マレーシアで無国籍の子どもが生まれる理由
マレーシア・サバ州には、今、無国籍の子どもたちがたくさんいます。正確な数字は誰も分かりません。何万と言われることもあれば、何十万と言われることも。法的には存在しない人々なので、政府やNGOのデータに載っていないのです。
なぜ無国籍の子どもたちが生まれてしまうのか?
その理由をご説明します。
本題に入る前に、ちょっと自己紹介を。僕は、マレーシア・サバ州にある「Nana School」という学校で、1年間先生をやっていました。生徒は無国籍の子どもたちです。以前「World Topics」で公開されたこの記事を読んで、原稿を書いています。
マレーシアといえば、クアラルンプールを思い浮かべる人が多いかもしれません。夜景は印象的ですよね。
この摩天楼をつくることができるのも急速な経済成長のおかげです。事実、政府は経済面などで先進国入りするぞ!と、かなり意気込んでいます。
ですが、今まさに問題となっているのが人手不足。マレーシアという国全体で、その成長を支える人材が足りていないんですね。
そこで重宝されるのが不法移民。マレーシアが抱える人手不足問題とは切っても切れない関係にあります。
僕が滞在していたサバ州にもフィリピン系の移民がたくさん暮らしています。彼らの中には、正式な手続きをしないで入国している人もいます。高い賃金を求めて海を渡っているのです。出稼ぎってやつですね。
そして、ゼネコンは安い労働力として、見て見ぬ振りをしながら彼らを雇うこともあるのです。
マレーシアには不法に入国した人ばかりでなく、1960年代からフィリピン南部のミンダナオ島で続く内戦から逃げてきた人もいます。難民といえば分かりやすいかもしれませんが、彼らも残念なことにマレーシアでは不法移民として考えられています。
冒頭にお伝えした、法的に存在しない無国籍の子どもたちが生まれてしまう理由ももうおわかりですよね。それは不法移民の子どもだから。
両親がマレーシアに不法滞在しているため、出生登録ができないんです。
他の国や地域に目を向ければ異なるさまざまな理由がありますが、ことマレーシアにおいては前述の通り。
僕は誰が悪いのか?という責任を明確したいわけじゃありません。ありのままの現状を知ってほしいのです。マレーシアは人手不足に苦しんでいて、不法移民が暮らしている。さらに、無国籍の子どもたちがいる。これらを伝えたい。ただそれだけが、この原稿を書くにいたった理由なんです。
無国籍の子どもたちの暮らし方についてはコチラ。