世界一有名な政治犯、大統領になる。

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

南アフリカで初の黒人政権が誕生した日

平等を求める闘いに生涯を捧げた、ご存知ネルソン・ホリシャシャ・マンデラ(1918 - 2013)。今朝の主人公です。

南アフリカ共和国において1948年に法制として確立され、以後46年間続いた人種隔離政策(アパルトヘイト)の只中で、アイデンティティを奪われながらも黒人の権利を訴える抵抗運動のリーダーとして人々を先導した“反アパルトヘイトの闘士”。

破壊活動共謀容疑で起訴され、リヴォニア裁判で国家反逆罪の罪に問われたマンデラは終身刑となり、1964年から27年間を獄中で過ごしました。それでも、南アに暮らす黒人たちの心から忘れ去られることはなく、つねに闘争のシンボルであり続けました。

いつしか、マンデラの解放が全世界から求められるようになり、1990年2月11日、釈放とともに政治団体の活動許可が降りました。

釈放後の第一声は10万人の聴衆が駆けつけたケープタウン市役所のバルコニーから。当時の熱気は以下の動画でご確認ください。

© CAPE TOWN LIVE / YouTube

そこで、マンデラは人々を前にこう強調しました。

私は、預言者としてではなく人民に仕える奉仕者としてここに立っている。あなた方の根気強く、英雄的な犠牲的精神のおかげてここに立つことができた。であればこそ、残された人生をみなさんに委ねようと思う」。

4年後の94年4月、南ア史上初の全人種参加による総選挙が実施されると、マンデラ率いるアフリカ民族会議(ANC)は、得票率62.65%で大勝。

そうして翌5月10日、マンデラは大統領に就任。世界一有名な政治犯は、南ア初の黒人大統領へと駆け上ったのです。

20世紀人権のシンボルがこの世を去って、まもなく10年。混乱の世にあっていま、あらためてこの時代にマンデラの言葉が響きます。

最後は、自伝『マンデラ 自由への長い道』(原題:Mandela: Long Walk to Freedom)からの一説をご紹介したいと思います。

肌の色や育ち、信仰の違いを理由に
他人を憎むよう生まれつく人などいない。
人は、憎むことを学ぶのだ。
もし、憎むことを学べるのなら、
愛することも学べる。

愛は憎しみより、自然に人間の心に届くはずだ。

Top image: © Media24/Gallo Images/Getty Images
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。