深刻化する男性の孤独。解決するのはセラピーよりも“見知らぬ人”?
2017年、アメリカの心理学の年次大会で、ある学者が「世界中で『孤独伝染病』が蔓延している」と警鐘を鳴らしたことが話題となった。
あれから数年たった今、その病に最も苦しめられているのは男性たちかもしれない。
アメリカで行われた調査によると「親しい友達がいない」と答えた男性の割合は1990年には3%であったのに対し、2021年は15%まで増加。また、男性の心理状態を調べた別の調査「State of Amrican Man 2023」では、調査対象となった18歳から23歳の男性の3分の2が、「自分のことを本当に知っている人はいない」と回答している。
浮き彫りになりつつある男性の孤独。一方で、緩和に向けた動きも盛んになってきているようだ。
号泣する者続出
「男性のため」のサポート集団
アメリカで立ち上がった「EVRYMAN」は、男性のための男性によるサポートグループ。
“自分を男性と認識する人”であれば誰でも参加が可能で、過去や将来、人に言えない悩みまで、男性が自分の気持ちを正直に話す場所を提供している。
少人数の男性グループからスタートしたこの団体は、現在は全米規模のコミュニティへと成長。対面セッション、週末のリトリート、自身の感情やリーダーシップをテーマにした、数カ月にわたるプログラムを各地で開催している。
参加者同士のほとんどは初対面だが、セッション前には瞑想やチェックインが行われ、安心して話せるセーフ・スペースが保障されているという。
悩みを打ち明けるのは
セラピスト<見知らぬ人
EVRYMANの参加者の中には、ワークショップではじめて自分の悩みを吐露し号泣してしまう人も少なくないらしい。
セラピストではなく、見ず知らずの人に本音を打ち明けるの?と思う方もいるかもしれない。でも、他の男性が自分をさらけ出す姿を見るだけでも学ぶことがあるようで、感情表現のスキルを得られるという利点もあるとのだとか。
またある調査によれば、男性は女性よりもサポートグループの方が相談をしやすい傾向がある、ということも分かっている。
英国やヨーロッパで展開する「Andy’s Mens Club」、「MenSpeak Men's Groups CIC」など同様のグループはアメリカ国外でも拡大しており、こうした「男性のための相談所」は世界的に注目を集めていると言える。
性別に関係なく
「寂しい」と伝えられるように
ちなみに、EVRY MANでは無理に重いことを話す必要はなく、日常の中でおきた嬉しいことや、達成感を感じたことを共有するだけでも良いという。
大切なのは、誰かと共有すること。一人だと感じないことだ。
「男は弱い部分を見せてはいけない」「ストイックであるべきだ」といった伝統的な男性像から、助けを求めにくいと感じる男性は多い。しかし、65歳以下の孤独は、肥満よりも死に与える影響が大きいことは、MITやカリフォルニア大学等、数々の研究からも明らかだ。
誰かに「寂しい」と伝えたり、自分の弱みを見せたりすることは、決して恥ずかしいことではなく、自分の健康を守るための大切な行動。
「孤独に感じている」「話を聴いてほしい」……EVRY MANのようなサポートグループの活動は、男性に限らず、こうした言葉を“誰にとっても言いやすいもの”にするための一歩となるだろう。