枯れた大地に魅せられた「砂漠フォトグラファー」。
砂漠はとても静かだ。人が作ったものなどひとつも存在せず、ただ目前に広がるのは、果てしない砂の大地と空だけ。
Luca Tomboliniさんは大判カメラを使用して、世界各国、人類誕生の原風景を撮影するミラノ出身のフォトグラファーです。生命の息吹も人々の活動も消え去った風景を切り取る彼は、無にも等しいその場所にどのような意味を見いだしているのでしょうか。
私たちが受け入れている文明の価値。
そんなもの、ほとんどないに等しい。
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Lucaさんは大学生の頃から写真に没頭し、写真という表現方法そのものに深く惹かれていきました。Lucaさんにとって写真を撮るという行為は、「永遠に存在する可能性のある瞬間」を圧縮することに等しいと言います。
それは時間を止める、もしくは時間という概念を超越する経験なのです。その認識は次第に、時間の始まりから今まで存在した「場所」そのものの価値を写真として切り取りたいという思いに変わりました。
だからこそ、彼は一見虚無にも等しい砂漠を撮影します。
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私たちが受け入れて生活している文明の価値は、命そのものの原則から見ればほとんど無に等しいものです。私たちが今まで手に入れた知識、あらゆる技術、生活がなぜ、どのようにして生み出されたのか。そして私たちが生きているこの「場所」とは何なのか。
その問いに、どうして答えることができるでしょうか。
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岩は昔、原始の海に存在していました。 生命のサイクル、無数の世界の多様性が広がっていった世界。 そこにはどれだけの月日が流れたのでしょう。その悠久の時間に思いをはせるだけで、すべてが遠ざかり、私の小さな思考は消えていくような気がします。
ここにあるすべてはシンプルで、それ以外何も写りません。私一人が、ここでは異質なのです。
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はじめの人類の夜明けは、宇宙に神性を必要としたところからはじまったのかもしれません。私はなぜ存在するのか。その問いにいきつくことこそが人類の強さだと思います。意識と無意識の果てに、自己の創造がはじまるのです。
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私が砂漠を旅する理由は、日常から遠ざかって、社会や日常生活から離脱することで本当の自分を見いだすためです。長い時間をかけてある場所に赴き、人間の起源を想う。
その感覚を、私は写真に収めたい。そこに写し出されるのはきっと、もうひとりの私だと思います。社会的な自我を離れた場所で見つけた新しい感覚は、きっと私の鏡となるでしょう。
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時間、空間、そして自己とは何か。
Lucaさんが社会生活を離れた末に行き着いたのは、そんな人間の根源的な問いでした。その果てしない問いに答えるためのひとつの手段が、彼にとっての写真です。
社会で生きることに疲れたとき、Lucaさんの写真は私たちに大切なことを思い出させてくれるヒントになるかもしれませんね。