僕らが考えている今と未来② 〜伊勢谷友介、瀬戸勝之、久志尚太郎〜

伊勢谷友介、瀬戸勝之、久志尚太郎の鼎談。第二弾はテクノロジーの話です。


テクノロジー=黒船?

超音波で右脳開花?

2020年からの10年はパニック期?

人間とテクノロジーの未来予想図をめぐり、話はますますヒートアップ。

「今、人類史上初のバックアップの時代がきている」(瀬戸勝之)

久志 vol.1では「共通の体感が重要なんじゃないか」みたいな話させてもらったんだけど、フェスとかもそうだと思うんですよ。同じ体感値を作っていく——。


瀬戸 それ、SXSWに行ったときに思った。カンファレンスでスタートアップの人たちが世界中から集まるんだけど、そこにエンターテインメントが入ってるの。なぜかというと、いかに自分たちの技術がすごいのかを見せるため、みんなエンターテインメントをアウトプットとして用意しているから。これまでならエンタメならエンタメとしてのコンテンツがテクノロジーとは別にあったのに、そのふたつがすごい勢いでひとつになっていっていて、参加者も総合的に理解した上でコンテンツを共有してるっていう。


久志 まさにそう!僕、去年フィンランドのSlushに行ってきたんですよ。これまたスタートアップの祭典で、全部テクノロジーを用いたエンタメなんですよ。そこで感じたのは、フィンランドにおけるスタートアップって、昔のパンクロックのムーブメントみたいだなって。要は、当時は若い人たちが社会に対して何かを訴えるためにギターを持って叫んだわけだけど、今はスタートアップがそれに置き換わってる。そこでディセントラライズドやブロックチェーン、AIについてエンターテインしながら話してるっていう。

もちろん、フィンランドに限った話じゃない。社会にはその時代におけるトリガーがあるはずで、たとえば江戸時代だったら黒船はトリガーだったと思うんだけど……。


伊勢谷 「よし開国するか、どうするか!」ってね。


久志 そう。で、そのトリガーが今の時代ではテクノロジーなんだろうなと。


瀬戸 僕は今、人類史上初のバックアップの時代がきたなと思ってる。それを実現していくのがAIというテクノロジーなわけで。

人間は今までいろんなことを伝えていこうとしてきた。例えば、家族ができたら子どもにアイデンティティを教えたり、あるいは書物にしたり。でも、それがすべて残って活用されるわけでもないし、結局自分が生きてきた感覚のなかでしか物事を判断できなかった。それがAmazon 、GoogleのIoT市場への参入が始まって、インターネットが生活にすべてつながっていくようになって、すべてデータ化できるようになった。これまで残せなかったものが、すべてバックアップできるようになったってことだよね。


伊勢谷 そうだね、たしかにバックアップの時代だ。


瀬戸 バックアップができるAIに、思考や行動を預けてみるとどうなるのか?これから人類はそういうことに向き合っていくと思う。シンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるとAIに仕事を奪われるんじゃないか。そんなネガティブな声もあるけど、僕はその変化ってすごくポジティブに捉えてる。なぜなら人間同士、フェイス・トゥ・フェイスの時間がとれるようになるから。人間が次のステージに行くために感覚値を上げるにはそういう環境が必要なんじゃないかな。


久志 重要なのはテクノロジーというトリガーを何に作用させるのかですよね。ひとつの答えが「共通の体感」ということなんだと思う。そして、勝さんの分野である超音波は、それに役立つんじゃないかって。


瀬戸
 じつは超音波というのは右脳の開花に作用していて……今まさに中国の脳科学者と一緒に脳波のエビデンスをとりながら超音波研究を進めているところ。右脳、左脳、前頭葉とかの部位はどう反応しているか調べたり、サーモグラフィーを使って熱量を調べたり。そうすると、超音波が右脳に、つまり想像する部分に作用していることがわかってくる。

今、サンフランシスコやLAの企業では、5時〜6時半とかの1時間半を使って、会社の経費でヨガをやったり料理の勉強をしたりしているところもある。これからの人類の未来がそんなふうに右脳的になっていくとしたら、超音波の効果はより顕著に表れるんじゃないかと思う。

それが「発想が降りてくる」という言い方になるのか、気づきというのか、あるいは、認知というのはそういうことじゃないかな。僕の超音波研究が、そのきっかけになるといいな。


伊勢谷 超音波も、今はまだみんなよくわかっていないけど、勝くんがそれを研究してツールとしてとりこんで新たな世界が生まれて……いつかエアコンと同じようなものになって、それによって世界が変わっていくんだろうね。


久志 エアコンっていう表現、いいですね。インターネットだって、最初はみんなよくわかってなかったけれど、今ではエアコンと同じか、ある意味ではそれ以上に当たり前になってきているし。

「ブロックチェーンによって、リアルな人間が事実を重ねていく時代がやっと始まる」

 

久志 勝さんがSXSWで出会ったエンタメのなかでも、とくにヤバイと思ったものは?


瀬戸 食だね。


久志 食?


瀬戸 そう。例えば、自販機でコーヒーを買うときって普通は豆を選べない。だけど、SXSWにあったそれはすべてAR化されていて、スマホをかざせばどこの農園でとれた豆なのか、無農薬なのかどうか、何が何%入っているのかすべてわかるようになっていた。より明確に安心や安全が視覚化されている感じが、ちょうど半歩先な感じで気持ちよかった。


伊勢谷 先に情報をばーっと見ることができるってさ、必要なんだよね。危険なことなんていっぱいあるから(笑)。そういう安全に対する動きって、じつは中国とかのほうが早い気がする。日本はやっぱり安定してるから、そこまで必要に駆られない。


瀬戸 エンタメから話が逸れるけれど、それと似た話では通貨としての円の強さも感じた。仮想通貨っていっても、日本ではまだ投資のものでしかない。でも海外、それこそ旧ソ連のあたりになると自国通貨への信用がないから、デジタル化してしまったほうがいいという見方になっていて。ビットコインの普及率や考え方が全然違うなと感じましたね。


久志 ブロックチェーンは結構……。


伊勢谷  ブロックチェーンの導入は急務だよね。なのに、公文書の改ざん問題もあったじゃん。予算委員会だって予算と関係のない話しか聞こえてこなくて、どうなってんだ?って思うよ。


久志 でもブロックチェーンってまさにそういうことですよね。ブロックチェーンもTCP/IPのようなプロトコルの一つと見ることができると言われるけれど、まったく違う意図と意味を持った技術。TCP/IPは通信の確立のために作られて、簡単にいえば「コミュニケーションが大事だよね」ということ。それに対してブロックチェーンは「正しく保管して、改ざんされないことが大事だよね」ということ。

歴史は勝者が作ってきたものだから、過去何千年という歴史はその勝者によって改ざんされまくりなわけだよね。僕たちが信じているものは、極端な話すべてフェイク。それこそ今『キングダム』がめっちゃ流行ってるけど、あの始皇帝の話みたいなものとは全然違うもの。リアルな人間が事実を重ねていく時代がやっと始まるんだなっていう。


瀬戸 ところで仮想通貨って信用できる?


伊勢谷 仮想通貨はブロックチェーン技術を使っているだけで、そのふたつはまた違うものだよ。


瀬戸 そうだけど、今現在のブロックチェーンのアイコンって仮想通貨じゃない?


伊勢谷 僕はブロックチェーン技術は信じる。仮想通貨は、これからそれにお金を払う人が、どういう志なのかにもよる。ただ、そういう意味でいうと、今のところはあまり芳しくはないかな。だってみんな、そんな意識で使ってないでしょ? それこそさっき話してた認知革命が起きれば別かもしれないけどね。

僕が一番いいなと思うのは、それがポスト資本主義の導入になっていくこと。たとえば、ちょっと世の中をよくしたいと思う人がいたとして、その人がスノボをやってて、ある田舎に思い入れがあるとする。そのとき仮想通貨で投資すれば、そこには志のあるお金しか入らなくなるし、集権的な考えを持つ人からはちゃんとブロックできるよね?そういう可能性があると思ってるんだよね。そして、それを形にしたいんだよね。


瀬戸 その話はすごくおもしろいね。


伊勢谷 期待は持ってるけど、現状をどう判断するかは僕にはできないから、そこはわからないかな。


瀬戸 その「わからない」という感覚があって、ブロックチェーンの価値は落ちていっているじゃない?もちろん仮想通貨とイコールではないけれど、今メディアで出されてるイメージではほぼイコールだから。


伊勢谷 そのイメージはもう少しで変わるよ。


瀬戸 ということは、仮想通貨のブームが終わったときにブロックチェーンの良さがわかるっていうこと?


久志 今は通貨という側面が強く出過ぎているけど、ブロックチェーンをベースにゲームを作ったり、保険の台帳管理をしたりという技術開発が進んでいけば、実際に世の中が変わってくるはず。


瀬戸 通貨って安全と信頼を担保したものでしょう?だけどハッキング被害に遭うという事件もあって、結局「デジタルのものってどこかでコピーできるんじゃないか」という不安が常につきまとう。


伊勢谷 それをブロックチェーンが守る。


久志 信用を担保する手段として。


伊勢谷 簡単に言えば「君に5000円入りました」という記録を、こっちのそっちのコンピューターで認めているということ。だからどこかが潰れてもその5000円を保証できる。一度インプットされたものは保存されて書き換えられないという条件で続くし、それをみんなが見られるというシンプルな構造だよね。その必要性をみんなが理解して、その技術が「当たり前なんだ」となれば、だんだん世の中が変わっていくから。だから勝くん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ(笑)。


瀬戸 そんな心配はしてないんだけどね(笑)。

ただ、今のクリエイターがそこをどう考えているのか聞くのっておもしろいなって。やっぱりデジタルの技術だし、すごく身近にあっても目に見えないからわかりづらい側面もある。それが世の中に対してどう表現されていくのか?びんちゃん(久志)はどう思う?


久志 それも視点の問題かな〜。ブロックチェーンにもいろいろな使い方があるので。


瀬戸 そうだよね。


久志 10代の頃からずっとインターネットを使ってるけど、TCP/IPというプロトコルが開発されてインターネットが生まれた時と今ってまったく同じだなという印象を持ってる。ネットによって、その前の時代にできなかったことが3分の1くらいの速さでできるようになった。

2020年から2030年の10年間は、ブロックチェーンによって、それが起きる期間だと思う。伊勢谷さんはさっき「必然的にみんなそっちに行く」と話していたんですけど、僕の感覚としては、ちょっと言葉が悪いですけど、多くの人にとって戦争以上のパニックになるんじゃないかな?という懸念がある。


伊勢谷 ブロックチェーンが?


久志 なぜなら、ポスト資本主義にしても通貨の考え方にしても、あらゆる前提条件が変わっちゃうから。AIを極度に恐れてしまうというようなことも、そうだと思うんだけど、社会的混乱が生まれるじゃないかな。ただ、混乱は起きるだろうけれど、日本人は変容していくことが得意じゃないですか。その点は有利だろうなと。

とにかく2020年以降の日本社会に対して、僕はものすごくポジティブに考えていたりもします。


瀬戸 そういえば、SXSWでおもしろい技術を見たんですよ。イーロン・マスクがゲストでスピーチをしていたときに、それをリアルタイムでストリーミングで拾っていくんだけど、発言した言葉の回数によってキーワードがどんどん上がってくる。さらにそのキーワードが全部URLに紐づいていくっていう。そういう技術がブロックチェーンと混ざり合った時に、おもしろいものができるのかなあと観ていて思った。


久志 おもしろい。Aという物事についての背景や意味がどんどん紐づいていけば、あらゆる物事の可能性がひろがっていきそう。

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