ボクらはまだ、「タルタルソース」について1mmも知らない。
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
タルタルソースの日
チキン南蛮にエビフライ、カキフライといった魚系フライに添えられるタルタルソース。おいしいですよね。あれだけでゴハンいけちゃうって人も少なくないでしょう。
今日、アメリカでは「タルタルソースデー」だそうで、キリスト教の四旬節(断食期間)の前に、旬のシーフードをたっぷりのタルタルソースでおいしくいただこう!というお祝いの日なんだそう。
さて、このソースには定義がありまして。
一般的にはマヨネーズにみじん切りの玉ねぎ、ピクルス、ケッパー、パセリ、チャイブ、きゅうり、そこに細かく砕いたゆで卵を混ぜ合わせたもの。日本農林規格においては「半個体状ドレッシング」に分類されています。
ここまではご存知の方も多いでしょう。
では、タルタルの語源は? なに料理? 発祥はどこの国? 意外と知らないタルタルソースについて、詳しくご紹介していきましょう。
タルタルの“ルーツ”は生肉だった
フランス料理に「タルタルステーキ」というのがあります。これ、私たちの知るあのソースとは似ても似つかない生肉をたたきにした、いわばユッケのような料理。
ヨーロッパを旅行していてメニューにある「Tartar Steak」をオーダー。焼き加減を尋ねられずに待っていたら、あらビックリ。生肉が出てきた!なんて経験をされた方もいるかもしれませんね(はい、自分です)
そもそもタルタル「Tartare」とは、中央アジアやモンゴルの遊牧民タタール族が牛や馬の生肉を香味野菜とともにたたいたものを食していた料理が、西ヨーロッパに伝わったと言われています。
その過程のどこかで、タタールがギリシャ神話の「タルタロス」に似たイントネーションだということから、いつしか「タルタル」へと変容していったと考えられているんだとか。
タルタルソース誕生の背景に
“現代フランス料理の父”あり
そんなこんなでフランスまでやってきたタルタルステーキでしたが、ここから私たちが知るところのあのソースは、いかにして生まれたのでしょう?
タルタルソース誕生の背景に、現代フランス料理の基盤をつくったとされる偉大なシェフの存在がありました。
巨匠ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエ。
伝統的なフランス料理の大衆化と革新に貢献し、独創的なレシピや料理技法を考案してきたエスコフィエが1903年に上梓し、現在でも料理人のバイブルと称される『Le guide culinaire(ル・ギード・キュリネール)』のなかに、「ソース・タルタル」と名付けられたレシピが。
マヨネーズ、マスタード、ピクルス、ケッパー、香味野菜をベースとするところからも、現代のタルタルに限りなく近いそれがエスコフィエによってつくられていたことがわかります。
そこからさらに派生し、刻んだ卵やレモン汁が加えられたレシピがのちに登場。王道のタルタルソースとなっていったものと推測されます。
ちなみに1920年代にはすでに欧米では市販され、日本に入ってきたのは1960年代中頃のようですよ。
といったわけで、本日はタルタルソースについてのお話でした。