梶原由景がシチュエーションに惚れた立ち飲み屋「酒場 井倉木材」

クリエイティブディレクター梶原由景氏といえば、業界きっての食通としても知られる人物。そんな梶原氏がグルメ情報番組の企画・プロデュースにおいても手腕を発揮するのが『どやメシ紀行』(J:COMチャンネルで好評放送中)です。

登場するのは関西圏の飲食店。酒好きが瞠目する料理はさすがのひと言。なのに、全編に漂うゆるくてコテコテなトーン。ハイエンドマーケットにおける氏のクリエイティブとのギャップに、妙な違和感を覚えます。

そこで、ご本人に直撃。5回にわたってお届けするインタビューでは、オススメの店とともに関西の飲食事情を独自の視点で語っていただきました。

まずは「番組の舞台裏」にフォーカス。京都のビックリ立ち飲み屋情報と合わせてどうぞ!

梶原 由景

クリエイティブ・コンサルティングファーム「LOWERCASE」代表。異業種コラボの草分けとして様々な企業・ブランドとのプロジェクトに取り組む。2015年11月、藤原ヒロシと「Ring of Colour」を立ち上げ情報発信中。食にも精通するトップクリエイター。

簡単に言えば、
大人の悪ふざけですね(笑)

──食に精通した梶原さんがどういった視点から関西の飲み屋を選び、紹介しているのか?まずはそこから教えてください。

 

単純ですよ。食べログやミシュランではなく、もっとパーソナルな価値基準。つまりは自分が食べて本当においしいと思うお店を紹介しています。

どやメシの前段として2010年に東京の食のガイド本を出しました。自分がよく訪れる渋谷区、目黒区、世田谷区周辺のお店が中心です。

23区網羅しているわけじゃないんですが、どこも自分の舌で紹介する嘘いつわりない味。それの関西版みたいな意味合いで始めた番組です。

 

──実際どの辺りまでプロデュースに関わっているのでしょう?

 

全部です。お店も食べるものもすべて。

当初は放送作家さんがいたんですが、食体験や目線が同じでないとどうしてもパーソナルな視点がブレたり、修正が多くなる。だったら最初の部分から入った方がいいと思いました。

プロットまで僕が仕上げてディレクターに渡すという感じでやっています。

 

──こうした企画はセレクターが重要かと思いますが、見えかたとして梶原さんではなく、謎のブログスター僭越太郎をレポーターに立てた意図は?

 

僕がテレビに出たくないからです。出なくていいということを条件に引き受けたので、関西でちょっとおもしろいオジさん、僭越さんを紹介しました。当時のコント番組をヒントに決め文句「どや!」を毎回言わせようということに。

 

──庶民派の要素もありますよね。

 

意識高いメディアなんて見向きもしない人たちが「俺でも行ける店紹介してる!」って楽しんでもらえたらいい。

要は大人の悪ふざけなんです。

僕にとっては『ニッポン居酒屋紀行』とか『酒場放浪記』の完全にパロディですから。

 

──大人の悪ふざけ……なるほど。でも、どの店も個性的で画面を通してものどが鳴ります。

 

もちろんパロディで終わらせず、価値基準というか食のバイアスもまったく関係ないところで、単純にうまくてオススメできる利用価値のある店を紹介しています。

それから、立ち飲みってスタイルが大事だったりする。客層だったり、雰囲気だったり、店主がおもしろいとかも。そういう捉えられない魅力も伝えることに意味があると思います。だから、誰でもわかる評価の高い店や高級料理は避けるようにしています。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。