AIには創りだせない、生きる花器。
ゆがみ、ねじれ、すき間、いびつな形。
これは3Dプリンターの技術を真似て、人の手で作られた花器。
手がけるのは、オーストラリアのアーティストZhu Ohmuさん。「Plantshukuroi(植物繕い)」というシリーズで、テクノロジーの進歩が目覚ましい今日だからこそ、「人間にしかできないこと」を表現した作品でだそうです。
プログラムにはできない形
最新テクノロジーを、あえて人の手を使って再現することで、人間にしか作れないものを作りたかったのです。(by Zhu Ohmu)
プログラムされたとおりに同じ動きを繰り返す機械とは異なり、人の手は様々なものに左右されるもの。
素材の乾き具合や、手の湿り気、疲労感や緊張感などの要因が絡み合い、そのときどきの一瞬にしか表われない味わいがあります。
ふたつとして同じものはない、その偶然性こそが「人間らしさ」なのです。
日本の技法「金繕い」から
インスピレーション
Zhu Ohmuさんは、日本の「金繕い」の技術から、この作品のインスピレーションを得たのだそう。
「金繕い」とは、割れてしまった陶器を、金を使ってつなぎあわせる技法のこと。割れてしまっても、そこにまた新しい表情が生まれ、その偶然に見せる一度きりの表情を大切にするこの技法に、日本の「わびさび」を感じ、インスピレーションを得たと語っています。
このシリーズ名も「金繕い」から名前を取り、「Plantshukuroi(植物繕い)」と命名。割れてしまった陶器を金でつなぎあわせるように、この花器のすき間が空いてしまったところを植物が埋める。変化し続ける植物が、このいびつな花器を完成させるのです。
テクノロジーが進歩した現代だからこそ、手仕事の価値が見直されるべきなのかもしれません。