オッパなしには語れない、韓国ローカルサウナ編

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

今回は、みさとさんからリョウコさんへ──。

清水みさと

俳優、タレント。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」ポスターモデルをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務め、TBS「世界ふしぎ発見!」など多方面で活躍中。近著に『サウナのぷりンセス』。

リョウコさんへ

 

韓国旅〜やらかし編〜」ありがとうございます。いやぁ、愉快な旅!

字面だと、なかなかのやらかしっぷりで、よく無事に行って帰って来れたなと思いました(他人事)。

海外旅行初心者なの?ときかれると、お互いまったくそんなことないというのも、“ホラー感”ありますよね。しかし、めげないのがわたしたちのいいところ。まぁいっかでここまできました。軽い〜。

 

さて、今回のわたしのターンは「韓国旅〜スッカマ(出会い)〜」を書きたいと思います。

©清水みさと

世界には、独自のサウナ文化を持つ国がいくつもあって、今回旅した韓国もそのひとつ。

韓国には「汗蒸幕」「チムジルバン」「スッカマ(炭釜)」というサウナがあります。わたしたちはこのすべてのサウナを網羅すべく、韓国に行ったことのある友人や、韓国在住の知人に調査。

そして、レアなローカルサウナ情報をゲット。そのなかでも特に印象深い施設での体験を書きたいと思います。むしろ、残したい。

 

そのサウナは、郊外にありました。「スッカマ(炭釜)」という韓国伝統の古式サウナで、読んで字の如く、木を炭になるまで釜で燃やし、その余熱で入るサウナです。ちょっと、フィンランドのスモークサウナみたい。

宿泊した東大門からバスで片道一時間半程度。さらにバス停から徒歩20分の道のり。

朝6時半出発。目的のバス停に着くと薄茶色い、灰色の景色が広がってました。あれ、これ韓国映画的にいうと任侠の世界の人が出てきちゃうやつ。観光客が来る場所ではない感。

本当は前日の夜、行こうとしてました。行く直前、お腹も減ったし、なんとなく、「やっぱりこのサウナ行くのは明日にする?」と、3日間、分刻みでバキバキに組んだスケジュールをサクッと変えたわたしたちは、翌朝行くことに。

野生の勘ですかね?ありますよね、こういうこと。直感に従ってよかった。ナイス判断。ナイス柔軟性。


はい!そんなこんなで、無事着きました。

©清水みさと

スーパーローカルサウナ「주심유황참숯가마(ジュシム硫黄堅炭サウナ)」Google翻訳によるとこんな感じ。

日本語はもちろん英語もない。すべてがハングルです。インターネットで調べた時も、韓国語しか出て来なくて、日本人が訪れた形跡がどこにもありませんでした。

©清水みさと

とりあえず受付で「スッカマ」を連呼して、タオルと着替えを手に入れます。

©清水みさと

中に入ると、大浴場あり、休憩スペースあり、レストランありとスーパー銭湯のようです。

スッカマは外にあり、オレンジ色の服を着た、おじさんとおばさんたちが一斉にわたしたちを見てきます。

©清水みさと

見慣れたサウナとまるで違うので、作法もわからなければ、どのサウナがどう違うかもわからない。とりあえず、いちばん端の唯一温度が表記されていたサウナに入ることにしました。

 

その温度、180℃。オーブンですか?

©清水みさと

さすがに大袈裟だよと思ったんですけど、入っている人みんな防災頭巾みたいなものを被っていたり、全身タオルで包まれていたりと、異常なまでの熱対策。

©清水みさと

入りました!無理!アツイ!

背中の汗を吸って湿った服が、自分の皮膚に当たって火傷レベルの熱さ。異国で、サウナが180℃だなんて、デタラメが相場なはずなのに……本当だったときの衝撃。

すると、韓国人のおじちゃんが「だめだめ、こっちにきなさい」と、わたしたちを別のサウナへ連れて行ってくれました。

 

じっくり入る体感70℃ほどのスッカマです。

おばちゃんたちが楽しそうにおしゃべりしていて、日本の銭湯やジムなんかと似た感じ。韓国でもサウナはコミューニケーションの場なんだと嬉しくなりました。さっきのが異常だったんですね、なるほど。


外でごろーんと寝転がって休憩していると、さっき声をかけてくれたおじちゃんが、「ミスッカル」というきな粉の味がするドリンクを買ってきてくれました。豆や穀物を粉にして牛乳で混ぜた健康ドリンクらしいです。

©清水みさと

「たばこ吸いに行かない?」とジェスチャー混じりの韓国語で誘われたので「わたしたち吸わない」と断りました。

しばらくすると、タバコをくわえたおじちゃんが遠くから「こっちおいで」とわたしたちを呼んでいます。

おそるおそる行ってみると「この丸太を燃やして温めてるんだよ」とスッカマのことを色々と教えてくれました。

©清水みさと

喜ぶわたしたちに嬉しくなったのか、おじちゃん、Google翻訳で「ソンホオッパと呼んで」と。そしてここからの会話は、すべてGoogle翻訳へと移行。ジェスチャーや、知ってる英語で頑張るコミュニケーションはやめたらしいです。

「仕事は、金融・建物・担保ローン・営業マーケティングディレクター・地」「2つだよ」

地?2つ?

とにかく、怪しくないことを言いたいことはよくわかりました。

「ネイバー検索すればいい」らしい。

©清水みさと

ソンホオッパ、この日は仕事が休みだったらしく、わたしたちと遊びたいことがわかりました。

でもわたしたち、3日間の韓国旅はやりたいことがいっぱいでソンホオッパに構ってる暇なんてどこにもないんです。

 

するとオッパ、「このサウナは、みんな車で来るんだよ。バスなんて使わない。僕がソウルまで連れて行くよ」と。

確かに、バスは誰も使っていなさそうでした、駐車場は車でいっぱいだったし。でも、この親切なソンホオッパについて行ったら、今日一日の予定がポシャるのは確実です。

断りたい気持ち満載のわたしたちの顔を無視して、押せ押せドンドンなソンホオッパは、どこの誰だかわからない立派なモニュメントを見せながら、「ここはいくべきだ」みたいなことを言ったり、知らない誰かとのメッセンジャーのやり取りを見せてきたり(韓国語)、もうここらへん、Google翻訳も使ってくれてません。意味不明ど真ん中。

ただわかったのは「今すぐシャワーだけ浴びて10時に待ち合わせね!待ってるから!」と。

それ10分後!

いやいや、わたしたち大浴場にあるサウナにも入りたいんだよ、やだよ、と日本語が通じないことをいいことに、日本語で堂々と断り方の会議(ごめんね、ソンホオッパ)。

 

なかなか断りが通用しなかったので、無理を伝える長めの文章を日本語で書き、まるごとGoogle翻訳様に丸投げし、ことなきを得ました。

ソンホオッパはツッコミどころが満載で、まだまだ書きたいことがあるのですが、これだと“ソンホオッパ日記”になりそうなので、この辺にします。

©清水みさと

さて、このローカルスッカマ自体のインパクトもなかなかのものだったんですが、スッカマを思い出すたびにソンホオッパの顔がドーンと脳内占拠するくらいには、ほぼソンホオッパの思い出に仕上がったわたしたちです。

 

でもわたし、思ったんです。
サウナって、こういうことなんじゃないかって。

 

「サウナは人」だとよく言いますけど、施設の人や来る人によって味付けされたサウナは、やっぱりおもしろい。

今は本当にいいサウナがたくさんあるけれど、ただいいものはいいものであり続けたまま、そのまま記憶の果てへと流れていっちゃう気がします。現に、すっかり忘れちゃってるいいサウナがいっぱい。

このちょっぴり古ぼけた、ソンホオッパに出会ったローカルスッカマを忘れない自信だけはあります。どんなスペシャルなサウナよりも。

©清水みさと

韓国旅のどこを切り取っても、おもしろいが飛び出てきちゃう最高の旅でしたね。そしてこの旅はソンホオッパなしでは語れない!

面白かったなぁ。旅ってやっぱりいいもんだ。

 

ところで、書きながら気づいたんですが、ソンホオッパとの写真が一枚しかありませんでした。

もっと写真撮っておけば良かった(笑)

주심유황참숯가마

【住所】310 Choi-dong, Hanam-si, Gyeonggi-do, 韓国

↓「サウナ交換日記 〜vol.47」はこちらから↓

Top image: © 清水みさと
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。