マレーシアの法的に存在しない子どもの暮らし方
マレーシア・サバ州には、今、無国籍の子どもたちがたくさんいます。
彼らは法的には存在しない人々。だから、警察などの目から隠れるためにジャングルの中で生活を送っています。そんな子どもたちの暮らしについて紹介します。
原稿を書いている僕は、マレーシア・サバ州にある無国籍の子どもたちのための学校「Nana School」で、1年間先生をやっていました。
この学校は地元の教会から支援を受けていて、ボランティアによるサポートで成り立っています。だいたい200人の子どもが勉強をする場所です。
政府に認められているわけではなく、カリキュラムはありません。教科書もこの学校独自につくったお手製のもので、僕が宿題用の問題を考えることもありました。
大変なことに思われるかもしれませんが、この学校の先生はやりがいのある仕事でした。子どもたちは学習意欲にあふれているし、とにかく知らない知識を得られる勉強を楽しんでくれるのだから。
……と自分の話をしてしまいましたが、本当に知ってほしいのは子どもたちについて。
彼らの親のほとんどは建築現場などで不法就労をする正式な手続きをせずに入国した不法移民。そのため、子どもたちもマレーシア政府に知られていない、無国籍者となります。
学校の生徒にTonyという7歳の男の子がいました。彼は法的には世の中に存在しません。
マレー語を話すことができましたが、読み書きはできません。でも、学校が大好きで、いつも勉強をしていて、いろんな質問をしてきました。「少し黙ってよ!」なんて冗談も返しながら、マレー語の読み書きだけでなく算数や英語を彼に教えていました。
短時間でどんどんと成長していったTonyですが、突然、村を出て行くことに。両親が仕事を見つけるため、違う村に移動することにしたのです。
Tonyのような子は他にもたくさんいます。勉強を続けたくても、両親が定職に就けないのでいろんな村を移動して暮らさなければいけないから。
そして、そんな彼らが大人になると、現状のマレーシアでは両親と同じ選択を迫られる時がくるのです。それが、2019年のいまも起きている現実です。
無国籍の子どもが生まれる理由についてはコチラ。