パレットは「2500人の裸」。集団ヌードに隠された問題意識

画家が絵の具を使うように、アメリカの芸術家スペンサー・チュニックが画材として使うのは、「人の裸体」。

大人数のを並べ、景観を彩って写真を撮影する──エキセントリックなスタイルから何度も警察に逮捕され、NY市長からは「甚大な悪影響」と罵られたこともある。

ヌード写真に抵抗がない人にとっても、彼の作品はかなりインパクトがあるものだ。

一方で、彼の作品にはいつも、ジェンダーをはじめとするさまざまな社会問題への意識・啓発が含まれている。

© Spencer Tunick

そんなチュニックが新たに発表したのは、オーストラリアでの「皮膚がん啓発」のためのプロジェクト。

無料のクリニックを提供している慈善団体「スキン・チェック・チャンピオンズ」と提携し、豪州の「全国皮膚がん行動週間」に合わせて撮影が行われる。

皮膚がん健診への呼びかけを行うかたわら、同団体のサイトでは集団ヌードへの参加者を募集中だ。

目標は2500人で、最低でも2000人は目指すとしている。この「2000」という数字は、豪州で1年間に皮膚がんで亡くなる人の数だ。

かつてチュニックが同国で撮影を行った際には、オペラハウスに5000もの人々が集まったというから、今回の目標も達成できるだろう。

スキン・チェック・チャンピオンズの設立者は、「皮膚がんを食い止めたいという意志があるなら、どんな体型や性別、人種の人でも大歓迎だ」と語る。

チュニックも、「私の作品は本当に多様な体型や肌の色を扱っている。裸体を表現の手段にしているのだから、この取り組みは私の作品とぴったり合っている」と述べ、あらゆるレッテルを超えた人々が集うことを願った。

エキセントリックな「集団ヌード」による表現活動。各国の警察との衝突も乗り越え、前衛的な姿勢を貫くチュニックの姿は、アーティストおよびアクティビストとしての意志の強さを感じさせる。

1992年から活動しているということで、ジェンダー・人種など現代的な社会問題提起の先駆者的な存在でもある。

「多様性」や「インクルージョン」が広まってから、ヌードを含む表現活動への批判も減ってきたし、時代が追いついてきたのかもしれない。

26日、彼の作品が完成するのを楽しみにしよう。詳細はこちらから

© spencertunick/Instagram
Top image: © Spencer Tunick
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