もしも、サウナに「おばちゃん」がいなかったら……

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

第18回は、みさとさんからリョウコさんへ──。

清水みさと

俳優、タレント。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」ポスターモデルをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務め、TBS「世界ふしぎ発見!」など多方面で活躍中。近著に『サウナのぷりンセス』。

リョウコさんへ

 

ようこそ、昼の銭湯・サウナへ!

ようこそ、大先輩による“知恵の棲家”へ!

 

サウナや銭湯でのおばちゃんたちの会話って、おばちゃん本人が意図していなくても、ちょっとした人生の知恵が織り混ざっていたりしますよね。

おせんべい「ぽたぽた焼」の裏面の、「おばあちゃんの知恵袋」みたいな感じ。

 

わたしがサウナを好きになったのは、まさにリョウコさんがみた、サウナに棲むおばちゃんたちに出会ったことがきっかけです。

 

裸で話すことではないような、世間的に「悲しい」とか「辛い」とされる類の話を軽妙にペラペラーっとしゃべって、大小さまざまな悪口が飛び交う空中戦もまぁありはするんですが、そうかと思いきやしみじみ人生を振り返り、あっという間に帰っちゃうんですよね。

聞いてる人の相槌もまぁまぁ軽めだし、渓流のごとく右から左に聞き流す特技の持ち主だらけなおばちゃんたち。

こういうのって、女性サウナ特有で、ちょっとした“小宇宙”だなぁといつも思っています。



19歳の大学一年生のわたしにとって、サウナにいるおばちゃんたちの小宇宙はあまりに衝撃的で、力の抜けた軽やかな生き方が、目から鱗でとても魅力的でした。

ものの見方や考え方のレパートリーを増やしてくれたのもおばちゃんたちです。

もしかすると、そういう気のいい人たちに出会えたのは、結構ラッキーだったのかもしれないけれど、おかげで「おばちゃんたちに会いにサウナに行く」ことが、毎日の日課になった大学生でした。

 

家族だと近すぎるし、友だちだと繋がりがあったりするけれど、サウナで出会うおばちゃんたちは、距離感がとにかくちょうどいいんです。お互いの正体が不明なまま喋ってる人ばかり。

そんなちょうどよさが心地よくて、なんでも話せるおばちゃんたちと、悲喜こもごも、いろんなことをおしゃべりしあっていました。

 

世代を超えた「サウナ友だち」というものを知ってしまった大学生のわたしは、毎日授業が終わると直帰して、その足で地元のジムサウナまでひとっ飛び。

おばちゃんたちがいたから、わたしはサウナを好きになりました。おばちゃんなくして、サウナ好きのわたしはいない、はず。

 

みんな、元気にしてるかなぁ。

連絡先を交換していなかったことだけが心残りです。

ホーム「駒の湯」の番台を一瞬だけ©清水みさと

最近サウナで出会ったのは、エステサロンで働く韓国人のおばちゃんで、旦那さんとふたり、日本に住んで20年以上。親父ギャグをかますくらい、日本語がペラペラ!

わたし、知らなかったのですがその昔、韓国では同姓同本、つまり、名字と出身地が同じだと結婚することができなかったんですって。

 

で、このおばちゃんが20歳の頃、当時恋人だった旦那さんと同姓同本で籍を入れることができず、両親からも大反対され、別れざるを得なかったそうですが……

「反対されればされるほど、どんなことも燃え上がるもんなのよ」。

かっこいい……!

 

それで、いつか法律が変わることを信じて内緒で付き合い続け、旦那さんと2人で日本へ行き、語学学校に通って必死に勉強して働いて、ちょうど10年がたち、法が改正されてようやく結婚することができたんだそうです。

 

結婚することがこんなに壮絶だなんて。しかも大昔の話じゃなくて、20数年前なんてここ最近のはなし。もしも、わたしがおばちゃんの立場だったら、そんな忍耐と強さと勇気をもてるかな……。

 

そんなドラマのような壮大な話だって、サウナの中。


水風呂に行ってサウナに戻ってきたおばちゃん。開口一番に「顔に糸を入れるおすすめの病院が韓国にあってね!」と、言ってました。

話のぶっ飛び方!余韻なし!

 

そんなおばちゃんたちや、知らない誰かと過ごすサウナが大好きです。

そしてわたしは今日も新しいジムサウナでおばちゃんたちに会い、1時間歩いて「上島珈琲店」につき、この交換日記を書いています。すると、今ちょうど、目の前を知った人がスーッと通り過ぎました。

 

リョウコさん!!!!

 

サウナで偶然はあるけれど、ついに上島珈琲でも偶然しちゃうようになっちゃった(笑)

©清水みさと

縁がありますよね、わたしたち(笑)

サウナが繋いでくれた縁は、いつのまにかサウナを超えて、婚姻届の証人にまでなってくれたリョウコさんです。不思議なもんだ〜。

 

どんなに縁があろうとも、次は一応連絡しますね(笑)

では!

↓「サウナ交換日記 〜vol.17」はこちらから↓

Top image: © 清水みさと
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。