熱風の中で「名曲」を聴いて考えた未来

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

今回は、リョウコさんからみさとさんへ──。

岩田リョウコ

文筆家、イラストレーター。アメリカ在住中に出版したコーヒー本『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』が全米ベストセラーに。世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持つ。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA! 』『ちょっとサウナ行ってきます』。近著に『直訳やめたら英語が一気にできるようになった私の話』。
SNS:@ilovecoffeejp

みさとちゃんへ

 

暖かくなったり、寒くなったり、桜もわたしたちも「春なの?まだなの?どっちなの?」って、混乱してしまうような日が続いていますね。お元気でしょうか?

ふんわりとした日差しで、ずっと外にいたくなるような日が来るまでもう少しかな。四季っていいですね。サウナも季節によってその感じ方が変わります。春は外気浴はやわらかくて気持ちがいいし、夏は水風呂でキリッと、秋は少しひんやりする風が哀愁があるし、冬は熱のありがたさを感じます。

©岩田リョウコ

わたしは雨の日のサウナも好きです。移動は億劫になりますが、でも雨の日はサウナに行くことが多いです。

昨日は大雨のなか、蒲田の「COCOFURO たかの湯」へ行ってきました。2022年にリニューアルした時、みさとちゃんが「激熱のサウナだよ!」って言ってた意味を今さらですが身をもって知りました。わたしの体験レポート、させてください。

©岩田リョウコ

わたしは普段、サウナ室では常に迷うことなく最上段へ駆け上がるのですが、ここの名物「熱風オートロウリュ」が始まると、2秒で脱落。大急ぎで一番下段に座っている人たちに隙間を空けてもらって座らせてもらいました。ザ・灼熱!

しかも、体を折りたたんで縮こまってないと四方八方から熱風にやられます。もしかしたら、韓国で入った180度のスッカマと同じくらいの熱さなんじゃないかな(笑)?耳、首、肩、背中、全部守るにはわたしのタオルは小さすぎました。

韓国ではこうしてタオルで全身守って入ってた人がいました©岩田リョウコ

こうして爆風マシンがオートロウリュとともに熱風を送るわけですが、送ってくるのはそれだけじゃありません。ライブハウス並みの音量で日替わりのセットリストが組まれた音楽が流れるのです。

その名も「ミュージックロウリュ」。街の銭湯とは思えない!

 

昨日はエアロスミスの日でした。下段で体をくの字にしながら『Walk This Way』をこそっと一緒に口ずさむという、なんとも言えない異空間。静かで落ち着いたサウナもいいけど、好きな音楽を爆音でアチアチ言いながら裸で聴けるなんて。サウナって本当にいろんな形があって楽しいなと、土砂降りのなかルンルンな気持ちで帰路につきました。

 

ちなみに、“爆風”という嵐が去ったあと、静かになったサウナ室でみさとちゃんが大人になってもう一度『スタンド・バイ・ミー』を見た感想について考えていました。その日、サウナ室で流れたエアロスミスの『Dream On』はわたしが大好きな曲のひとつです。

これ、1973年の曲なんです。しかもデビューアルバム。どしょっぱつからこの名曲を生み出したエアロスミスってとんでもないな!とサウナ室で感慨深くなる2024年のわたし。

そして、ニューヨークへの一人旅の道中に1986年の映画『スタンド・バイ・ミー』を改めて観て思いを馳せた2023年のみさとちゃん。いい芸術は、こうやって時代も年代も年齢も超えてずっと心に響いてくるし、豊かな感情を持たせてくれるものなんだとしみじみ感じました。

Aerosmith / YouTube

AIが登場して、映像も音楽も小説もたった数分で作ってしまう時代になってきました。この先、芸術やクリエイティビティの形が変わっていって、30年後、40年後に残るものは、今わたしたちが昔の作品に感じるような感慨深い“想い”ができないんじゃないかって、ちょっと未来の人たちのことが心配になります。

とは言え、それはもしかしたらどの時代も同じかもしれません。例えば手で縫って作った服を着ていたのが、今は機械で大量に作られた服を着ているわけですから、昔の人からすると想いの込められてない無機質な服を着ているなって感じるかもしれないですよね。

未来ではAIが作った芸術が機械で作られた服を着るのと同じくらい普通なことになっているのかな。その時代の人たちの心に響くのってどんなものになっているのか、おばあちゃんになった時、ぜひ語らいましょう。その未来の連絡方法も想像つかないような形になっているのかな……。

 

では、またみさとちゃんの近況、楽しみにしています。

COCOFURO たかの湯

【住所】東京都大田区仲六郷2-27-12
【営業時間】6:00〜24:00
【公式サイト】https://cocofuro.com/takanoyu/

Top image: © 岩田リョウコ
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。