ハプニングもいい経験、韓国サウナ旅
サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。
ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。
今回は、リョウコさんからみさとさんへ──。
文筆家、イラストレーター。アメリカ在住中に出版したコーヒー本『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』が全米ベストセラーに。世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持つ。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA! 』『ちょっとサウナ行ってきます』。近著に『直訳やめたら英語が一気にできるようになった私の話』。
SNS:@ilovecoffeejp
みさとちゃんへ
韓国サウナ旅、楽しかったですね。わたしたちらしいハプニング多めの珍道中でしたが、ソウル市内の汗蒸幕も、遠出して韓国伝統古代サウナのスッカマも堪能できました。
これでもかというほど食べたいものも食べて、全部こなした大忙しで大満足な旅でした。素晴らしい旅のパートナー、ありがとうございました。
わたしたちの旅は、一筋縄では行きません。
それぞれが“やらかし体質”なので、そんなふたりが集まると、そのやらかし度は倍増。普段から電車を乗り間違える、待ち合わせの日にちを間違えて別の日に行くなどは日常ですが、さらに上のバージョンでは、空港でパスポートが切れていることに気づく、スマホをバイクで奪われるなどなど、数え切れないほどの“やらかし”があります。
交換日記を読んでくださっているみなさんにどんな韓国サ旅だったかより、まず旅で起こった大きなやらかし、そして学んだことを報告しようと思います。みなさんも韓国にサ旅へ行く時の注意点として覚えておいてほしいことばかりです!
① なぜ今?
今や紙の航空券を持たずとも、スマホでチェックイン、搭乗までできてしまう便利な時代です。ところが、わたしたちのスマホは搭乗間際にソフトウェアのアップデートが始まって使い物にならなくなってしまう運命なのです。
みさとちゃんの画面は真っ黒で時間をかけて再起動中、わたしの画面もあと数十秒で真っ暗に……というところで、わたしのスマホで2人分のモバイル搭乗券を見せて、ギリギリセーフ!
ふたりとも真っ黒画面だったら、搭乗券がなくてたぶん飛行機を10分くらいは待たせることになっていたと思います。飛行機に乗るところからハプニング開始です。
学び:文明の利器に頼りすぎず、古典的なバックアップも必要。
② 汗蒸幕、見落とす
韓国と言えば、あのドーム型の「汗蒸幕」。
ソウルに着いて最初に行ったチムジルバン「スパレックス東大門」でお風呂とサウナに入りました。低温のサウナで、体が温まりきらなくて水風呂に入れず、あつ湯で温冷交代浴をしてやり過ごします。
「韓国のサウナってこれくらいなのか……」と、ちょっと残念な気持ちで下駄箱で靴を履いて出ようとすると、「汗蒸幕はこちら」とデカデカと書いてありました。本番はこっちだった!
そう、汗蒸幕は男女別のロッカー室で館内着に着替えて出て、フロントを通って行く、だったんです。次の予定もあるし、もう着替えるのがめんどうだったので泣く泣くノー汗蒸幕。
学び:初めて行く場所は、まず1周下見。
③ 外国でのトイレがないは絶体絶命
今回の旅で一番楽しみにしていたのが韓国伝統の古式サウナ「スッカマ」。
漢字で「炭窯」と書くのですが、フィンランドのスモークサウナと同じで、窯の中に丸太を放り込んで炭になるまで燃やします。真っ赤になった炭を取り出して窯にたっぷり溜まった熱で入るサウナです。
スッカマは都心にはなく、ソウルから1時間半くらいかかる郊外のスッカマへ行きました。日本人で訪れる人はまったくいないらしく、情報はゼロ。名前も読めません。場所しかわからないまま突撃です。
おしゃべりしながらバスに揺られていると、急に口数が少なくなるみさとちゃん。「ううぅ、トイレに行きたいかも」と言い出し、だんだん「ああ、もうダメかも」となってきました。
しかし、わたしたち今一体どこにいるのか、降りたところでトイレがどこにあるのかもわかりません。とりあえず降りるべきバス停までがんばって、そのあたりでトイレを探すことに。地図を見ると朝早くからオープンしているカフェがあったので、みさとちゃんは体をくの字に折りながら一生懸命歩き、カフェに直行!
……カフェ、真っ暗。やってない!
こんな早朝に、しかも田舎で、店も何も開いていない!コンビニを見つけて飛び込むと、みさとちゃんは事前に調べた韓国語「トイレ貸してください!」を言ってみるも、おばさんは残念そうな顔をして「ないのよ〜」のアンサー。
道路を渡ったところにガソリンスタンドのような場所を見つけ、そこがラストチャンスと歩き出しますが、わたしはもうこの時、バックアップの“草むら”を探していました。外国の田舎で、年頃で新婚のタレントさんに草むらでさせるのは……と迷いましたが、絶体絶命のピンチなのでそんなこと言ってられませんから。
ガソリンスタンドのおじさんに顔面蒼白で先ほどの韓国語を言うと「上だよ」という仕草。助かったー!
学び:その国の言葉で「トイレはどこですか」は必ず覚えておく。
④ お金がなくてバスに乗れない
韓国では、日本で言うsuicaのような「T-Money」カードで公共交通機関に乗ります。
事前にチャージは現金のみと聞いていたのでT-Moneyに入れる用のウォンを換金して準備万端。3日間の移動なら十分だろうと見込んで数千円分入れておきました。
2日目のスッカマでほかほかになって気分よく帰りのバスに乗ろうとすると、「おいおい!」と呼び戻され、運転手さんにドアを開けられて、ポイっと降ろされてしまいました。
なんと残額ゼロ。バスに乗れず!
追加でチャージしたのですが、また足りなくなり、わたしの泣けなしの3000円を換金、それをふたりで分け合い1500円分ずつチャージ。
これであと1日移動、そして空港まで……足りるわけはなくて、これ以上現金を持っていないわたしたちはずっと、いつドアからポイっと降ろされるのかドキドキでした。
結局、空港まではクレジットカードで支払いのできる電車に乗ったのでセーフだったのですが、バスに乗る度に「まだお金あったー!やったー!」と顔を見合わせて乗るスリリングな体験をしました。
学び:やはり現金は持っておく。
さて、じつは挙げたのは大きなハプニングだけで、これ以外にもたくさんハプニングはあったのですが、もうみなさんがわたしたちのこと残念に思っちゃうのが怖いのでこの辺でやめておきます。
これだけ見ると、「その旅大丈夫だったの?」って思われるかもしれないですが、やらかしがギリギリセーフで助かったり、逆に好転して、結局ラッキーに出会えた旅となりました。
例えば、トイレを借りに行ったコンビニに帰りに寄ると、おばちゃんが「心配してたのよ、ごめんね、うちにトイレなくて。どこでトイレできたの?」と言ってくれて温かさを感じたり、日本人が来たこともない田舎のスッカマに行ったので、作法もわからず困っていたら地元のおじさんが全部スマホの翻訳機能を使いながらいろんなことを教えてくれたり。最初の汗蒸幕は間違えてスルーしてしまったけれど、代わりに閉店ギリギリにこの旅で一番のおいしい食事ができたり。
わたしは、普段からミスしたり失敗したりしたことをすぐ忘れちゃいます。でも、失敗だらけです。もちろん、覚えていたくないから、っていうのもありますが、基本的にやらかしたあと、落ちたら上がるだけですし、まぁいつだってうまく全部が行くわけないからしょうがないって思っています。
しかも、「万事休す!」の事態でギリギリセーフだったり、人に助けてもらったり、失敗したことで何か他のラッキーに出会えたら、そっちの方がうれしい記憶となって、失敗の記憶を消し去ってくれます。
思い出のすり替えですね(笑)
今回の旅でも失敗進行中は必死ですけど、結局笑い話になったり、そのあとに起こったラッキーに喜んでいたら、本当に楽しいハプニングだらけのいい旅になりました。
ふたりともやらかしが多い分、ラッキーも2倍です。
やらかし話だけで長くなってしまったので、みさとちゃん、ぜひスッカマのお話し、お願いします。みさとちゃんの視点からのあのスッカマ体験、読んでみたいです。よろしくお願いします。
『スパレックス東大門』
【住所】247 Jangchungdan-ro Jung-gu Seoul 韓国
【営業時間】24時間営業(年中無休)
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