『スタンド・バイ・ミー』が教えてくれた、12歳の純粋な世界
サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。
ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。
今回は、みさとさんからリョウコさんへ──。
俳優、タレント。サウナ好きが高じて、「サウナイキタイ」ポスターモデルをはじめ、ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務め、TBS「世界ふしぎ発見!」など多方面で活躍中。近著に『サウナのぷりンセス』。
リョウコさんへ
先週、春が来たなと思っていたら、今日は真冬です。
渋谷のカワヅザクラも、早すぎた“一瞬の春”で満開になっていました。だけど今は冬に逆戻りで、熱心に桜を見る人も少ないし、桜もちょっぴり気の毒です。あんなに暖かかったら桜だって、咲きたくなっちゃうよと、桜の気持ちを代弁したくなりました。
人間であるわたしの方は、天気予報をチェックしているのに、洋服選びに失敗し続けています。なんでだろう。薄すぎるか厚すぎるかで、いまだに最適解を見つけられず、天気に踊らされています。ちょうどいい具合って、難しいですよね。しすぎるのは簡単なのに。
大好きな春が、柔らかな春が待ち遠しいです。
さて、村上春樹さんの寄稿には本当に感銘を受けました。直後、リョウコさんとこの寄稿に対して同じ思いだったことを知り、わたしもとても嬉しかったです。大人になってから、深いところで分かり合える友人に出会えるってしあわせなことだと、つくづく思います。
この間、ニューヨークへのフライト中、大学生以来となる『スタンド・バイ・ミー』を観ました。大学は映画学科だったので、映画を観るというしあわせな授業があったんです。
当時、映画館の3倍ほどの大ホールのスクリーンで観た『スタンド・バイ・ミー』は、線路のインパクトが強烈で、どこまでも続く線路が、目的地の見えない線路が、自由でもあり怖くもあり、彼らの童心の傷みや純粋さに胸が痛くなったのを覚えています。
あんなに感動したのに、すっかり忘れてしまって初見のような気持ちで観ることになったわけですが、大人になって飛行機で観た青春群像劇は、手のひらサイズの小さな画面だったけど、学生の頃よりもさらに心が揺さぶられて、まるで違う映画のようでした。
「あの12歳だったときのような友だちは、もう二度とできない」というセリフが、いまも頭の中でぐるぐると回っています。
学生生活が終わり、趣味趣向、価値観や考え方、どこかが同じである人たちと出会うようになりました。自分で選べるからです。大人になって良かったと思うことの一つが、こうして自分の選択で豊かな世界を作れることでした。
でも、世界のすべてだった小さな教室の中は、気が合わなくても、好みや考えが違ってもみんな一緒くたで、そのチグハグで出会った友人は、セトモノ同士でも、喧嘩しても、きっと深いところでは違い合うことを、子どもながらに自然と認め合っていたんだと思いました。
あんなに一緒にいた彼らは、大人になるにつれてバラバラになっていきます。みんな、実はチグハグだったんです。12歳の純粋さが成し得た共鳴による彼らの友情は、大人には真似ができない、眩しく美しいものでした。
大人になって、好きな人、分かり合える人たちと一緒にいられるようになったけど、彼らのような12歳の危うい友人と旅ができないと思うと、少し寂しくもあります。
でも、こうして年齢も職業も違うソウルメイトに出会えて、わたしは本当に幸せものだと思いました。
ところで、本も映画もどんなに感動しても見事に忘れてしまいます。その分、何度も新しい気持ちで感動ができるからお得なんですけどね。
『スタンド・バイ・ミー』を皮切りに、昔観た映画をあたかも初見のように観返すことに最近ハマっています。一昨日は『パルプ・フィクション』を観て、ずば抜けたセンスとカッコよさに脱帽し、1回目もそうだったことを思い出しました。
追伸
先日、三軒茶屋「駒の湯」へいきました。大学生の頃から通っているホームサウナですが、最近すこしご無沙汰していました。行くことを事前に伝えたら、おじちゃんとおばちゃんが大喜びして、待ち構えていてくれました。
こんなに歳の離れたソウルメイトが、ここにも。
大人っていいもんです。
大好きな人がいる大好きな場所には、通える限りとことん通い続けようと思います。
では。