ヘンリー王子が再び教えてくれる「傷ついた心」を癒す方法
誰にも打ち明けられないような「心の傷」がひとつ、ふたつ。生きていくということはそれを消化することなんだろうけれど、上手くいかないことのほうが多い。
お金や地位があるから解決できるかといえば、そうでもない。なぜなら、この問題に関しては、ロイヤルファミリーのメンバーだって同じだから。「辛い経験は抱え込むより言葉にして話したほうが良い」と、今誰よりも訴えているのはイギリスのヘンリー王子ではないだろうか。
まだ12歳という若さで母ダイアナ妃を失い、精神的に苦しんだ過去を持つ彼が、先日メンタルヘルスについて、再びメディアで語った。
心を開くには
「1人じゃない」と思えること
3歳年上の兄ウィリアム王子とさえ、母を亡くした悲しみを大人になるまで、ずっと共有できずにいたという。あの事故が起きた1997年、多感な思春期を迎えた二人にとってのショックは想像に難くない。
だが、その悲しみは世界中が共有するものとなり、ヘンリー王子を含むロイヤルたちに関心の目が注がれた。葬儀で多くの視線が槍のように突き刺さるなか、母親の棺の後を追わなければいけなかった時のことを、彼は先日「Newsweek」のインタビューで「苦痛な経験」として振り返っている。
「たとえそれが母の葬儀の場であろうと、子どもにさせるような事ではなかったと思います」
こう強調するほど、当時の体験がその後の彼の生き方に影響を及ぼしたのは明らかだろう。どんなときもロイヤルファミリーとして振るまい、大衆の目にさらされながら、精神的なストレスが年輪のように刻まれていったのではないだろうか。
そんなヘンリー王子の心に転機が訪れた。ヘリコプターの操縦士としてアフガニスタンの前線に派遣された時のことだった、と以下「Forces TV」で語っている。
「同じような経験をした若者たちと出会ったのです。苦しんでそして回復していった人たち。そこで自分はひとりじゃないことに気づきました。そうしたら、問題を解決するためには抱えているだけじゃなくて、誰かに助けを求めなくては、と初めて思えたのです。
自分を助けることで相手も助けることができる。これはとてもパワフルで重要なことだと思います」
ヘンリー王子の言葉は
なぜ、心に響く?
正直にいえば、私は彼に対してかなりの親近感を覚えた。最近の彼の言動を耳目にするたび思うのは、ロイヤルメンバーにもかかわらず、私たち一般人に近い目線まで降りてきて話をしている、ということだ。
実際、「Newsweek」のインタビューでも「王室のメンバーで王か女王になりたがっている人がいるだろうか?そうは思わない」と話していたり、地元のスーパーマーケットで買い物をするなど、できるだけ平凡な生活をすることを心がけていることも語っていた。
「母はあらゆる方法で一般的な暮らしとは何かを教えてくれました。一緒にホームレス生活をする人たちにも会いに行きましたし。現実離れしてこなかったことは、本当に感謝しなければいけません。今、私と兄が送っている実際の生活を知ったら、きっと周囲は驚くと思いますよ」
母親の死の悲しみが尾をひくように、一時はパーティー三味の生活もパパラッチされていたヘンリー王子。誤解を恐れずにいえば、名前を聞いただけで、正直未だにこちらのイメージが頭に浮かんでしまう人もいるはず。
だからこそ彼の心境の変化はとても大きいし、メンタルヘルスのために呼びかけている言葉に重みを感じ、スーッと心に入ってくるのかもしれない。
ダイアナ妃の遺志を継ぐ
「人のための取り組み」
傷はすぐには癒えない。だからこそ…
ヘンリー王子は、ウィリアム王子とキャサリン妃と共に立ち上げた「Heads Together」を通してメンタルヘルスについて「話すことの大切さ」を呼びかけている。
辛い気持ちを口にしたところで、すぐには傷は癒えないかもしれない。それでも、誰かにそれを打ち明けることで、少しでも心が軽くなっり、ひとりじゃないと思うことができれば……再び時計の針を動かすことができるんじゃないだろうか。過去に苦しみ葛藤した後、今は多くの人に手を差し伸べているヘンリー王子を見ているとそんな風に感じる。
きっと今後も率先して、イギリスの若者たちのみならず、幅広い世代のロールモデルになってくれるはずだ。もしかしたら、それこそ母ダイアナ妃から受け継いだ“ロイヤルとしての信念”なのかもしれない。