サウナが助けてくれた、人生最大の緊張のとき。

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

第11回は、リョウコさんからみさとさんへ──。

岩田リョウコ

文筆家、イラストレーター。アメリカ在住中に出版したコーヒー本『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』が全米ベストセラーに。世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持つ。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA! 』『ちょっとサウナ行ってきます』。
SNS:@ilovecoffeejp

みさとちゃんへ

 

このお返事がみさとちゃんに届く頃には、みさとちゃんはすでに帰国済みで日本でサウナに入りまくっていると思います。1ヶ月間のイギリス語学留学、お疲れさまでした&おかえりなさい! 

英語だけではなくて、たくさんのことを吸収して考えて学んで、またレベルアップしたみさとちゃんに会うのが楽しみです。

しかし、人間って環境に慣れるものですね。みさとちゃんはたぶんこの10年間、ほぼ毎日サウナに行っていたのに、1ヶ月で3回しか行ってなくても、まだ元気に生きている!(笑)ないなら、ないなりになんとかなるっていうこともイギリスが教えてくれたのかも?

 

わたしはと言いますと、日本で穏やかに早寝早起き生活を送っていたところ、衝撃的な出来事が起こりました。衝撃というか、奇跡というか、とにかく筆舌に尽くし難い出来事です。



突然ですが、ここでクエスチョンです。

 

もし、みさとちゃんがずっとずっと大好きな、例えば作家さん、俳優さん、映画監督さんなど、自分の人生に大きな影響をくれた人物に会う機会が来たとしたら、どうしますか?

 

  1. こんな機会はもう2度とやって来ないから、しっかりと長年のファンであること、どんな作品が好きで、どれだけ自分に影響を与えてくれたか、そして感謝を伝える。

 

  1. ファンに興奮して話されるのはいつものことだろうと慮り、話したいことはたくさんあるけれど、ファンであることや自分の思いは特に伝えず、ただ挨拶をして受け身の体制でいる。



さあ、「答え」はどうなりましたでしょうか。

 

お察しの通り、わたしはこのクエスチョンのどちらを取るかを決めなきゃいけなくなったのです。ずっと大好きなバンドのミュージシャンに会うという、大事件が起こりました!

 

まさに前回の交換日記に載せた写真の10代のあの頃。生きた英語に触れて、アメリカ文化のおもしろさを知り、洋楽を聴きはじめて最初に大好きになったバンドでした。

聴こえてくる歌の内容を理解したくて、歌詞カードを目で追いながら、知らない単語は辞書を引き、聞いたことのないフレーズを覚えて自分も使ってみたり、すべての曲を網羅しています。なんなら、それぞれの曲が書かれた背景まで知っています。海外のバンドなので来日した際は、ひとりでコンサートに行っていました。

 

わたしに英語と文化と、そして“エモさ”を教えてくれたバンドです。

 

あれから約20年の時を経て、まさか会う日が来るとは……!会う機会があるとわかった日から、ひとりで興奮したり、想像して泣いてみたり、何を話そうか考えたり、緊張してお腹が痛くなったり。会う前から大緊張の大興奮。 

会う当日、とにかく自分を落ち着けようとサウナに行きました。サウナに頼るくらいしか、あとはありません。

 

向かったのは、「南青山 清水湯」。表参道のど真ん中にある銭湯です。清水湯は銭湯ですが、サウナが強力。「ロッキーサウナ」と名付けられたでっかいサウナストーブは、数分に1度、スポットライトがピカーと当たり、ジュワーっとオートロウリュが噴射します。最高です。

「蒸気でわたしの緊張感を散らしておくれ!」とじっと集中。おかげでロッキーサウナに入っている間だけは、緊張を忘れられました。だいぶ落ち着いた、ありがとう、清水湯!

ハイソでおしゃれな表参道にある銭湯©岩田リョウコ

そして、いよいよその時、来たる。

 

先のクエスチョン、わたしのアンサーは「2」。同じ空間で“神”と同じ空気を共有しているだけで満足でした。

自己紹介をして、握手。他愛のないふつうのやりとりをしました。それでよかったんです。いや、それがよかったんです。

人生の大切な時に聴いたあなたの音楽は、わたしの思い出で、わたしが大切にしていたいこと。それはわたしだけじゃなくて世界中の彼の音楽を聴く人それぞれにある思い出なので、本人に伝えなくてもいいことだと思ったのです。「存在してくれてありがとうございます」と心の中でつぶやきました。



でもひとつ、これだけはどうしても絶対に達成したいと思ったこと。写真です。写真だけは一緒に撮らせてほしい。もやはこれが一番ミーハーなことなのでは?と思いますが、ここは逆にアンサー「1」、この機会を逃したらその写真は2度と撮れない!

腹を決めて、「写真一緒に撮ってもいいですか?」と聞いて、写真を撮りました!あーもう、一生の宝物。家宝。岩田家にずっと受け継いでいきたいと思います。英語が話せてこんなによかったと思ったことないです。

 

その日は、興奮状態だったことと、なんだか現実に起こったこととは思えず、自分を映像で見ているような気分でしたが、翌日、サウナに入っている時に急にバーっと10代からの自分と、彼の音楽とのすべてが思い出され、そんな人に会えたんだとポロポロ泣いてしまいました(笑)

©岩田リョウコ

そんなこんなで、突然わたしは一世一代の経験をしたのでした。人生何が起こるかわからないですね。でも、起こった時にはしっかりそのチャンスをつかんでいけるといいなと思いました。

 

ふたりの1ヶ月分の話、どこのサウナでしましょうか。おしゃべりできるサウナじゃなきゃいけないので、久々にプライベートサウナがいいかな。楽しみにしています。

『南青山 清水湯』

【住所】東京都港区南青山3-12-3
【営業時間】平日:12:00~24:00(最終入場23:30)土日祝:12:00〜23:00(最終入場22:30)毎週金曜日定休
【公式ページ】https://shimizuyu.jp/

↓「サウナ交換日記 〜vol.10」はこちらから↓

Top image: © 岩田リョウコ
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。