南城市は、もう一度「ありがとう」を想うのに最適な場所なのかもしれない
なんだか優しい気持ちになれる、というのは、とても大事なことだと思うんです。
ドラマの『深夜食堂』が好きで、よく帰りの電車でボーッと見ているんですが、1話終わったあとはポカポカした優しい気持ちになって、たとえ仕事がパツパツでも、イライラするようなことがあったとしても、「まぁ今日も1日がんばったよな〜」なんて思わせてくれるから好きなんです。ストーリーはとてもシンプルで、小林薫演じるマスターが営む、深夜0時に開店する小さな食堂を中心にした人間模様を、1話完結でまとめているもの。
何か特別なメニューが出てくるわけでもないのに、赤ウインナーやポテトサラダ、親子丼などが無性に食欲をそそり、そこにある色々なストーリーに感情移入しちゃうんですよね。
つまり何が言いたいかっていうと、日本のLOCALを旅するときに求めることもこの感覚にとても近くて、特別な何かがなくても、それが自分にとっては特別だったり、優しい気持ちになれるような「体験」が必要なんじゃないかな、ということです。
那覇から車で30分
「南城市」で元気をもらう
実は那覇から近いということがあまり知られてないんですが、南城市は沖縄県の南東に位置していて、世界遺産の「斎場御嶽(せーふぁうたき)」や「久高島」など、琉球の起源となる神話や遺跡がたくさんある街です。
そんな聖地南城を、琉球セラピストであり「Vitamin-N」などを手がける相澤和人さんに案内してもらいました。
「まず、ありがとうを伝えたい人を10人、思い浮かべてください」
おぉ?
正直、少し戸惑いつつも、両親や今の家族、仕事でお世話になった人などを思い浮かべながら、百名ビーチへと続く緑のトンネルをくぐり抜けていきます。
何も考えないって
むずかしい
これまではビーチを目の前にしても、ただただゆったり身を預けるなんてことは実はほとんどできてなくて、つい写真を撮ったり、誰かに送ったり、余計なこと考えたり、「あ、仕事大丈夫かな?」なんて思ったり。
そんな僕に相澤さんがくれたアドバイスは「呼吸に集中するといいですよ」というもの。なるほど。確かに呼吸に集中すると、そのこと自体がメインになり、意外にも「何も考えない」ことができました。実際は呼吸のことを考えているんだけど、イヤな感じは一切しないし、むしろ心地がいい。
ガラにもなく、アマミキヨという女神が降り立ったと言われる岩「ヤハラヅカサ」が見えるところで、目をつぶって瞑想もしてみました。波の音を聞きながら、過去のこと、人生のこと、仕事のこと、家族のこと、いろいろ頭の中を巡ってしまったけど、それまで曇天だった雲の隙間からサーっと太陽が出てきて、気温と体温がグーッと上がるのを感じると、ちょっとだけ、いろいろなことがどうでもよくなってきました。
ただただ「あったかいなー、気持ちいいなー」と。
そこからは
いつもと少し違う「沖縄旅」
最初に百名ビーチでそんな風に感じたものだから、そのあとに行った全国名水百選の「垣花樋川(かきのはなひーじゃー)」や、聖地「斎場御嶽」はもちろん、「ニライ橋カナイ橋」や「知念岬公園」も、ただただ絶景を観光するというよりは、いつもより少し自分と向き合いながら、相澤さんの最初の言葉を思い出していました。
「まず、ありがとうを伝えたい人を10人、思い浮かべてください」
今回巡った先は、沖縄らしい絶景と、琉球のルーツをかけ算したようなところばかりで、原点回帰するにはピッタリでした。
それが、環境や自然、さらには自分自身への「ありがとう」に繋がっていたのかと思うと、してやられた感はありつつも、そういえばこういう気持ちで旅をしたことはなかったな〜と思い、とても新鮮でした。
南城は、もう一度「ありがとう」を想いながら優しい気持ちになれる、最適な場所なのかもしれませんね。