がん腫瘍を治す術は、まさかの「腫瘍の中」にあった。

「がん」といえば、日本人がもっとも恐れる病気の一つだ。

ここ40年、日本人の死因の1位には常に「がん(悪性新生物)」が並んでいる。それほど身近かつ厄介なこの病気に、頭を悩まされてきた人は少なくないだろう。

しかしこのたび、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の研究チームが、そんながん腫瘍をやっつけてくれる「最強の細菌」を発見したらしい。

その細菌は……なんと“がん腫瘍そのもの”の中に隠されていたのだ。

がん腫瘍の組織の中に細菌が存在していることは古くから知られていたものの、腫瘍から細菌を取り出し、それを癌の治療薬として活用する研究はこれまで報告されてこなかった。

そんななか研究チームらは、実験用マウスの腫瘍組織から、強い抗腫瘍作用のある3種の細菌を取り出すことに成功。

そのうち1つは、2つの細菌が合体し協力して作用する“複合細菌”であることから、「AUN(阿吽)」と命名された。

実験では、マウスに「AUN」を一回投与しただけにもかかわらず、免疫細胞が活性化し、がん腫瘍がわずか数日で完全に消失。治療後の再発もなく、予後良好だったといい、大腸がんや転移性の肺がん、乳腺がんといったさまざまながんに対して強い効き目を表してくれるそうだ。

さらに、数々の適合検査の結果、細菌の生体への影響は極めて低いということも判明した。既存の抗がん剤には強い副作用などの課題が残るなか、この事実には期待が高まるところだ。

また今回発見された細菌は、複雑な工程を踏まなくとも安価で大量に増殖させることができるため、抗がん剤の高額なコスト問題の解決策となる可能性もあるだろう。

細菌によるがん治療は今、過渡期を迎えつつある。現在は国内の製薬会社と安全性を確認する共同研究を行っており、他の動物による実験を進めたのちに実用化につなげる予定とのことだ。

Top image: © iStock.com/Marcin Klapczynski
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