「中絶規制」が映し出す、心のジェンダーギャップ

スマートフォンを開けば、世界中のニュースが飛び込んでくる時代。私たちは日々、膨大な情報に晒されながら生きている。そんななか、見過ごされがちなのが声なき声の存在だ。

遠く離れたアメリカの地で起こっている、ある社会問題。それは、私たちの心にも深く突き刺さる、“選択すること”の重さについて問いかけている。

中絶規制が若年層女性に与える心の負担

2022年6月、アメリカで「ロー対ウェイド事件」(妊娠中絶を憲法上の権利として認めていた判決)が覆され、中絶の是非を巡る議論が再燃した。

中絶が違法となった州では、女性たちの間に不安や抑うつ症状が広がっているという。米の世帯意識調査「Household Pulse Survey」によると、中絶が違法となった州に住む出産可能年齢の女性は、そうでない州に住む女性と比べて、不安症状の増加が顕著に見られたという結果が出ている。この調査は、全50州とコロンビア特別区に住む成人12万6834人を対象に、2022年1月から9月にかけて実施されたものだ。

心の声、データが語る現実

Wisconsin-Madison大学のJ. Michael Collins博士は、「中絶政策に対する人々の感情がいかに強いかがわかる」とコメント。中絶問題は、単なる政治的な問題ではなく、個人の人生観や価値観に深く関わる問題であるため、政策の変化が人々の心に大きな影響を与えることは想像に難くない。

さらに、ユタ大学のVivekananda Das博士は、中絶が違法となった州の若い女性と男性の反応の違いに着目。「同じ州に住む若い男性との対比は、こうした政策に対する反応に顕著な性差があることを浮き彫りにしている」と指摘している。

選択と責任
「自分ごと」の先にあるもの

日本で暮らす私たちにとって、アメリカの出来事は対岸の火事のように思えるかもしれない。しかし、自分の人生を自分で決める権利自分の体に関することは自分で決める権利は、誰にとっても等しく大切なもの。

SNSで簡単に情報発信ができる現代において、声なき声を拾い上げ、社会全体で議論していくことが重要になっている。たとえば、生理や妊娠、出産に関する正しい知識を身につけ、オープンに話せる環境を作る。避妊の選択肢を増やし、誰もが安心して子どもを産み育てられる社会を目指す。それは、未来を担う世代への責任であり、より良い社会を築くための第一歩になるのではないだろうか。

今回のアメリカの事例は、私たちに選択することの重さ、そして自分たちの未来を自分たちで考えていくことの大切さをあらためて突きつけている。

👀 GenZ's Eye 👀

自分の身体の処遇を自身で決める、という考え方はさまざまな難解な問いを生むこととなりました。妊娠中絶を認めるかどうか、はこの考え方を議論するなかで中心となるトピックです。

“妊娠中絶’’という母体の選択の自由を尊重すべきなのか、生まれてくる子どもの生きる権利を守るべきなのか。答えのない問いに私たちはどのように立ち向かっていくべきなのかが問われているのではないでしょうか。

Top image: © iStock.com/bymuratdeniz
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