世界を巻き込んだ「史上最悪」の汚職事件
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
国際腐敗防止デー
今日、12月9日は「国際腐敗防止デー」です。
これ、食品が微生物によって分解されて食べたら食中毒を起こす、あの“腐敗”じゃありません。そもそも12月ですしね。
政府高官や公務員の不正行為、資金流用、横領、贈収賄など、汚職や腐敗の撲滅を呼びかける一日。2003年に国連が定めた国際デーのひとつです。
腐敗がグローバルな問題であることは、国際社会において共通の意識。2003年メキシコ・メリダにおいて「国連腐敗防止条約」が締結され、腐敗に対し真正面から立ち向かっては来たのですが……それから数年後、「世界最悪の汚職事件」と言われる不正がマレーシアで暴かれました。
政府系ファンドをめぐる巨額汚職で起訴された、マレーシア第6代首相ナジブ・ラザク。そのスキャンダルの大きさは、国内で収まるものではありませんでした。
ペーパーカンパニーとタックスヘイブンを経由させて資金は国境を越え、金融大手ゴールドマンサックスからスイスやドイツの銀行へと流れ込むなど、多くの企業や国を巻き込み、果てはハリウッド映画界にも資金の一部が流れていたこともあり、世界の耳目が集まるところとなりました。
首都クアラルンプールを東南アジア経済の中心地として発展させる。大きな野心とともに2009年、一国の宰相の座についたナジブ。政府系投資会社1MDB(1Malaysia Development Berhad)を設立し、国内産業の振興を狙ったのは建前だったのか、資金の流用、横行が始まります。
マレーシアのほか、シンガポール、セーシェル、バージン諸島などにペーパーカンパニーを設立し不正資金にいくつもの口座をまわしてマネーロンダリングを実行。2014年までに不正に流用された資金は45億ドル(今のレートに換算すると5000億以上)にも及びました。
2015年7月、1MBDからナジブの個人口座に約7億ドルの不正入金が報じられ、8月には首相退陣を求める大規模デモに発展。ナジブは内閣改造を行い反対勢力を締め出すも、2018年マレーシア警察による家宅捜査が入りました。横領した資金は、私的に高級住宅やヨットの購入、映画製作の費用に流用していたことが発覚。同年7月、1MDBに関する汚職疑惑に関連してナジブを逮捕。
2020年7月、1MDBを巡る巨額資金流用事件でクアラルンプール高等裁判所は、ナジブに対し、権力乱用罪で禁錮12年、罰金2億1000万リンギ(約56億円)の有罪判決を言い渡しました。
巨額資金流用で話題となったこの汚職事件は、同時に国境を越えた汚職のグローバル化を示す事例ともなっています。世界の金融システムのあり方を考え直す、そこにも腐敗根絶に向けた努力が必要なのかもしれませんね。