【那須川天心×瀬戸勝之】交錯する「感性」の共通項

プロボクサー那須川天心さんと3Dサウンドデザイナー瀬戸勝之さん。格闘技と音響という、なんの脈絡もなさそうな両者だが、じつは気心知れた間柄。互いの異能に惹かれ交錯することで、それぞれの主戦場で新たなイノベーションを生み出している。

現在、東京大学大学院工学系研究科柳澤研究室と「感性設計学を応用した意味のイノベーション理論の構築」に関する共同研究をすすめるNEW STANDARD代表・久志尚太郎が、「感性」をテーマにシーンの最前線をリードする“神童”と“異端児”の思考回路を紐解いていくロングインタビュー。

那須川天心

1998年生まれ。プロボクサー(帝拳ジム)。15歳でキックボクシングプロデビューを果たし、プロ6戦目史上最年少の16歳でRISEバンタム級のベルトを奪取。以後、数々のタイトルを獲得し“神童”と称される。キックと総合格闘技で47戦全勝という記録を残し、2023年ボクシングへ転向。

瀬戸勝之

3Dサウンド デザイナー/プロデューサー。株式会社studio SpaceLab代表取締役。360°の音声再生領域を活かし、聴覚のみで映像を連想させる『3D MUSIC』という新たな音楽ジャンルを確立。2017年、未来型花火エンタテインメント「STAR ISLAND」の演出を手掛け「経済産業省マッチング・アワード2017」の審査員特別賞を受賞。

神童と異端児、「感性」の融合

──まず、お二人はどういうところに惹かれ合っているのかお聞かせください。

 

瀬戸:共通の知り合いがいて、天心くんを紹介したいということでスタジオに来てくれたのが今年1月だっけ。すでに名声を得ているのに自身のプロモーションよりも内に秘めている部分が多いんだろうなと直感的に感じました。それを引き出したい、もっと知りたいという思いがまずあったかな。

 

──「内に秘めている」という部分をもうちょっと噛み砕いて説明すると?

 

瀬戸:僕が思う感覚って、そもそも音響の業界にはなかったことなんです。異端児扱いされて。その拡張子を自分は持っている。天心くんも「神童」という拡張子がある。その拡張子同志の感性を照らし合わせた時、何を大事にしているのか?みたいなことで言うと、よく話すのが技術に食われるかセンスなのか、それとも感性なのか。天心くんで言うところの戦う相手、僕の場合はサウンドをつくるとき、下であればある程度の技術であったり差を見せつけることはできるんだけど、上に行けばいくほど勝負の世界は拮抗してくる。そうなったとき、反復練習なのか感性を磨くのか、どこかで自分自身と戦わなければいけない。そこに興味があったんです。

 

──那須川さんはスポーツ、格闘技界の方ですが、音楽や音響という世界をどう見ているんですか?勝さんと会話をしているなかでここユニークだなと感じる部分は?

 

那須川:一番思うのはいろんな研究をしていてすごい方だなと感じるところです。でも、むしろ惹かれる部分は、人に対しての愛で満ち溢れているというところ。3Dサウンドとか超音波がなくても仲良くなったろうなという感覚がありますね。

瀬戸:めっちゃ嬉しいね!

那須川:こういうおじさんに俺もなりたいって思います。最初会った時も「この人、絶対話し合うな」って感覚的に思いました。格闘技を通して有名にはなりましたが、そういったこと関係なしに心で付き合える、なんでも話ができる関係です。いろんな人との関わりはあるんですが、心で会話できる人はあまりいない。腹割って会話できる数少ない存在です。まだ出会って間もないんですけど、本当に信頼しています。

 

──天心さんの言っていること共感できます。自分も勝さんと同じ部分で惹かれ合って、もう10年でしたっけ?

 

瀬戸:クリスマスを2人で過ごしたこともあったよね(笑)

那須川:どれだけすごいことやっていても人間性が壊れてる人っているじゃないですか。そういうところがなく勝さんはしっかりしている。

瀬戸:天心くんと話しているなかでフィジカルよりもむしろ感性に対して追求しているんだなってことがわかり、僕の中ではコラボできることも多いなという興味が強くなりましたね。もっとお互いの感性を融合していってこちらもサウンド技術で天心くんの新しいものを引き出せるかもしれないし、そういった技術を取り入れてもらうことで、天心くんのスタイルもまた進化するかもしれない。そんな未来の挑戦を一緒にできたらなと思っています。

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──さて、本題である「感性」についてお伺いします。感覚とか感性をどう磨いているのかお聞かせください。どういったトレーニングをしているかと聞かれたら「こうしている」は回答できると思うんですが、格闘技におけるセンスや感性という話題になるといかがでしょう?

 

那須川:俺は理屈でものを考えないことを意識しています。みんなが「こうした方がいい」と言っているからやるというのは1つもなくて。あの人はこうだと言われても「俺やってないからわからない」というスタンスですね。

 

──何事においても開拓者なんですね。

 

那須川:世の中にあるもの全て試してみたいんです。好奇心が強いというか。理屈よりもパッと動く。そう決めています。

 

──それが感覚や感性に繋がっていると感じる?

 

那須川:そうなるためにやっています。自分の内なる声と会話をしたり、自分とちゃんと向き合ったり。常にやっています。

 

──勝さんはどのようにご自身の感覚や感性を養っていますか?

 

瀬戸:日本に四季があるように感覚自体も自分のダイナミクスで動いていると思うんです。みなさんそうであるようにプライベートの時間と仕事の時間でスイッチが違います。そうじゃない人もいるかもしれないけど。スイッチが入るきっかけやタイミングをつねに本能的に探しています。それは人かもしれないし技術かもしれない。そういうところに寄りかかったり離れてみたり。なんというか、一つの感覚ではないんですよね。12色あるというか。

 

──なるほど。本能的な部分で。

 

瀬戸:天心くんのように「試合」という目的がはっきり見えたら、ロングスパンで練習のなかにいろんなものを取り入れると思うんですよね。僕の場合は競技ではないので勝ち負けがあまりない。だから、嬉しい自分や悲しい自分を感情のなかにつくりだし、エンタメのコンセプトに合わせて感情を寄せていく、というのはありますね。やっぱり見えている視界でもスイッチを入れ替えるだけで世界って変わるじゃないですか。全体像で見る日もあればフォーカスして注視する日もある。

 

──どう自分と世界を見るのか、という感覚?

 

瀬戸:それにアジャストしていくというのかな。カメレオンのような感じに近いのかも。

那須川:それで言うと自分の場合は格闘技ですから、試合に勝つことができればなんでもいいのでそれに合わせて全部やっている感じですね。

 

──「試合に勝てればなんでもいい」って、どういう感覚なんですか?自分を捨ててでもみたいなことなのか、これまでやってこなかったことに取り組んででも、みたいなことなのか。

 

那須川:勝つ可能性が1%でも上がるならば、なんでもやります。格闘技が人生そのものなので。たとえば歩き方ひとつにしても格闘技に応用できる歩き方を普段からしていれば必然的に筋肉が発達するだろうし。なんと言うか、格闘技と人生を別個で考えていないんです。自分の日常に起きることすべてを格闘技と紐づけて考えています。映画やテレビ観たりどこかへ出かけても「なんかこれ使えるんじゃないか」、そんな頭で常に生活しています。

“ゾーン”を引き寄せる脳内スイッチ

NEW STANDARD代表・久志尚太郎©YUJI IMAI

──いま、私が共同研究している東大の研究室は「感性設計学」という学問をやっています。これは、感性を数値化し数理モデルに落とし込むという研究です。共同研究者の柳澤秀吉准教授がめちゃくちゃおもしろい理論を使っていて。大げさに言えば地動説と天動説がひっくり返るような理論です。それは「自由エネルギー原理」というのですが……。

 

瀬戸:難しそうだね。

 

──原理自体はシンプルです。これまで脳ってこうだよね、こういうふうに認知してきたよねという定説が覆された。人間は基本的に視界に入ってくるものを見ていますよね。でも本当は、人間の眼の機能というのは、ある一定の幅しか見えておらず、それ以上は見えていないんです。でも実際には見えていますよね?

 

那須川:かなり見えている方だと思う。

 

──では、なんで見えているのかというと「脳が世界を出力(予測)している」んです。AR(拡張現実)のように私たちの脳が世界を作り出している。つまり世界を入力しているのではなく、出力(予測)しているということがわかったんです。

 

瀬戸:でも、出力だけでなく脳に入ってくる刺激(情報)もあるじゃない?例えば音だったり知覚だったり。

 

──そうなんです。そういう感覚刺激としての外的要因とのギャップ(予測誤差)を脳がチューニングするんです。人の脳は常に世界を能動的に予測していて、入ってくる感覚刺激との誤差をチューニングし、予測誤差を最小化しようとするのです。

 

瀬戸:どういうこと?

 

──たとえば格闘技で言えば、相手がこう打ってくるわけですよね。天心さんは相手を見ているわけではなく、天心さんの脳がその世界を予測し、作り出していて、予測に対して入ってくる感覚刺激である相手の本当の動きとの誤差をチューニングし、最小化しようとするんです。つまり、天心さんは、予測の精度がめちゃくちゃ高いんですよね。予測の精度は、その人がどう生きてきたか、どういうものを見てきたかっていうことそのもの(事前信念)。それが試合にあらわれたり、行動や反応となってあわられる。

 

那須川:へぇー、おもしろい。

 

──いっぽうで、予測誤差は最小化すれば良いっていう話でもないんです。例えば、感動するって何か?それは、予測したものと、入力される感覚刺激とのギャップ(予測誤差)です。だけど、ズレすぎていると脳が違和感を覚えたりパニックを起こす。脳の予測と感覚刺激の入力のバランスで快感を感じれば不快感も感じるんです。自由原理エネルギーを用いると、人は予測と入力との誤差を最小化したい生き物だということがわかります。だからこそ予測や期待を裏切ることもエンターテインメントにおいては重要。そこであえてハズシの部分を作ったり、予測を裏切るような手法が成立するわけです。

 

瀬戸:でも、やりすぎちゃうと不快になってしまうわけだ。

 

──そうです。これらが自由エネルギー原理を元に柳澤研究室が感性設計学を通じて研究している内容です。私たちNEW STANDARDも、デザインや体験に応用する方法を多角的に試しています。

 

瀬戸:おもしろい。それはAIにもなるの?

 

──AIにもなります。自由エネルギー原理は今まで脳神経科学の中でしか研究されてこなかったんですが、すこしずつAIやデザインに活用され始めました。

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瀬戸:なるほどね。話が少し逸れるかもしれないけど天心くんも僕も探すところは“ゾーン”なんですね。イメージすることがイメージの上で動いたり、感覚的に見つけてしまってあとから左脳が追いついてくるような。それって人が読めないもの。音楽であっても戦いであっても読めないじゃないですか。戦いの中でフェイントばっかりでは、じきに相手にパターンを読まれてしまう。でもある種の怪奇的な読みようがないゾーンのようなものに突入状態でいられるなら、ずっと入っていたいな。

 

──よく「幽霊が見える」っていう人がいますよね。あれ、本当に見えているんです。なぜなら脳は、幽霊を出力(予測)することができるからです。実際に感覚刺激として入ってくるものは、光なのか物体なのかわからなかったとしても、「幽霊は実在する」という事前信念によって、脳は予測し知覚してしまう。ここがポイントで「人は見たいように世界を見ている」というのはまさにこのことだと思うんです。

 

瀬戸:なるほど、ゾーンも自分が作り出した状態か。

 

──そうなんです。ゾーンって、極限の状況下で極限の集中力を活用して、理想の世界を自分の内側から完璧に出力(予測)している状態なのではないでしょうか。自分が世界に合わせにいくのではなく、世界が自分に合わせにくるような感覚。これが勝さんがおっしゃっているゾーンなんじゃないかと。

 

瀬戸:よく「神がかってる」ってあるじゃない?それもゾーンだもんね。僕らはそれをつくるために緊張と緩和のなかでダイナミクスをつくって、振り幅大きくしてそれを見つけようとする。できれば最初からビッて入れたら楽しいしラクなんだけどね。

 

──天心さんは、試合の前に自分のコンセントレーションを高めたり、集中してゾーンを意識したりしますか?集中とリラックスをどう使い分けて闘いに望んでいるのでしょう?

 

那須川:集中はめちゃくちゃしています。しているけど、いっぽうでしすぎないようにもしています。どうしても視野が狭くなっちゃうから。集中しながらもどこかで俯瞰して自分を見ています。だから相手の顔もパって見ないんですよね。ぼやーっと全体を見るというか。それは常に意識しています。

 

──囚われないようにするっていうことですかね?

 

那須川:日常においてもおもしろい方の裏切りをずっと意識していますしね。俺、お笑いがめっちゃ好きで。お笑いの“間”って素晴らしいと思うんです。緊張と緩和があって。格闘技もリズムだと思っているんですね。だからどうテンポを変えるかとか、ちょっと手を抜く場面というか間を置く必要だったり、それがあるから相手が「えっ?」て緩んだりもしますしね。

 

──おもしろい。予測って過去の入力からきていますからね。

 

瀬戸:アーカイブだよね。

 

──そう。「事前信念」という考え方ですが、過去の経験に基づく出力、つまりは何を経験し、どんな信念を持っているかがめちゃくちゃ重要なわけです。まさに天心さんがおっしゃったように同じところで集中しているとそれ以外の入力に対応できない。つまり、それ以外見えなくなってしまう状況を自ら作り出していることになります。

 

那須川:ですよね。それに慣れてしまう。他のものが来たときにパニックになっちゃう。そういうのが嫌だからいろんな経験・体験をするようにしているんです。格闘技だけをやっているわけでなく、いろんな場所行ったり、いろんなエンタメ観たり。

瀬戸:それはいつ頃からやってるの?格闘技の仲間たちと?

那須川:だいぶ昔からですね。格闘技も大好きですが試合はあまり観ません。格闘技関係の人たちともほとんどつるみませんね。

瀬戸:僕と一緒だ。同業者に興味ないもんな。

 

──じつは私も一緒です(笑)

 

瀬戸:だって会話の流れ決まってるしおもしろくないもん。

那須川:そうなんですよ。プラスになることがすくない。

反復練習では、感性は磨かれない

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──いっぽうで、格闘技漬けのこれまでの人生かと思います。そういった経験が天心さんの今の考え方につながっているのか、反動なのか、そのあたりのどのように自己分析されますか?

 

那須川:やっぱり、格闘技に勝るものはないし一番だと思っているので自分がやっていることに自信を持っています。ただ、同じ練習はしません。ミット打ちをやるにしても毎回ちょっとずつ変えたり。みんな反復練習の大切さを言うんですが、僕はやりませんね。反復練習やるとロボットみたいな動きになっちゃうんですよ。

 

──それしか見えないしそれしかできなくなる。みたいな?

 

那須川:そうそう。反復のように毎回やる練習だったとしてもちょっとタイミング変えたりだとか、間を変えて実践する。提供される練習環境のなかで毎回遊び感覚で自分の中でちょっとずつ変えるようにしています。

 

──勝さんは今の天心さんのお話をどういった部分で共感できますか?逆に音響制作において活かしているようなことはありますか?

 

瀬戸:みなさんが体感しているスピーカーで言うと、基本は2つですよね。でも2つという概念から始まると2つのものでしか音は作れない。時代性とか他者、周りに対する興味を持ってもらうものになりがちなんですよ。それに自分の好きなメロディやリズムをどれだけブレンドできるかという。僕の場合は「空間」で勝負しているんでスピーカー増やした分だけいろんなことができる。だから毎回ゼロイチなんです。

 

──なるほど、2つという枠組みのなかで収まってしまう。先ほどの反復と近いものがありますね。

 

瀬戸:そう、だから音楽やりたいけどハマりたくなかったのもそこなんだよね。

 

──音響だとスピーカーの数や位置を増やすことで、いかようにも広がりができる。天心さんのおっしゃっていた、違う遊びや違うリズムを取り入れていくことで異なるエッセンスや考え方を取り入れていくことに繋がりますね。

 

瀬戸:誤解を恐れずに言えば、自分のもの、自分の技術、メソッドにしか興味ない。ずっとそれを追いかけているので。

那須川:自分もそうですね。他の試合を観て勉強しようとか、まずない。いや、俺は俺だから。それをずっとやって勝ってきているんで。格闘技ってマインドのぶつかり合いだと思っています。ここまで積み重ねてきたもの、信じてやってきたことが正しかったっていう確認の場所なんですよね。だからそこに向けて誰かのアドバイスを受け入れるのではなく、あくまでオリジナルで。勝てばいいっていうだけなんで。

瀬戸:「勝てばいい」って言い切れるのが気持ちいいよね。戦うってことにメッセージ性を持たせることもあれば、勝ち負け関係なくっていう美学もある。いろんな美学があるなかで「勝てばいい」というシンプルさにこだわるのがすごい。だって言い訳できないじゃん。無意識に自分にプレッシャーかけているのか、感じていないのか。本来であればどこかで逃げ道をつくるじゃないですか。価値って見方によって変わるから。それを「勝てばいい」と追求できるのは相当な“何か”がないと言えないと思うんだよね。

好奇心が感性を刺激し続ける
型なしになるな。型破りであれ

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──お二人の話を聞いているとそれぞれやられていることは、世のセオリーとは真逆に感じるんです。本流を超える、“超亜流”というか。それって勇気もいるし難しいし本来ならみんな選びたがらない。自分が信じるやり方で貫いていくことについてお二人はどう考えますか?感性に直結していると思ってて。

 

那須川:えー、なんですかね。

 

──型なしとは、明らかに違うじゃないですか。どこまで守破離を徹底したり、どこからセオリーを外れるべきなのか?その塩梅ってあるはずなんですが、そこが多くの人にとっては、難しいわけで。

 

瀬戸:比喩になるんですが、畑があるとします。何を育てるかは自由だとして、お米を専門につくる人がいる。そこでお米だけでなく果物や野菜を育てる人もいるとする。そうしたとき、自分は多様性の側の人間なんです。もしかしたら時代性と合わないこともある。それでもおもしろそうだなと思えばいろいろ育ててみたいと思うタイプ。時代性を否定することもないし。ただ、自分の中にちゃんと“囲い”はある。そんなイメージですね。

 

──お米だけ作ってきた人と勝さんみたいにいろんな作物を育ててきた人、お米の味で勝負しようぜとなったとき、これまでの話だとそれでも勝さんのお米が美味しいとなるのはなぜなんでしょうか?

 

瀬戸:それこそ“反復”と一緒の話だと思う。僕は美味しいに「楽しい」という別の拡張子が混ざってもいいと思ってるの。去年はこういうお米だったけど、今年はこういう味わいなんだよね。それを受け入れるためのものづくりなのかも。

 

──同じお米でも実験している、トライしていることが多いって感じですかね。

 

瀬戸:もちろんお米だけ作ってくれている人たちへのリスペクトもあります。僕はそこから型を捨て「こういう新しいお米ができたよ」という方を楽しむタイプなんだろうな。それが音響の仕事でもありますし。超音波研究したりAIやったりすることで音響がまた広がっていく。究極「興味」だから。ストイックにやっちゃうとなんだか美学が変わっちゃうんだよね。努力や苦労している自分を愛してしまうから。前提としてはいいんだけどそこで留まるってことは俺にはキツい。興味こそが最高だと思っている。

 

──天心さんはどうですか?

 

那須川:俺は畑がちゃんとあれば何をやってもいいと思います。それなしでいろんなことやっちゃおうとするのは良くない。ある程度基本とかスタンス、そういうのをちゃんと守っていくのは大事だと思う。そのラインを維持しつつ、どう遊ぶかをずっーと考えています。新しいことを取り入れる際、そのカルチャーとか知らずに自分のことだけやるなんて、その界隈の人の怒りを買うだけ。ちゃんとリスペクトがありつつ新しい遊びを取り入れていくならば誰も文句は言わないじゃないですか。それで俺はいろんなスタイルで格闘技をやってきました。でも基本をちゃんと身につけてきたからできたんです。やっぱり両方ないとダメですよね。発想だけではどうにもならないし、基本がきちんとあって、自分のなかできちんとラインを線引きできていれば何をやってもいいと思います。

 

──最後にお二人にとって「感性」とは、一言でたとえるなら?

 

瀬戸:僕の場合、感性を自分で磨いている気はしないんですよね。やっぱり人との出会いなんで。いい人も悪い人も、出会うことで自分の感性が刺激され変化していくと考えています。この先完成していく感性を楽しみたいなと思っています。だから、今なお挑戦中って感じですかね。

那須川:そうだなー、自分の“世界”。ですかね。

瀬戸:響くねー。伝わった。

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互いにリスペクトしあい、神童に「こんなおじさんになりたい」と言わしめる瀬戸さんだからこそ切り込めた、むき出しの那須川天心インタビュー記事はこちらから!

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Top image: © YUJI IMAI
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