海とつながる女性たちの「ポジティブなお産」のものがたり
あなたは自分のバース・ストーリーを知っていますか?どうやって生まれてきたか。そのとき、母はどう思っていたのか……。
すべての出産が特別で、母親の数だけ物語はあるはずです。それなのに、厚生労働省の「人口動態統計(2019年)」によれば、日本での出産場所の99%以上は病院もしくは診療所で、助産院や自宅での出産となると1%にも満たない数字。
もちろん、出産の医療化が進んだ結果という捉え方もできるでしょう。より安心、安全なお産を望む声もあるでしょう。ただ、同時にこうも思うのです。
はたして妊娠・出産の選択肢はどれだけあるかと。
すべての女性に与えられた
産みかたを選ぶ権利
どんな場所でどんなお産をしたいか。
妊婦が自主的に出産方法を選んだり、医療的な介入を最小限にとどめる「アクティブバース」という考え方を推奨する産婦人科も増えてはきているものの、自分が産みたい場所で、産みたいように産む。この一見当たり前のように思えることが、日本に限らず、世界の国々でもなかなか叶うまでには至ってはいない現実があります。
そんななか、1本の短編ドキュメンタリーが世界中の多くの女性たちから支持されていることを知りました。『Water Baby』をご存知ですか?
2019年9月に公開され、すでに800万回再生を記録。世界3つの映画祭で受賞し、5つの映画祭で出展作品に選ばれるなど、国際的に高い評価を受けたドキュメンタリーフィルムです。
主人公はフリーダイバーで女優の福本幸子さん。パートナーでフリーダイビング世界チャンピオンのウィリアム・トゥルブリッジさんとともに“出産先進国”として知られる彼の故郷ニュージーランドで、自宅での水中出産を経験。その様子を記録したもの。
9割の女性が助産師を選び、多くの妊婦が自宅や助産院での出産に挑むというニュージーランドでは、ホームバースも水中出産も、ごく当たり前の選択肢だとフィルムは教えてくれます。
日々の生活で海と深く関わってきたふたりにとって、水中出産は念願だったそうです。自身の体験を通し、「すべての女性が、自分が望む方法で出産できるようサポートを受けられるようになってほしい」という想いが福本さんのなかに芽生えました。
生命のはじまり、母と海。
こうして、現在『Water Baby』の続編となる長編ドキュメンタリー『Pacific Mother』の製作が進行中。
舞台はハワイ、タヒチ、クック諸島、ニュージーランド、そして日本。太平洋で海とともに生きる女性たちと出会い、彼女たちの妊娠・出産のバースストーリーが紡がれていきます。
この続編で着目したいのが、命の源となる“お産”と、生命の起源である“海”とをリンクさせた考え方。
すべての人類を生み出した母親と同じように、地球上に存在するすべての生命を生み出した海もまた、偉大でありか弱い存在です。両者を守ることは、社会や人類の平和に直結するのではないでしょうか。
出典:Pacific Mother - Impact Trailer
母と海——。
命を育む母を守ることと、すべての生命の母である海を守ること。それを同義語で考えることができれば、世界はより良いものになると強調する福本さん。
気候変動による生態系の激変や流出するプラスチックごみ問題など、過去に例を見ない危機的状況にある海は、妊婦と同じく、とてもデリケートな存在です。その海とともに生き、母となった福本さんは作中、再びニュージーランドに渡り第二子の出産に挑みます。
出産制度、女性の権利、そして海の保全。現代社会が抱えるグローバルな問題を『Pacific Mother』がどう描くのか。完成予定は2022年9月。
誰もが主人公。
それぞれのバースジャーニー
さて、“産み”と“海”のドキュメンタリー『Pacific Mother』を世界に発信すべく、福本さんは現在、製作メンバーとともにクラウドファンディングを展開中。作品への想いやメッセージはそちらに詳しく。
リターンは「お気持ち支援」や「オンライン試写会」から、ニュージーランドで活躍する助産師たちの「実地見学ツアー」、「パートナーと育児を本気で楽しむメソッド」、さらには福本さんによる「水中で美しく見えるポージング講座」など、じつに多様。
それだけ『Pacific Mother』というドキュメンタリーは、出産をこれから迎える女性たちはもちろん、そのパートナーも、海を愛するサーファーやダイバーにも、地球環境に関心のある人にも、垣根を越えた共通のテーマを私たちに享受してくれるような気がしてなりません。
最後に、ステキな予告編をご覧ください。