ようこそ地獄のナイトツアーへ。長崎の雲仙地獄は「夜」こそ本番

よく目にする「長崎・雲仙地獄」といえば、だいたい下の写真のような景色ではないでしょうか。

モクモクと湧き上がる湯気。
温泉余土の白い土。
強烈な硫黄臭。

実際、Googleで画像検索しても似たようなものがたくさん出てきます。

確かにこれだけ見ても「はるばる、地獄へ来たなぁ〜」と感じるものですが、今思えばこんな “地獄” はカワイイものでした。

ウェルカム トゥ ヘル!

日が暮れてから、もう一度「雲仙地獄」へ足を運んでみると、まさにそこは「地獄へようこそ!」の世界。

と言っても勝手に侵入したワケではなく、地元のガイド「雲仙ガイドさるふぁ」さんが主催する「雲仙地獄のナイトツアー」に参加した形。所要時間は1時間。

HPには、こんな風に書かれています。

暗闇の中ライトを持って進んで行くと、昼間は気づかない「音」が聞こえて・・・。参加した人だけが地獄の秘密を知ることができるかも?

これは楽しみ。

こういう観光地って、なんとなく歩いて、設置してある案内板をなんとなくうなずきながら見て、「そろそろ行く?」なんて言いながら、なんとなく分かった気になって帰るのが関の山ですが、今回は違います。

雲仙はそもそも、701年(約1300年前)に奈良時代の僧、行基が開いた女人禁制の霊山だったそうです。高野山や比叡山より100年も早かったそうで、当時は、西の高野山とも言われるほど栄えていたとか。

そんな成り立ちもあり、雲仙地獄の噴気スポットには「現世に悪いことをすると、死後に苦しみの世界に落ちるよ!」と、当時の仏教説話にもとづいたネーミングがたくさんつけられています。

たとえば「邪見地獄(じゃけんじごく)」と呼ばれる噴気ゾーンは、ねたみや醜い心を捨てるための場所。この温泉のお湯を飲むと夫婦や友だち同士の嫉妬心を解消するという云われですが、実際は強酸性でまったく飲めたものではないそうです。

看板に書いてある英語訳は、「Jealousy Hell(ジェラシーヘル)」。

想像しただけで昼ドラも青くなる地獄絵図です。

 

とはいえ、この仏教思想にもとづいた地が、江戸時代にはキリシタン殉教の地となります。それを思うと、いったい何が地獄で何が天国なのか、このナイトツアーに参加している間もずっと、僕の頭を悩ませることになるのです。

確かに聞いたよ…
夜だけ聞こえる「地獄からの声」を

入り口付近ではライトアップされた幻想的な雲仙地獄を楽しみつつも、奥へ奥へと歩いていくと、頼りになるのは月明かりと、ツアー用のライトだけ。

たどり着いたのが、「大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)」。もう名前からして恐怖。雲仙地獄に30あると言われる地獄のなかでも、現在もっともアグレッシブな噴気です。

 

ここは噴気口から「アー、オー」という低音の叫び声や喚き声が聞こえる……と解説されるのが一般的ですが、夜になるとちょっとフシギな現象が起きるんです。

ガイドさんに言われるがまま、耳に手を添えてしばらく沈黙すると、確かに聞こえてきました。「キャー、ワー」という “高音” の叫び声が! しかもその声はひとりではなく、確実に大勢。

「僕は、こちらの叫び声こそ、大叫喚地獄の由来だと思っています。おそらく案内看板の内容を考えた方も昼間の様子を見て書いたと思うんですが、この高音の叫び声こそ、昔の人が恐れおののき、この先に地獄があると信じざるを得なかった本当の理由だと思うんですよね」

と、ガイドの佐々木さん。うっかり紹介が遅れましたが、佐々木さんの興味深い解説と共にこのツアーは進みます。

雲仙地獄に通い続けた人だからこそ分かる、本当の地獄の姿を教えてくれます。

マーティン・スコセッシは
雲仙地獄で何想う

佐々木さんはガイドの途中、おもむろにこんな話もしてくれました。

「マーティン・スコセッシ監督もいらっしゃったんですよ、ここに」

え、あの『タクシードライバー』の?

「そうですそうです。遠藤周作が原作の『沈黙 -サイレンス-』という映画を撮るための視察で。実際の撮影は海外だったんですが、あの映画の冒頭は、まさに雲仙地獄で起きたキリシタンの拷問シーンから始まるんです。熱湯をかけて、棄教を迫るんです」

初めは「白いモクモクがすごい場所」くらいにしか思ってなかった雲仙地獄のイメージが、ゆらゆらと変わっていく感覚。

『沈黙 -サイレント-』はまさに、キリシタン弾圧下の長崎が舞台です。隠れキリシタンと宣教師たちがどんな境遇に遭い、どんな人生を送ったのかが描かれているわけですが、約400年前に、いま自分が立っている場所で起きた出来事なのかと思うと、ちょっと足が重くなり、なんとも言えない切ない気持ちになるわけです。とはいえ幕府にだって大義はあったんだよなぁ、と少しだけ昔の授業の記憶が蘇ってきました。

ちゃんと咀嚼できない自分の不勉強さこそ地獄で焼き払いたい気分でしたが、なんとこのツアー、1人500円。学びが多すぎる一夜になりました。

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おはよう雲仙!
昼間の地獄は、もはや爽やか

翌朝の雲仙地獄は、すっきり快晴。

人間の、罪も業も横目に、ずっとモクモクしているわけですから。

改めて「地球すげー!」と思うわけです。

ぜひ雲仙地獄は、ナイト&デイの両方をお楽しみください。

「雲仙地獄」

住所:長崎県雲仙市小浜町雲仙320
TEL:0957-73-3434(雲仙温泉観光協会)
営業時間:24時間

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