世界一貧しい元大統領が語る、「政治とお金」を切り離すべき理由が深い・・・
「政治にお金は必要ないんです」。どの政治家からこのセリフを聞くよりも、現実味があるのは、もしかしたらこの人物をおいて他にいないでしょう。
“世界で最も貧しい大統領”のキャッチフレーズで、世界中から賞賛される元ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ氏。2014年「CNN」のインタビューに答えた彼のメッセージを抜粋して紹介します。「お金持ちは、政治の世界から出ていってもらうべき」この言葉の真意とは?
政治にお金なんて
必要ないさ。
第40代ウルグアイ大統領を務めたホセ・ムヒカ氏は、「政治にお金は必要ない」とはっきり言及しています。
「私たちは、過半数によって決められる“議会制民主主義”というものを発明しました。多数派が決定権を持つ世の中。ならば、国家元首の生活も大多数の人々と同じであるべきでしょう?」
本名ホセ・ムヒカ・アルベルト・コルダノ。愛称はエル・ぺぺ。小国の大統領だった彼が、一躍世界的に有名になったのは、2012年「BBC」が“世界一貧乏な大統領”と見出しをつけて紹介してからでしょう。
かいつまんで記事の内容を紹介すると、ムヒカ元大統領が任期中、報酬月額25万ウルグアイペソ(現在約100万円)の90%を慈善団体に寄付していること。さらに、自らは大統領公邸には住まわず、郊外の農場で夫婦二人、静かに暮らしていることが紹介されたもの。
この日から、“世界で最も貧しい”というネガティブなようで、最も賞賛されるフレーズで多くの人の耳目に触れるようになりました。
みんなの幸福のための“闘争”
それが、政治だよ。
およそ5年に渡る大統領任期を2015年2月に終え、現在、ムヒカ氏は自分の保身や支援献金ばかりに奔走する政治家たちを、痛烈に批判します。なぜなら、彼には真意があるから。
たとえば、ウルグアイの国会議員は今日、100万ドル近い純資産を得ていると指摘します。政治家への規制は大幅に緩められ、候補者への直接献金以外、事実上無制限となっているからだそう。
この現状を元大統領は、こう揶揄します。「レッドカーペットの上を政治家が歩いて、いい気になっているだけ。そんなものは、封建時代の遺物」だと。
しかし、ムヒカ氏はお金持ちが悪いわけではないと否定します。ただ、彼らには世界のために何ができるかを考えるだけの力が足りないと一蹴。
「べつに、金持ちやお金が好きな人を嫌って言っている訳じゃないんだ。だけど、こと政治においては、きちんとすみ分けがなければいけない。政治と金。これを完全に分離して考えられなければ、世の中はひとつとして良くはなっていかない。お金に関心があるならば、産業や通商に精を出したほうが、よっぽど健全さ。でも政治だけは違う。みんなの幸福のための闘争なんだよ」
政治家が自分の視点に
お金のフィルターを
通してはいけない。
なぜ、貧しい人たちのためにならない代表者を、裕福な人々が選出してしまうのかを尋ねられたムヒカ氏。彼は、手心を加えるようにこう表現してみせます。
「彼らは自分の視点にお金のフィルターを通して、物事を捉える傾向にあるからさ。たとえ、善意で世界や生活を良くしようという高い志があったとしても、それもどこかに“富のため”という心が働く。もしも、私たちの住む世界が多数派によって統治されるのであれば、私たちは自分の視点の拠り所を、多数派に置き換える必要があるんだ」
ネクタイ着用を求められたムヒカ氏、何の役にも立たないただのボロきれだ、とインタビュー中にも信念を貫き、「私は消費至上主義の敵」とムヒカ氏は自身を例えるユーモアを見せたそうです。
80歳になった元大統領は、今もモンテビデオ郊外にある農場で、妻と二人、静かな暮らしを続けています。