国籍がない「海の遊牧民」バジャウ族を撮影した写真
フィリピン、マレーシア、インドネシア周辺の海域に定着し生活をしており、住居は海の上。そんなバジャウ族には国籍がないと言われています。水上生活が主なため、陸に上がると“陸酔い”を起こしてしまうのだとか。
潜水用具などを一切身につけずに水深20mまで潜り、5分も息継ぎなしで狩りをする能力があるそうですが、その様子を実際に撮影した「BBC」の動画には驚きます。
まるで半魚人!?
海の中を歩いてます。
凄いのは大人だけではありません。生まれてからずっと海で育つこともあり、子どもたちの知恵にも驚かされます。
以下の動画では、転覆して水でいっぱいになってしまった船から見事な方法で"排水"する少女の姿が捉えられています。たったひとり、しかもほんの数秒しかかかりません。
そんな彼らの生活の様子をフィルムメーカーであり、フォトジャーナリストでもあるジェームス・モーガン氏が紹介しています。彼のWEBサイトに掲載されている写真や情報を一部紹介します。
海の遊牧民
「バジャウ族」の暮らし
浅瀬に立ち並ぶ高床式の住居。
建物の中にはモスクがあります。彼らの信仰には、ムスリム教に加えてアニミズム(生物や物、自然などに霊が宿っているというような考え)が混じっているそう。
小舟で移動しながら、魚やナマコ、貝類などを取って生活しています。採れた魚を売っては、米や水を買いに行くようです。
子どもたちの遊び場はもちろん海。写真にはサメと楽しそうに泳ぐ少年の姿が。
こちらは漁をする男性。使用しているのはゴーグルとスピアガンだけ。通常は、肺に空気をためてから潜るところを、彼らは空気を吐いて肺を空にして長時間潜水します。
撮影を行ったモーガン氏は、海洋保護のための知識をバジャウ族から学ぼうとしていました。しかし、彼らが漁業の効率化のためにマッチの火薬でつくった自家製ダイナマイトを使用していたことを知ります。多くの魚を捕獲して売るためですが、爆弾の使用はサンゴ礁を壊し生態系を崩す原因にもなっていました。なかには爆弾によって傷つく人々も。
そのほかにも化学薬品による漁が行われており、その影響でけいれんを起こして話ができなくなってしまった男性もいます。
採れる魚が年々減少していることに関しては、彼らも肌でその影響を感じとっていました。「かつては100㎡ほどの地引き網漁でいっぱいの魚が採れたが、1k㎡に拡大しても採れる魚はほんの一握りになってしまった」と話すバジャウ族の人々。
「The Guardian」は、いくつかの慈善団体が、魚の取れない地域での持続可能な生活や海の環境管理システムを整えようとサポートを行っていると伝えています。
2010年に撮影されたモーガン氏の動画には、その他にも海の上で暮らす人々の生の声が。「お金があったら地上で住みたいと思う?」との質問に「私は海の上が幸せ」と語った女性の表情は印象的です。なかには、年齢という概念があまりはっきりないともとれる返答も。課題もありますが、まさにそこにしかない文化が記録されています。
その他の写真などはコチラから。