世界を虜にする“黄色い”ドラァグクィーン

文字通り“黄色い歓声”が台湾を包んでいる。

ドラァグ・クィーンのスーパースターを決定するアメリカの人気リアリティ番組『RuPaul's Drag Race(ルポールのドラァグレース)Season 16』で、東アジア人として初めての勝者が誕生した。

15年続く番組の「アジアの呪い」を見事解いたのは、Nymphia Wind。ロサンゼルス生まれ台湾育ちの28歳だ。

© 66wind99/Instagram

黄色は私そのもの。アジアが誇るドラァグクィーン

ルポールのドラァグレースでは、「カリスマ性・度胸・個性・才能」を基準に勝者を決めるが、Nymphiaの魅力はそれだけでは測れない。自分のバックグラウンドに対する誇りもクィーンの称号にふさわしい。

お寺、中華戯曲、更にはタピオカティー等、Nymphiaのパフォーマンスのほとんどは台湾・アジア文化から着想を得たものだ。

イメージカラーである黄色は、Nymphiaにとってアジア人である自分自身を象徴するもの。自身を「Banana Budhist(バナナのブッダ)」、ファンを「Banana Believer(バナナ信者)」と呼んでいる。

「ドラァグを通じて、自分のアジア人としてのアイデンティティに感謝することを学んだのです。」

ドラァグ業界においてアジア人にスポットライトが当たることは非常に稀。

だからこそNymphiaはパフォーマンスを通じて、自身のアイデンティティをで全力で表現する。「私はここにいる」とでも言わんばかりの力強く美しい姿に、多くのアジア人やマイノリティたちが心を掴まれるのだ。

「アジア、台湾、これはあなたに捧げる!」

Nymphiaが表彰台で放った言葉。優勝が発表されるやいなや、祖国台湾は一気に祝福ムードに。

ドラァグカルチャーの中心地である西門紅楼はバナナを持ってお祝いする人で溢れかえり、サブカルチャーをあまり扱わない地元メディアすらもスターの誕生を大々的に報道。台湾総統の蔡英文もInstagramでお祝いメッセージを発表するなど、大変な盛り上がりを見せた。

祖国への愛を声高に語るNymphiaの勝利は、台湾の人々にとって自国文化が評価されたに等しく、彼女の活躍が自らのアイデンティティを誇らせてくれるのだろう。

アジア・台湾を背負い、世界のステージに立つ“黄色いクィーン”。そのパフォーマンスは何よりも強く、自分でいることの美しさを教えてくれる。

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Top image: © Santiago Felipe/Getty Images for MTV
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