そう簡単には再現できそうもない、発祥の地の「きりたんぽ」

比内地鶏、ハタハタ、稲庭うどん、きりたんぽ鍋。

いずれも秋田県の郷土料理だ。今や全国で食べることができるほどの定番だが、郷土料理は地元の人の話を聞きながら食べるのが楽しい。

きりたんぽ発祥の地に
行ってみた

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秋田県北東部、青森・岩手の県境に接する鹿角市(かづのし)。かつては鉱山によって栄えた過去を持ち、きりたんぽ発祥の地とされている。

「“たんぽ”は、家でもよく食べます」と地元の人が言う。

炊いた白米を半分ぐらいの加減でつぶし、木の棒に伸ばしつけて焼いたものが「たんぽ」。それを切ったら「きりたんぽ」になるそうだ。なるほど。

秋に新米ができて、寒くなった頃には家族や仲間内での「たんぽ会」なる鍋パを開催するらしい。

はじまりは、山の中

かつて、2〜3ヶ月ほど山小屋で暮らしながら作業をした木こりたちは、里から米と味噌を持ち込み、炊いたご飯は火で温めながら食べていた。少しでも早く温まるようにご飯を木の枝に伸ばしつけ、そばに生えていた山菜やきのこ、近くにいたウサギなどの小動物を捕まえて鍋にしたのがきりたんぽの由来。

起源は諸説あるそうだが、言われてみればなんとなく木こりたちの姿が想像できる話だ。

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伝統的なきりたんぽ料理を教えてくれたのは「きりたんぽコーディネーター」でもある加藤照子さん。鹿角市の中心地できりたんぽと古代米料理が食べられる飲食店「美ふじ」を経営し、ランチから夜間までやさしい笑顔を見せている。

地元の人たちから「鹿角できりたんぽ食べるなら美ふじだよ!」と繰り返し勧められたところをみると、どうやら地元に愛されつつ観光客にも人気があるという「名店のセオリー」を押さえているようだ。

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定番の具が、まちがいない

ダシは比内地鶏のスープ、具は鶏肉、きのこ、ゴボウ、ねぎ、糸こんにゃく。

きのこはナラタケ、地元では“サワモダシ”と呼ばれ、おいしいがゆえに遠方にまで出回らない地元の名産品のひとつだ。こんにゃくは、かつて炭鉱の男たちが吸い込んだ粉塵を排出しやすくする目的で入れたのがきっかけとされていて、今では食べやすいように糸こんにゃくが主流になっている。

それからきれいなグリーンを保つように最後に入れられたのが、たっぷりのセリ。秋田はセリの根っこまで食べることでも有名だ。

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三等分に斜め切りされたきりたんぽは、崩れないようにあまり煮込まないのがポイントだそう。香ばしく焼かれた外側と、真ん中の穴から染み込んだスープのジューシーさが相まって、口の中でなんとも言えないおいしさが広がる。

加藤さんは話をしながらあっという間に仕上げてくれたが、ダシの割合い、具の火の通し方、たんぽの焼き加減や全体的な煮込みの度合いなど、いやいやこれはそう簡単に再現できそうもないクオリティ。まちがいなくDNAを底力にした熟練技だ。

発祥の地である誇りと、雪国ならではの凛とした姿。これまであまり知らなかった「きりたんぽ」の魅力の深さを知った。

また食べに行きたい、発祥の地へ。

取材協力:美ふじ
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