「ニホンオオカミ、最後の一頭を捕獲」というニュースの「真相」とは?
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
「ニホンオオカミ」の最後の一頭が捕獲されたといわれる日
古くから家畜を襲う害獣として疎ましがられ、『赤ずきん』や『三匹の子豚』をはじめとする童話の世界では悪役として描かれ、そして、その鋭い牙をむき出したときの悪魔的な形相から、洋の東西を問わず恐怖の対象とされる「オオカミ」。
一方で、その凛とした佇まいや優雅ささえ漂わせる所作、「群れることを嫌い、自らの意思を第一義に判断、行動する人」を“一匹狼”と呼ぶなど、オオカミは不思議な魅力に溢れた生き物です。
今から118年前(1905年)の今日1月23日は「ニホンオオカミ」の最後の一頭が捕獲されたといわれる日です。
「ロンドン動物学会」と「ロンドン自然史博物館」のバックアップのもと、アメリカ人研究者のマルコム・アンダーソン氏は、日本に学術調査に訪れていました。場所は奈良県吉野郡。清流として知られる吉野川が流れる、自然豊かな山村です。
ある朝、地元の猟師がアンダーソン氏の宿を訪ねてきました。手には、大型動物の遺骸を携えています。
「ニホンオオカミを獲った。10円で買ってほしい」。
交渉の末、8円50銭で取り引きは成立します。明治中盤と今の物価をもとに換算すると、その価格、現代の価値にして35000円前後。
米国研究者の案内役として帯同していた金井清氏は、後にこう記しています。
これが、日本で捕獲された最後のニホンオオカミになろうとは、当時、想像も及ばないことである。<中略>腹がやや青味を帯びて腐敗しかけているところから見て、数日前に捕れたものらしい。
引用:東吉野村とニホンオオカミ
......そう、一般的に知られている「ニホンオオカミの最後の一頭が捕獲された日」は、正しくは「ニホンオオカミの最後の一頭とされる遺骸が35000円で売買された日」なのです。
現在も、日本各地でニホンオオカミの目撃情報は後を絶ちません。
「ニホンオオカミの生存、繁殖を確認!」──。
いつか、そんなトピックを紹介できる日がくるかもしれません。どうぞ、お楽しみに。