エマ・ワトソンが教えてくれた『美女と野獣』に見るジェンダーイシュー
小さい頃から大好きだった『美女と野獣』。実写版を見に行ったけれど、映像や音楽がとにかく綺麗で、2時間があっという間に過ぎていった。先日の「2017 MTV Movie & TV Awards」では、主演のエマ・ワトソンが俳優賞を獲得。
そこで彼女が行ったスピーチがジェンダーイシューの問題を提起する形になっていて、海外メディアが注目した。この機会に、『美女と野獣』を社会的な観点で見てみたい。
性別を分けない初の俳優賞
「受賞理由はベルの人間性」
受賞の発表を受け、感極まった表情でステージに立ったワトソンは、「はじめに、この賞について何か話さなければいけない気がします」と切り出した。
「性別に関係なく演技の賞を与えるMTVの動きは、皆さんにそれぞれ違う意味をもたらすことでしょう。私にとって演じることは、誰かになり切ることを意味しているのです。そしてこれは、2つのカテゴリーに分けられる必要がないことで、私にとっては凄く意味があります」
「でもさらに言うと、この賞を与えられた理由には、ベルという人間性と彼女が象徴するものにあると思います。このストーリーの中に出てくる村人たちは、世界はチャンスが少なくて狭いものだと彼女に思わせようとしていました。知識を得たいという彼女の好奇心や情熱は、村で疎外感を感じる理由になっていたのです」
「そんなことには耳を傾けないキャラクターを演じることが、私は大好きでした。ダイバーシティや知識、多様性の受け入れ、喜び、そして愛を世に知らせる、このような映画に関われたことを誇りに思います」
ワトソンのスピーチに会場からは歓声が上がった。世界に向けて発信できるこの場で、与えられた賞の特徴について語り始めるところが、フェミニズムを推進している彼女らしい気がする。演技の能力は性別で分ける必要がないと話したことで、この新しい動きを大衆に受け入れてもらおうとする彼女なりの配慮、そして男女を平等な目で見るにはどうゆう心構えがいいのかという、訴えが垣間見えた気がする。
村人たちとの間にある考え方の違いや、それがきっかけで嫌な思いをさせられても負けないベルの強さや美しさは、ワトソンにも似通ったものがあり、まさに適役だったのではないか。
『美女と野獣』は問題作!?
国によって受け止め方は様々
実はこの映画、上映開始当時からあることについて海外でずっと注目を集めてきた。それはセクシュアル・マイノリティに対すること。自信家で闘争心に溢れ、ベルを追いかけ続けるガストンの子分ル・フウは、ディズニー映画で初めてのゲイキャラクターとして、海外のメディアに報じられ話題となった。
ビル・コンドン監督は以前、英紙「Attitude」のインタビューで
「ル・フウはある日はガストンのようになりたいと思っているし、またある日はキスしたいと思っている」
「彼は自分自身が何を欲しているか混乱しているんだ。異性に気があるということをまさに気づき始めた人なんだよ」
と、明るく見えて実は複雑なキャラクラーの心情を明かした。このような設定があることに対し、ロシアやマレーシアなどのように、年齢制限を設けたり、一部シーンカットの要求に伴い公開を延期したりする国もあった。文化や宗教、思想が違う国では「問題」として受け止められたのだ。
他にもオリジナルにはないシーンがいくつか追加され、ストーリーにより深みが増した実写版『美女と野獣』。大人の視点で観れば、子どもの時に見たようなただのフェアリーテイルではない、国際的な社会問題を深掘りする見方ができるのだと、エマ・ワトソンが率先して教えてくれた気がする。