村上春樹さんの寄稿「小澤征爾さんを失って」を読んで思ったこと

サウナ大好き作家・岩田リョウコさんと、サウナをこよなく愛する女優・清水みさとさん。

ふたりがどのようにサウナを日常に取り入れ、どんなサ活を楽しんでいるのか。気になりますよね? そこで、ふたりのサウナな日々を「交換日記」に綴ってもらいました。

今回は、リョウコさんからみさとさんへ──。

岩田リョウコ

文筆家、イラストレーター。アメリカ在住中に出版したコーヒー本『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』が全米ベストセラーに。世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でサウナ・スパ健康アドバイザーの資格を持つ。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA! 』『ちょっとサウナ行ってきます』。近著に『直訳やめたら英語が一気にできるようになった私の話』。
SNS:@ilovecoffeejp

みさとちゃんへ

 

お返事ありがとうございます。これまで、こんなふうに自分という人間の評価を真正面から書いてもらったことがなかったので、なんだかうれしい気持ちと恥ずかしい気持ちになりました。ありがとう!

 

つい先日、村上春樹さんの寄稿文『小澤征爾さんを失って』を読んで、小澤征爾さんも空の上でうれしい気持ちと恥ずかしい気持ちになったのかな、と考えていました。「世界の村上春樹」をつかまえて、こんなことを言ったら当たり前だろう、って言われるかもしれませんが、本当に圧巻の素晴らしい文章でした。村上春樹さんの言葉を通して小澤征爾さんの豪快でかわいらしい人柄に触れられたような感覚でした。

 

感動しつつも、こんなふうにわたしは誰かのことを書ける日が来るのだろうか、と自分の“書く”という仕事をもう一度見直さなきゃって思うきっかけにもなりました。

 

この寄稿文を習字のお手本みたいに置いておこうと思ってコピーしておきました。そのあと、これはみさとちゃんにもシェアしなきゃ!と思い、すぐに連絡すると、「今朝読んで感動していたところ!読み直せるようにスクショ撮った」との返事。わたしとまったく同じ行動をしていたことを知って思いました。年齢もひと回り違うし、経験してきたことも違うのに、この人と深い部分でつながっている理由はこれなんだなって。



子どもの時は、たまたま近くに住んでいて、同じ年に生まれたという理由で、同じクラスに放り込まれたクラスメートたちがわたしたち子どもの人間関係でした。子どもの時にそれをしたからこそ、この社会で生きていく社会性というものを学べるというわけですが、この訓練を6歳からやってるってすごいことだって改めて思いました。

それって大人で仮定するなら、ある電車に乗って、「この同じ車両のみなさんが、これから1年間あなたのクラスメートです」って言われるようなもんです。深くつながれる友だちをそこから見つけ出すのはまぁまぁむずかしいですよね。

大人になって出会う友だちは子どもの時とは違って、歳も育ってきた場所も環境も仕事も違いますが、どこか深いところでずっとつながっていられる友だちが、わたしには何人かいます(もちろん、みさとちゃんもその一人です)。

 

コロナでなんとなく会う機会を逃していた昔から仲がいい友人たちと、今年は年始から会う機会が続いています。

お正月、東京に来た友人とは23年前、初めて留学した時に出会いました。わたしが住んでいたアメリカにも、自分の子どもを連れて会いに来てくれたこともあります。23年経ってもずっと会うのが楽しみな友人です。これはさっきの電車の説でいうと、偶然同じ時期に同じ大学にたまたま日本から留学した人の中で、一生の友だちを見つけられた成功例だと思っています。

©岩田リョウコ

そしてもう一人。こちらも2006年あたりに知り合っているので、もう18年くらいですね。その友人がある日の朝、「今日、今から空いてる?千葉のサウナ行かない?」と誘ってくれました。(大人が平日の朝の突然の連絡で1日遊べるっていうのも、ちょっとおかしな話ですけど……)。それで久しぶりに千葉・館山にある「Sea Sauna Shack」へ行ってきました。

©岩田リョウコ

彼はわたしより少し年下で、わたしの家に居候していた時期もあるくらい、当時から波長の合う友人です。行き帰りの道中、そしてサウナの中で、お互いの仕事や家族の話をしていると、いいおっさん、おばさんになったなぁとしみじみ思いました。

居候していた若い学生から会社役員のおじさんになった友人は、「あの時お世話になったんだから」と、もうかれこれ10年くらいそう言いながらいつもごはんをおごってくれます。

最近サウナが好きになり、こうしてたまに一緒にサウナに行くようになりました。サウナ上がりに「あまみ、出てる!見て!」とうれしそうに見せてくるけれど、なにせその肌の色です、あまみ、ぜんぜん見えません(笑)。

※あまみ=血流が良くなって、肌にまだらの模様が浮かび上がること

©岩田リョウコ

以前、「心地がいいのは心が同じ方向を向いている人」という話を日記で書きましたが、こうやって何年経ってもずっとつながっていて、お互い気兼ねなく連絡して会って仕事や家族の話ができる友人がいてしあわせだなと思います。

 

今回、村上春樹さんの寄稿文を読んで、昔からの友人たちのこと、そして寄稿文のコピーを同じように取っていたみさとちゃんのことを考えてみると、これ、単純なことなんですけど、恋愛ドラマの相関図みたいに“ハートの矢印”がしっかりお互いに向いているからなんですよね。

わたしもいつか、知らない人が読んでもわたしの矢印が向いている友人たちのことが好きになってしまうような、そんな文章が書けるように日々書き続けていきたいなと思います。

 

P.S. 次回は旦那さん用、みさとちゃん用と分けてキンパ作って持っていきます!

Sea Sauna Shack

【住所】千葉県館山市波左間1063-2
【公式サイト】http://sea-sauna-shack.com/

Top image: © 岩田リョウコ
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。