大事な人との思い出を、捨てることができない人へ
あと2日で終わってしまう、博物館の話をしようと思う。
以前も記事にして取りあげた、失恋博物館。3月31日に、はじめて日本に上陸したのだ。ただし、テーマは“別れ”。
恋人だけでなく、友達や恩師、家族、あらゆる別れの痛みを象徴したものが、真っ白な空間のなかに詰め込まれている。
撮影は自由に。展示されているものに触ることは禁止されているけれど、ケースに入っているわけでもないから、ぐっと距離を詰めて、小さな傷や汚れまで見ることができる。
横には、持ち主だった人のメッセージや物語が書かれていて、いま自分の目の前にあるものに、誰の、どんな思いが込められているのかを知る。
“それでも生き続ける”という
強さを象徴したものたち
浮気をした彼氏に、昔もらったお土産
離婚した妻からのプレゼント
幼い頃に死んだ、父の声が録音されたカセットテープ
旅立つ時に、おばあちゃんがくれたシワシワのドル札
命日に、息子が着ていた洋服
あまりにもリアルで。
持ち主の人生を、今まで支配してきたであろう感情が、空気をつたってカラダのなかに入ってきそうだった。
新品のように綺麗なものなど、ひとつもない。
まぎれもなく、展示されているすべてに、誰かの痛みが滲んでいる。
手放すことを選ぶのは、「それでもこの先の人生を生きていく」という意志に他ならなくて、人間が持つたしかな生命力なのだと、気づかされた。
どんな別れを経ても、もうこの先、生きていけないと思う日々が続いても、心は治癒する力をもっている。
もし、あなたがいま
痛みを抱えて立っているのなら
きっと、手を引いてもらえるよ。今より少しだけ、一歩だけ。
そのために、撮影できるようになっている。誰かのリアルを、自分の手で切り取って、新しい思い出に更新することを、許されている。
もし今回、東京で出会うことができなくても、世界中を旅しているこの博物館と縁があれば、きっとどこかで。
展示品は、すべて一般の方々からの寄付。捨てられずにいた忘れ形見の、新しい居場所を探している人は、こちらまで。