札幌の旅はここから。北18条のコミュニティハブ「アンタップトホステル」へ
ホテルやホステルを、ただ泊まるためだけの場所としてではなく、人を繋ぐコミュニティの中心として考えること自体は、決して新しくはない。1999年にアメリカ・シアトルで創業したエースホテルはそういった考え方を取り入れ、ホスピタリティ産業に大きな影響を与え、2010年代のウエストコーストカルチャーを牽引した。
同じように新しいコミュニティ・カルチャーが、北海道・札幌市の北18条駅付近に芽生えはじめている。その震源地と言えるのが「UNTAPPED HOSTEL(アンタップトホステル)」だ。
A面がポートランドで
B面がブルックリンみたいなホステル
扉を開けると、居心地のいいレストランになっている。ここは、札幌でもハイソなエリアとされる円山から引っ越してきた「ごはんや はるや」だ。アンタップトホステルのなかで運営されていて、その脇にあるのが、目当てのホステルのカウンター。
かつてバーカウンターとして長年使われてきた、重厚な木材を再利用した店構え。質のあるものを見抜き、現代に再解釈してフィットさせる手法に、ハンドメイドカルチャーが根付くポートランドのホステルを思い出した。
かと思えば、ビルの奥には別棟の民家がある。
こちらが、アンタップトホステルの「B面」だ。夏になれば、カウンターごしにBBQがたしなめるという、「A面」とはまったく違う世界観だ。
別館のラウンジには、DJブースが備わっている。A面のポートランドに対して、こっちは常に何かが生まれているブルックリンのようだ。多様性と人々の息づかいを感じさせる。
確かにここなら、いろいろな人が集まってきそうだ。アンタップトホステルのオーナー、神輝哉さんは「ここをきっかけにコミュニティが生まれたら嬉しいですね」と笑う。
アンタップトホステルには
「街遊びの価値観」が溢れている
神さんは現在、38歳。
「若いとき、街で遊ぶことが多くて、いつもぼんやり自分の場所を持ちたいなと思っていました。居酒屋でもバーでも良かったんですが、自分のスキルを棚卸ししてみたら宿がちょうどハマった、という感じでしょうか」
うなぎ屋を改装したというアンタップトホステルの内装は、落ち着きはじめた30代の感性にマッチする。このテイストは、神さんの遍歴に結びついているという。
「新しい感じ……未開拓、まだ見たことのないものに触れられる、そんな意味をこめてUNTAPPED(未開発の、という意)と名付けました。僕らの世代って、まだ成長を止めたくないし、完成されたものに価値を感じないというか……。自分が10代や20代の頃に触れてきた音楽を中心としたカルチャーをベースにしつつも、そこだけじゃなく解き放たれた間口の広い宿として利用してもらいたいと思っています」
立ち上げ期の2014年頃の札幌では、神さんもリスペクトしているという「サッポロッジ」などを中心に一気にホステルが増殖。今では数十もあるという。
「30代のオーナーが頑張ってる
いいお店が増えました」
アンタップトホステルの最寄り駅は「北18条駅」。神さんは、特にこの土地に思い入れがあったわけではないという。
「物件ありきですね。大きさや、予算や、法規を照らし合わせていったらここが残りました。札幌駅の北口から北18条駅までが一円のエリアだと思うんですが、いまは『時計のない喫茶店』『みち草バザール』『ハヤシ商店』『ログ』など、30代のオーナーが頑張ってるいいお店がたくさん増えました。『アンタップトホステルがあるからこの辺に店を構えたんだよ』と言ってもらえることもあって、とてもうれしいです」
神さんが街遊びで作ってきたコミュニティは、札幌市内に点々としている。
札幌駅の南側に広がる「いなたいエリア」や、中央の「きらびやかなエリア」、そしてこの北側で芽吹きつつある「落ち着いたエリア」。これらがつながっていくことで面白いことができたらいいですね、と神さん。
日本随一の観光都市、札幌において「点」のひとつを担うこれからのホステルの形に期待せずにはいられない。
「UNTAPPED HOSTEL(アンタップトホステル)」
北海道札幌市北区北18条西4丁目1-8
TEL:011-788-4579
公式HP:http://untappedhostel.com/
公式SNS:Facebook、Twitter、Instagram