「阿蘇」でだって出来る。元高校教師が作る国産コーヒーは、寒さを味方にした未知の味 ——熊本・後藤コーヒーファーム

コーヒー作りは未知の世界。
だからこそ、楽しい

©2019 後藤コーヒーファーム

コーヒーは生豆で輸入されるから、市場に出回る時には加工された状態(焙煎後の豆、粉など)になっています。つまり、どんなにコーヒーが好きな人でも、生豆より前の状態を目の当たりにする機会はなかなかありません。

 

「コーヒーには色んなアレンジがあります。コーヒーチェリーはジャムやスイーツにできるし、梅酒みたいな感覚でコーヒー酒を楽しむこともできるんです。あとは、強い酵母を出すのでパンとの相性もいい。実のまま焙煎すると紅茶のような風味を持った味になるし、発酵の要素を取り入れて若いコーヒーでコンブチャのようなこともできます。ほかにも、コーヒーの葉は天ぷらにすると絶品です。葉の新芽をじっくり煎ると、ほうじ茶のようなクセのないコーヒー茶を楽しむこともできるんです」 

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癖がないコーヒー茶はお寿司との相性も抜群だとか

こんな風な発見があったのも、コーヒーが育つ過程をじっくり見ているからこそ。コーヒーを本当の意味で“丸ごと”楽しめるのは、生産者だけなのかもしれません。

©2019 後藤コーヒーファーム

左上:果実の種子(パーチメント) 右上:果肉。

左下:アラビカ種イエローブルボン(黄色い果実) 右下:アラビカ種ブルボン。

ここまで読むと、後藤先生のコーヒー作りは順調のように思えてしまうかもしれませんが、大前提として日本でのコーヒー作りには前例が少なく、熊本での前例はないということを忘れてはいけません。はじめてのことをやっているのだから、苦労と隣り合わせなのは当たり前。なかでも温度管理に関する失敗やハプニングは色々あったそうで……。

 

「阿蘇でのコーヒー作りにおいては、冬場の温度管理が課題です。学校では当時、空いていた古い施設を使ってコーヒーを育てていました。そんなこんなで何度か停電を経験し、コーヒーの木が氷点下に晒されてしまったことがありました。−4度になった時には木はダメになってしまいましたね。ただ、0度までは耐えられるのは新たな発見でした」

 

2016年の熊本地震の際には苦労しながらもコーヒーに励まされたとか。

 

「地震で3日ほど身動きがとれなかった時、もちろん停電していたので温室は閉まりっぱなしで温度は50度くらいまで上がりきっていました。木はだら〜っとしていて茶色く焼けてしまって……。一度は諦めかけたんですが、木の下半分は奇跡的に緑を吹き返したんです。そんなコーヒーの生命力の強さを目の当たりにして、『コーヒーが俺たちに頑張れよって言っている。自分たちも頑張らないと』と、前を向くことができました」

 

想定外の出来事に落ち込みつつも、結果的にコーヒーの木は0度から50度に耐えられるタフさを持ち合わせているという貴重なデータをとれたのは学びだったと後藤先生は振り返ってくれました。そして、この時から後藤先生は阿蘇でのコーヒー作りに新たなテーマを見い出すことになります。

後藤先生のコーヒーの向かう先
それは……「熊本の救世主」?

©2019 後藤コーヒーファーム

新たなテーマとはズバリ「復興」。

 

「地震によって地域の旅館や施設は大きな負債を背負うことになりました。最初は違うテーマではじめたコーヒー作りですが、今僕の中で、復興は一番大きなテーマになっています。コーヒーで地域を盛り上げて、コーヒーを通して新たな観光客に来てほしいですね」

 

阿蘇に足を運んでコーヒー体験をしてもらいたいという想いから計画した「コーヒーの木のオーナー制度」(※2020年開始)には、全国から問い合わせが相次いでいるとか。ほかにも「豆を譲ってほしい」などの声もあるそうですが、今はまだ難しいのが現状です。

 

「安定した生豆生産のために、生産者を広げて量を増やす必要があります。だからまずは地域に広げること、そして、次の世代に引き継げるように形にしなければなりません。今はどうしても冒険的なので、おいしいコーヒーを作るために、ただ一生懸命にやっています」

 

実際に、後藤先生のところから少しずつコーヒー生産者の輪は広がっています。授業の一環で高校生と一緒にはじめたコーヒー作りが地域に根づき、地域を支え、ゆくゆくは地域を引っ張る可能性を秘めている……。

©2019 後藤コーヒーファーム

限定発売されたドリップコーヒーのデザインを考えたのは高校生。

近い将来、「キリマンジャロ」や「グアテマラ」はもちろん、「ブルーマウンテン」や「モカ」と肩を並べるのは「ASO」だったり「TOKUNOSHIMA」だったりするかもしれない。そんなことを想像し、ニヤニヤが止まらなかったのはここだけの話です。

 

「コーヒー作りは厳しいけど、楽しい。きっとコーヒーを作ってる人はみんなこう思ってるんじゃないかなあ」。

 

そんな風に話してくれた後藤先生のコーヒーは、甘くて香り高い。「国産コーヒーは生産者の味がする」という意味でいうと、アグレッシブ(※いい意味です)で、情熱的な味なんじゃないかなあと私は思います。

後藤先生のコーヒーを飲む方法は今のところ以下。

 

1、後藤先生に会いに行く。

2、熊本県菊池郡菊陽町にある「ケイズコーヒー」さんで豆をゲットする(※次回は2020年4〜5月を予定)

※2019年は「ケイズコーヒー」さん含む熊本県内7店舗で10g・200パック限定で販売

後藤コーヒーファーム

熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽字冠出3104

【 Mail 】 gotou.shisei@blue.plala.or.jp

Top image: © 2019 後藤コーヒーファーム
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。