上げたのは、東京の大学を卒業したばかりの若者3人。築43年の民家を改築して、ゲストハウスをオープンしようと考えた。

クラウドファンディングを活用し資金の一部を集め、「すべての人がただいまと言える居場所をつくりたい」というコンセプトに賛同した総勢200名以上の人たちが改築作業を手伝い、2014年の11月にオープン。多くの人を巻き込んで行われた居場所づくりが、wayaにゲストだけでなく地元の人たちも集まるきっかけとなった。そして、訪れる人たちを優しく受け入れてくれる「地元感」が、居心地の良さを生んでいるのだと思う。

「たまには寝坊することだってあるよ」。スタッフさんに慰められていた僕のもとへ、一通のメールが届いた。羽田便、大雪のため欠航。不幸中の幸い、か。「今夜も、宿泊します!」。飛行機の振り替え便を翌日に予約し、元気よく延泊することを伝えた。

チェックアウトの時、「いつまで続くか分からないけど、また来てね」と、スタッフさんに言われた。その時は、本気か冗談か分からず戸惑ってしまったけれど、今ではおどけて言っていたんだなということがわかる。僕が訪れる半年前、旅することの素晴らしさを、多くの人に伝えたいをコンセプトに、新店舗「Guest House yuyu」を新設している。オープン以来、毎年新しいことに取り組んでいるゲストハウス。ただいまと言える居場所づくりは、地道に広がっている。

Licensed material used with permission by 札幌ゲストハウスwaya
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。