マーメイドが泳ぐのは、1万本の「ペットボトルの海」
渦の中を泳ぐ、ひとりのマーメイド。海をイメージして撮影されたこの写真には、なんと約1万本ものペットボトルが使用されているそう。カナダに住む写真家のボン・ウォングさんは、なぜこんなにも大量のペットボトルを使ってマーメイドの写真を撮影したのか?その理由はたったひとつ。
「プラスチック廃棄問題の深刻さ」を伝えるため。
「訴えかけるだけでは無理。
クリエイティブの力が必要だ」
プラスチックの廃棄問題については、以前から世間に訴えたいと強く考えていたそうです。でもこの問題は、ただ訴えかけるだけでは伝わらない。そう感じた彼は、人々を惹きつけるようなクリエイティブでアピールすることにこだわりました。しかしそう簡単にはうまくはいきません。
なかなか良いアイデアが浮かばず悩んでいたとき、たまたま彼の母親がマーメイドの尻尾を制作してくれるデザイナーを見つけてきたのです。
「プラスチックに囲まれたマーメイドの写真を撮って、世の中にプラスチック廃棄問題の深刻さを訴えよう」
さっそく、彼の元にはさまざまな賛同者が現れました。ひとりの友人が、廃棄物処理センターから1万個ものペットボトルを借りてきて、SNSを通じて集まったボランティアたちがラベルを剥がし、キャップを取ってペットボトルを洗う作業を手伝いました。
また、別の友人は撮影場所として倉庫を手配。
多くの協力者のおかげで実現
俯瞰からの撮影は、その対象が大きくなるほど労力も膨大なものになります。 また、それぞれの写真撮影にはたった数秒程度しかかかりませんが、ペットボトルを並べる作業は想像の通り、とんでもない労力。
しかし、そんな苦労の甲斐もあり、出来上がった作品のクオリティには驚かされます。プロジェクトが始まるきっかけともなった「マーメイドの尻尾」を制作担当したシンシアは、ウェディングドレスをリメイクし、きらびやかな尻尾をつけ、特製マーメイドドレスを完成。
また、ヘアメイクのプロとエアブラシアーティストがタッグを組み、虹色のマーメイドをつくりあげました。
「共感してくれるなら
3つのことを実践してほしい」
ボンウォングさんは、こう考えました。「プラスチック廃棄問題の深刻さを知ってもらう一番の方法は、ありのままに、その規模の大きさを伝えること」だと。
Facebookは4日間で670万PVを記録し、賛同者の署名は7,200人にものぼったと言います。でも彼は、いたって冷静にこの状況を捉えています。「悪くはないと思うよ!でも、もっと広まってほしいね」と。
さらに彼は、このプロジェクトに少しでも共感してくれるならば、次の3つのことをやってほしい、と提案しています。
1.再利用できるボトルを買って使う。
2.マイボトルやマイバッグを持ち歩くようにする。
3.ペットボトルの廃棄問題を理解し、周りに広める。
私たちの日常に当たり前のようにあるペットボトルですが、当然、無限の資源ではありません。まずは、自分にできることから始めてみませんか?