201ヵ国202人の「夢」から紐解く、世界で必要とされる「変化」
SDGs、持続可能な開発目標——。これは知ってる。2030年までに達成すべき17の世界的な目標があって……と、怪しくなるのはこの辺りから。
「では、何かひとつでも、どんな目標なのか説明できる?」
SDGsを詳しく解説する文献は世にあまた。もしも、「169の達成基準」や「232の指標」まで正しく理解したいということならば、きっとほかに相応しい参考図書があるはず。
ここで紹介したい本は、必ずしもSDGsがテーマではない。なぜなら主題は「夢」だから。けれど、登場する夢のひとつひとつは歯車のように、世界が掲げる「目標」と隙間なく噛み合っている。
誰にだって、夢がある。
今月2日に発行された『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』(いろは出版)は、世界201の国と地域でSDGs達成に取り組む、202人の若者たちが書き下ろした「夢」を詰め合わせた本。
びっしりの「夢」は500ページを超える。いくつか抜粋してみよう。
赤道・ギニアの青年は、「ブルーエコノミー」実現の夢をみる。コソボに暮らす少女らが夢みるのは、他民族社会での「文化的多様」だ。ボリビアの女性は「女性のエンパワーメント」と「社会的不平等」のない世の中を夢み、東ティモールの女性は「きれいな水」を求めて叫ぶコミュニティがなくなることを夢みている。
それぞれの土地で暮らすミレニアルズやZ世代。環境やバックボーン、抱える課題もまたそれぞれだ。けれど、彼らに悲観はない。より良い未来を願い、見果てぬ夢を追いかけている。
そして、彼らの「夢」のひとつひとつを噛み砕いていくと、それらはすべて「17の目標」へと帰結する。この本の秀逸さは、まさにここ。202人の若者たちの「夢」が、世界がそこに向かってともに歩もうと掲げた「目標」を代弁する構図そのものにある。
世界の「夢」の叶え方。
「誰ひとり取り残さない」はずなのに、個人レベルではなかなか捉えどころのない国際目標。それが「夢」という共通言語に置き換えるられることで、鮮明さが何倍にも増すのはなぜだろう?
夢に大小はない。それを実現させようと本気で挑むパワー、手の届く小さな世界から本気で変えたいと願い、信じて起こす行動。そして、202人がその先に見る夢……そこを読み解いていくと、この本の本当のおもしろさに気づくはず。何十億もの声を代弁する彼らの夢は、まさしく世界の縮図だ。
最後に、こんな質問で終わりたい。
「行動の10年」が叫ばれて久しいが、アナタが本当に知りたいのはどっち?
10年足らず先に待つゴールなのか。
世界が同じ目標に向かって歩んだ、その山の頂から見える景色なのか。
『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』
【編者】WORLD DREAM PROJECT
【発行日】2021年6月2日
【出版社】いろは出版(https://hello-iroha.com/news/we-have-a-dream/)
【価格】2860円(税込)
【Amazon】https://www.amazon.co.jp/dp/486607194X/