あの日、あの時……オトコが放った最悪なセリフvol.2

思い出してさめざめと泣くわけじゃない。こんなオトコに二度と引っかからないよう、私の、そして誰かの教訓にするために。

実際に存在した、最悪なセリフを取材してみました。

すべて、本当の話。

二股なオトコ

リナ(仮名)・29歳

どうして見てしまったのだろう。

後悔しても、時すでに遅し。私が手にした彼氏・マサヒロの携帯には、はっきりとした証拠が表示されていた。

『今日は久しぶりのデート楽しかった♡ありがとう♡マサヒロも忙しいと思うけど、またご飯たべに行こうね』

絵文字に溢れたメール。デートという言葉。それだけでも私を落ち込ませるには十分だったけれど、何よりも攻撃力が高かったのは……。

 

* * *

 

マサヒロとは仕事を通じて知り合った。出会ってしばらくの間は儀礼的な会話しかせず、私的な会話をすることはなかった。しかし、いつだったかビジネスの場でほんの少しだけふたりきりの時間ができた。

「今日はなんか疲れてます?」

あくまでもさり気ない彼の言葉に、思わず赤面してしまう。

「あ、いいえ……昨日、飲みすぎちゃって」

隠していたつもりなのに、二日酔いがバレてしまった。けれど、これをきっかけに、彼もお酒が好きだということがわかり、飲みにいく約束を交わすことに。仕事という共通項もあり、私の知人を紹介したり、マサヒロの仕事仲間の飲み会に連れていってもらうことも増えた。

そんな、とある場でのこと。

「リナさん、紹介するよ。彼女は映像制作会社に勤めているアリサさん。かなり人脈をもってる人だから、リナさんと気が合うかも」

アリサは落ち着いた雰囲気の、ストレートの黒髪がとても似合う女性だった。話してみると年齢も私と1歳違いで、確かに気が合いそうだ。その場で互いの連絡先を交換した。

人間関係がどんどん広がっていく。大きなプールにただ浮かんでいるだけで友達が増えていくような感覚。彼といると新しい世界が拓けていく。気づけば私たちは恋人同士になっていた。

あまりにありふれた、始まり方。

しばらくはただただ楽しい時間がすぎていく。何をしても何を見ても、ひたすらに幸せで、嬉しい。しかし29歳の私は、そんな時間が永遠ではないこともまた知っていて……。

恋人になって初めて迎える大型連休なのに、マサヒロは直前まで予定を明かさなかった。何度問いかけても、

「ちょっと仕事がどうなるかわからないんだ。もう少し待って」

と言葉を濁すだけ。挙句、一度は決めた1泊旅行の予定を、直前で覆された。理由は「仕事」。それが当然、真実ではないと悟った私は、シャワーを浴びているマサヒロの携帯を手に取ってしまう。

『今日は久しぶりのデート楽しかった♡ありがとう♡マサヒロも忙しいと思うけど、またご飯たべに行こうね』

絵文字だらけのメールよりも、デートという文字よりも、打ちのめされたのは、差出人の名前。そこには、『アリサ』と書かれていて……。

もしかして、と自分の携帯を開けば、同じメールアドレスが残っていた。間違いない。あの時、紹介されたアリサだった。他に女がいるのかもとは思ったけれど、まさか知っている人だったなんて。気が合うかもなんて、言っていたのに。

「釣りをさ、してたんだよ。効率を考えて、釣り糸を2本たらしてたら、たまたまそれが同じ生簀(いけす)だったっていうだけで」

 

何食わぬ顔をしてシャワーから戻ってきたマサヒロに無言で携帯をかざす。たっぷり30秒はあけて、彼はこう言ったのだった。

私は彼に、まんまと、釣られてしまったのか。自分が泳いでいたのが生簀だとも知らずに。

……んなわけねーだろ。仮に私が魚だとしても、私が泳ぐのは大海原だ!

 

━━これが私の人生、最悪なセリフ。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。