先住民マオリの伝統、新たな「国民の祝日」となる
2022年6月24日、つまりは今日。ニュージーランドに新たな国民の祝日が生まれた。
「Matariki(マタリキ)」
それは、先住民マオリにとって新年の始まりを祝う特別な行事。そもそもマタリキとは、マオリの言葉で「プレアデス星団」を意味する。
真冬のニュージーランドの早朝の空にマタリキの輝きが戻ってくるこの時期に、お祝いをしながら過ぎた一年を振り返り、新たな誓いを立てるんだそう。
遠く離れた南の国に祝日がひとつ生まれただけ。たしかにそうかもしれない。
が、先住民や少数民族の記念日を「国民の祝日」と定めたケースは、世界的にみても極めてレアだということをまずは知る必要がある。
マオリの住む島に19世紀初頭にやってきたイギリス系移民、以来アフリカやスリランカをはじめさまざまな地域から移住者を受け入れ、今日の多民族・多文化国家をつくりあげてきたのがニュージーランド。
2020年10月の国政選挙を経て、ジャシンダ・アーダーン首相率いる労働党が過半数の議席を獲得し、「史上もっとも多様な議会」と世界に称されたように、人種、肌の色、性差、性的指向、世代、そうした“違い”を受け入れることで、多様に満ちた社会を実現してきた。
それを思えば、マタリキを国民みなで祝い共有するという決断が、世界に与えるインパクトは決して少なくないはずだ。
ダイバーシティのもう一歩先へ。個々の違いを受け入れ、認め合い、互いにそれを活かしていく。インクルーシブ社会をリードするニュージーランドにこれからも注目したい——。
動画はマタリキの祝日制定を記念し、マオリのルーツを持つグラミー賞受賞アーティストであり、マオリの伝統楽器タオンガ・プオロの奏者でもあるジェローム・カヴァナが記念楽曲を制作した『マタリキの風(Ngā taritari o Matariki)』。
自然とともに生きる民にならい、しばしニュージーランドの風を感じてほしい。