「夢を接続し会話する」実験、ついに成功

「夢で好きな人と話せたら……」 誰もが一度は抱く願いが、近い将来現実になるかもしれない。夢の中でコミュニケーションを取るというSF映画のような技術が、今まさに実現しようとしている。

夢で「単語の送受信」に成功

今年9月、カリフォルニアのスタートアップ企業「REMspace」が、世界初の快挙を成し遂げた。なんと、明晰夢を通して離れた場所にいる2人の人間が単語の送受信に成功したという。

実験の詳細を報じた米メディア「UNILAD」によると、まず被験者に専用の機器を装着し、明晰夢を誘導。一方が明晰夢の状態に入ると、サーバーがランダムに生成した「Remmyo語(筋電図ベースの言語)」の単語を、イヤホンを通して送信した。

すると驚くべきことに、被験者は夢の中で単語を認識し、発話。目覚めた後に被験者が伝えた単語は、実際に送信された単語と紛れもなく一致していたという。しかも、この実験は地理的に異なる場所で行われており、物理的な距離を超えたコミュニケーションの可能性も示唆されている。

夢の中で外部からの情報を認識し、コミュニケーションをとる。まるで映画『インセプション』の世界を彷彿とさせる技術だが、これは脳波や筋電図などを利用したブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)技術の進歩なくしては実現しなかっただろう。

夢のコミュニケーションは
メタバースを超えるか?

REMspaceはこの技術を“AIに続く巨大産業”と位置づけ、2025年までに明晰夢におけるリアルタイムコミュニケーションの実現を目指している。これが実現すれば、単なる言葉のやり取りを超えた、まったく新しいコミュニケーションが生まれることだろう。

例えば、遠く離れた場所にいる恋人同士が、夢の中で同じ景色を見ながら語り合ったり、言葉では伝えきれない感情や感覚を共有したり……。五感を伴った没入感の高いコミュニケーションは、Facebookが提唱するメタバースの概念をも凌駕する。

しかし、夢のコミュニケーションの実現には技術的な課題だけでなく、倫理的な問題やプライバシー保護といった課題も山積している。「夢」という極めてパーソナルな空間へのアクセスは、個人のアイデンティティや自由意志といった根源的な問題にも関わってくるからだ。

それでも、夢が持つ可能性は計り知れない。夢の中で過去のトラウマを克服したり、創造性を刺激して革新的なアイデアを生み出したりといった、医療や芸術分野における応用も期待されている。

夢の中でコミュニケーションをとるという人類未踏の領域。それは、私たち人間の本質に迫る問いを投げかけると同時に、未来社会を大きく変革する可能性も秘めている。

 

映画『インセプション』のように、夢と現実の区別がつかなくなる日が来るかもしれないと思うと、少し身震いがする。夢の研究が進めば、睡眠のメカニズムや心の働きへの理解が深まり、精神疾患の治療や心の健康増進につながる可能性も。夢は単なる脳の活動なのか、それとも心の働きと深く関わっているのか……。

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