韓国のシンガー・ソングライター O3ohn(オジョン)が語る「音楽に夢中になった理由、同じシーンで活躍する仲間への感謝」

 

ライター、フォトグラファーとして、音楽シーンを中心に、これまでUS、日本、ヨーロッパなど各地で活動し、現行のリアルなシーンを記録してきた。

菊地佑樹/ライター、フォトグラファー

世界の音楽カルチャーの中に自ら飛び込み、現行のリアルなシーンを写真や文章で記録する。Mac Demarcoのオフィシャル・フォトグラファーとして、これまでに『Another Demo One』のアルバム・カヴァーを撮影し、2017年にはアメリカ・ツアーにも帯同。フジロックやコーチェラではバンドと共にステージに上がり、撮影し、踊り、歌うなど、活動は多岐に渡る。日本では『POPEYE』などの媒体で文章を寄稿し、ミュージック・ビデオを制作しつつ、海外で出会ったミュージシャンの来日公演をディレクション、バンドとツアーを共に周りサポートしている。昨年発表した自費出版の写真集『REAL RECOGNIZE REAL』は、アートブックフェアの期間で即完。現在はコロナで来日公演がキャンセルになってしまったアーティストをメインにした映像配信を企画中。

チ・ユネの紹介で出会ったオジョンが自身で語ってくれた、音楽に夢中になった理由、音楽を弾いてみたいと思った時の気持ち、同じシーンで活躍する仲間への感謝について。

以下はオジョン自身のテキストを僕が翻訳したものだ。

 


 

学校を終えて家に帰ったら、付けっぱなしになっていたテレビからHOT POTATOの“Irnoy”が流れてきた。11歳、ぼくが初めて音楽に釘付けになった瞬間だった。いてもたってもいられなくなって、ぼくはMP3プレイヤーを姉から無理やり借りると、そのとき流行っていた音楽、HOT POTATO、EPIK HIGH、NELLなどを無我夢中で聴き漁った。

大学生になったぼくは、のちにXin Sehaとして活動を始めるジェヒョンと同じ大学で出会った。ぼくが出会った中でも特に物知りなジェヒョンは、仲良くなったぼくに、音楽、映画、芸術にまつわるあれこれを教えてくれた。ジェヒョンや他の友達の影響で、これまで以上に音楽を聴くようになったぼくは、膨大なYouTubeの動画などからも刺激を受けつつ、いつか自分も音楽を作ってみたいという気持ちを抱きはじめた。

いざ自分の音楽を作り始めようとすると、音楽の聴き方や影響が自分の中で大きく変わっていった。Xin Seha、Parasol、JOONIE、Hyokoh、Se So Neon、Sister’s Babershop、Hot Potato、韓国で活動するアーティストが輝いて見えたし、彼らの楽曲が僕の胸に突き刺さった。海外の音楽もそうだ。Frank Ocean、Benny Sings、Mac Demarco、Unknown Mortal Orchestra...どれだけの音楽に夢を見させて貰ったか分からない。

見つめるのは大きな夢、だけどそのときのぼくは実家暮らし。しかしあるとき、ひょんなきっかけで、ソウルに住んでいる友達の家に転がりこませて貰えることになった。ソウルに引っ越すと、早速カフェでアルバイトを始め、たまに親しい友達が作る映像に音楽をつける仕事を貰うようになったぼくは、現実と理想を行ったり来たりする生活を送っていた。

「ぼくのバンドでギターを弾かないか?」 久しぶりに再会したジェヒョンはこんな調子で、彼のバンドに僕を誘った。ぼくは迷うことなくそれを承諾した。

Xin Sehaのバンドでギターを弾き始めてからというもの、ジェヒョンの友達や、ライヴハウスで出会った人たちに、自分の音楽を聴いてもらえるようになった。次第にぼくの音楽を褒めてくれる人が現れると、ぼくは自信を得て、自分の音楽をレコーディングしたい気持ちがどんどん膨れ上がっていった。

最初のレコーディングは、非常に狭く、カビがいっぱい生えていて、横になることも出来ない、地下にあるスタジオで行った。上の階にはカラオケがあって、ぼくはカラオケに来ている人たちが帰るのをじっと待ちながら、また、隣の部屋に誰もいないタイミングを狙って、夜が明けていくなか、集めた安い機材を駆使して、なんとか一人でレコーディングを続けた。

ミキシングとマスタリングはXin Sehaのレコーディングをサポートしたエンジニアに協力して貰った。ラッキーなことに、その人はぼくの音源を気に入ってくれて、流通も手伝ってくれた。口コミでぼくの音楽が徐々に広がっていくと、自分も予想していなかった数の人たちに自分の音楽が届いて驚いた。その当時を振り返るたび、ぼくは協力して助けてくれた人たちへの感謝の気持ちを思い出す。

現在はHyokohと同じマネージメント会社のDRDR(ドゥルドゥル)に所属していて、新しいアルバムを製作中だ。サポートしてバンドメンバーも加わった。大好きだったパラソルからチユンヒがベース、ソロとしても活動しているジュニはシンセサイザーを弾いてくれていて、チャンギハと顔たちでドラムを叩いていたジェオンがドラムを担当してくれている。

Xin Seha、JOONIE、Chiyoonhae、Car The Garden、Se So Neon、Silica Gel、Hyokoh、92914、JNKYRD、ADOY、George、CIFIKA、チャン・ギハと顔たち、Mogwaaなど、より多くの人たちに音楽を聴かせたいという意思のもと、良い音楽を追求するアーティストたちが、現在韓国の音楽シーンにたくさんいることを誇りに思う。スタイルは違うけれど、同じ国に生まれ、同じ時代に生き、似たような悩みを持つ彼らのことを、ぼくは仲間だと思っている。

ぼくの曲には英語で歌われている曲がいくつかあるけど、ぼくは自分の音楽を韓国の音楽だと思っている。自分の思考を表現するものが音楽で、それを表現しているのは、韓国で生まれ育ったぼく自身だから。

O3ohn(オジョン)

2016年に音楽活動を開始したシンガー・ソングライターのO3ohn(オジョン)。EP 『O』でデビューし、以後『jon1』、『jon2』、『Simple Songs』を発表。R&B、フォーク、オルタナティブ・ロックをベースに、その他の多様なジャンルを経由する彼のサウンドは、ミニマルな楽器構成と編曲にも関わらず、多層的調和の取れた美しさを感じさせる。

Netflixで放送された韓国ドラマ『ミスター・サンシャイン』や、韓国の広告にもO3ohnの楽曲が抜擢された。展示への参加や、同じシーンの音楽仲間とのコラボレーションも行うなど、インディーに留まらず、現在は幅広い層からの関心と話題を集めている。

関連する記事

僕の視点で見た彼らの人柄や、バンドの相互関係にも触れているので、これから韓国のシーンを追いかけたい人はもちろん、これまで韓国のインディーを追ってきた人にも...
衝撃だった。初来日を果たした韓国のバンド、パラソルのライヴを見て、僕は震えていた。
僕が韓国に行きたいと思うきっかけを作ってくれたチ君と、チ君の前身バンドのパラソルについて。
音楽を説明するよりも、ソユンとの素顔を記すことで、ソユンの音楽と活動に興味を持って頂けたら嬉しいです。
外出困難者が“分身ロボット”で働く「分身ロボットカフェDAWN ver.β」が2021年6月、日本橋エリアでオープンする。
韓国を代表する筆記具メーカーの「monami」が、本社にinkLabをオープンさせました。このコンセプトストアでは、世界にひとつだけのオリジナルインクを作...
安くて近くて直行便もでている、韓国・大邱(テグ)。街の屋台をめぐると、手軽で美味なるフードが盛りだくさん。

人気の記事

2021年3月16日(火)に開業する「フォションホテル京都」に、フォションブランドとして世界初出店のスパ「Le Spa Fauchon/ル スパ フォショ...
SNS映えに特化した観光サイト「スナップレイス」が、2020年の総集編として「インスタ映えスポット」ランキングトップ10を発表。
「国際宇宙ステーション(ISS)」に滞在した山崎直子氏の経験を聞けるだけでも貴重な体験だが、今回はほかにもさまざまな特別プログラムが用意されているようだ。
国際送金サービスをおこなう企業「Remitly」が、“海外でもっとも住みたいと思われている国はどこなのか”をグローバル検索データを利用して調査。それぞれの...
東かがわ市の老舗手袋メーカー「江本手袋」が手掛けるブランド「佩(ハク)」から、外出先でのコロナ対策に便利なアイテム「ハンドソックス」がデビュー。
3月16日、軽井沢にほど近い御代田町に新たなラグジュアリーホテル「THE HIRAMATSU 軽井沢 御代田」が開業。すでに予約を受付中。
米国にできた最新の「7-Eleven Evolution」で夢のような宿泊プランが企画中。快適なラウンジシートや「プレイステーション 5」が用意されている...