私たちはかつて、路上で「性」を売っていた。そして今は…。
55歳以上の現役もしくは、元セックスワーカーを対象としたメキシコにある『Casa Xochiquetzal』という保護施設。10年以上前に開館したこの施設は、現在にいたるまで300人以上の女性たちの支援をしてきました。
ここに住むほとんどが、身も心もすり減らしながら「性」を売ってきた人々。彼女たちは今、どんな人生を歩んでいるのでしょうか。
「売春」していた事実と現在。
2014年5月27日 Soledadの寝室にて撮影
フォトグラファーのBénédicte Desrus氏が、Casa Xochiquetzalの存在を知ったとき。55歳以上の売春婦じゃないと入れないという、彼女にとっては型破りな入居条件に驚いたそうです。
その実態を知りたくなったBénédicte氏は、女性たちに密着取材をすることを決意したのでした。
レイプされ、左手足が麻痺。
まだ14歳だったのに。
2013年10月2日 Soniaの寝室にて撮影
彼女の名前はSoniaといいます。メキシコのソノラ州出身で撮影時は62歳。14歳の時レイプされ、さらに頭部に重症を負いました。それ以来、左腕と左足が麻痺。それでも、彼女は「性産業」へと身を投じたのでした。
明るく振る舞うのは、
現実を必死に生きているから。
2010年10月15日 働きに出かける前に化粧をするAmaliaの姿を撮影
撮影当時、66歳のAmaliaはミチョアカン州出身。Casa Xochiquetzalが創立したときからの住人です。
仕事に向かう前に、ウィッグを付けブラにパッドを入れます。とても生き生きとした様子で、Amaliaの口からは言葉や歌が次から次へと。実は彼女、統合失調症を患っています。しかも22年間も。彼女の明るい声とは裏腹に、現実とのつながりを失わないように必死だということが伝わってきました。
今は、ちょっとした小遣い稼ぎをするために、ペットボトルを集めてリサイクルし、31歳の恋人が経営しているスタンドで洋服を売っているそうです。
大切な人を愛する。
これだけは、忘れない。
2013年6月26日 Victoriaと娘を撮影
彼女はVictoria。メキシコシティから1時間ほど北東に位置するパチューカで暮らす愛する娘を訪ねたところ。Casa Xochiquetzalに住む女性の多くは家族がいます。しかし、そのほとんどが会うことだけではなく、連絡を取り合うことですら珍しいそうです。
「生きるため」に性を売った。
そして、世の中から見放された女性たち。
2013年9月3日 シャルター内でシャワーを浴びるSoledad
Casa Xochiquetzalの創設者であるCarmen Muñoz氏。彼女自身も元セックスワーカーでした。
社会から締め出され、家族からも見放された女性たち。その日、寝る場所すらない彼女たちの多くは、路上で生活するしかなかったのです。中には所持金が一銭もなく、売春をしなくては“命の危機”に追いやられてしまうのでは。そう思うような人もいたそうです。
入居者たちと10年もの間、同じ時間を過ごし、撮影するようになってから、Bénédicte Desrus氏はこう語っています。
社会では知られていない、女性たちの生き方。今まで想像すらしたことのなかったセックスワーカーたちの「現実」を知ることができた。
私が最期のときに近づく彼女たちの姿を撮影するのは、必死に生きる女性たちへの偏見と差別をなくしたいから。
DONATIONS to Casa Xochiquetzal, shelter for elderly sex workers in Mexico City, can be made via Paypal: mujeresxochiquetzal@gmail.com
Thank you!