「白人は、悪魔だ」──。活動家・マルコムXが夢見た「平等な社会」とは?

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

マルコムXが生まれた日

1950年代半ばのアメリカ。

南北戦争が100年ほどまえに終結し、奴隷制が公には廃止されているにもかかわらず、いまだ根強く残る黒人への差別に対して、アフリカ系アメリカ人たちが声を上げます。

差別撤廃と法のもとの平等、そして市民としての自由と権利を求める運動──そう、公民権運動です。

人類の歴史の“光”と“影”を浮き彫りにしたこの運動の渦中には、それを象徴するかのようなふたりの偉大な指導者が存在していました。

白人(社会)との融和を唱え、現在も語り継がれる「I Have a Dream」の名演説などで多くの人々の支持を集めた“キング牧師”ことマーティン・ルーサー・キング・ジュニア。1964年、その平和実現へのアプローチ(非暴力運動)からノーベル平和賞を受賞したキング牧師を“光”とするならば、権利獲得という同じ目標を掲げながら、黒人優位、黒人主体の社会の構築を謳った“影”として描かれることの多い人物。

それが、マルコムXです。

「The Ballot or the Bullet」

(投票か、弾丸か)

白人を「青い目をした悪魔」と表現し、スピーチの一節では武力による権利の奪取さえも匂わせて、主に貧しい層から熱狂的な支持を受けたマルコムX。1925年の出生時の名前、マルコム・リトル。

青年時代、ドラッグの売買や窃盗などの犯罪行為に手を染め、その赤みがかった髪色から“デトロイト・レッド”という異名で恐れられた彼は、20歳から7年間にわたって服役。獄中で白人社会に対して戦闘的な姿勢をとる「ブラック・ムスリム(黒人回教)」に傾倒します。

米国内のアフリカ系アメリカ人によるイスラム教組織「ネーション・オブ・イスラム(NOI)」に所属し、奴隷時代以前の先祖の苗字がわかっていないことを意味する「X」をその名に冠したマルコムXは、その聡明さとカリスマ性から、急進的な黒人運動のリーダーとして一気に頭角を現すこととなりました。

その後、所属するNOIの在り方に疑問を感じて離反。思想の異なる組織を自ら立ち上げたマルコムX。

幼いころから差別に苦しみ、黒人至上主義を掲げる活動家として戦ってきた彼が、イスラム教の聖地・メッカの巡礼を経て辿り着いたのは「優劣など存在しない、真に平等な社会の実現」でした──。

1965年2月21日、ニューヨーク・ハーレムでの演説中に16発もの凶弾を受けて帰らぬ人となった偉大なリーダー・マルコムXの生き様や想いは、 その後に世界中で巻き起こったBLM運動だけでなく、さまざまなシーンやカルチャーに強い影響を与えています。

以下は黒人映画監督のスパイク・リーによる1992年公開『Malcom X』のトレーラー。

黒人を取り巻く社会、そして差別とは?真の平和と平等とは?マルコムXが世界に伝えたかった想いとは?

機会があれば、本編もぜひご覧ください。

© Movieclips Classic Trailers/YouTube
Top image: © Michael Ochs Archives/Getty Images
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。