【ストレス社会の処方箋】犬が教えてくれる「シンプルだけど大切なこと」
人間関係、仕事、将来への不安……現代社会は、心をすり減らす出来事であふれている。心が疲弊し、ときに息苦しさを感じることもあるはず。そんな現代人に癒しを与え、人生を豊かに生きるヒントを与えてくれる存在がいる。それは、犬。
動物との触れ合いが人に癒しを与えることは広く知られているが、犬は単なる癒し以上の存在として、私たちに大切な人生の教訓を与えてくれる。
30年以上、獣医腫瘍医としての経験をもち『Sit, Stay, Heal: What Dogs Can Teach Us About Living Well』の著者、Renée Alsarraf氏は、「dvm360」の取材に対し「犬は私たち人間が思っている以上に深く理解してくれている」と語る。では、彼らはどう我々を理解してくれているのだろう。
犬のまなざしは
ありのままの自分を肯定する
「失敗するのが怖い」「周りの目が気になる」。そう感じてしまうのは、私たちが心のどこかで「他人にどう思われるか」を気にしているからかもしれない。しかし、Alsarraf氏によると「犬は決して私たちを批判したりしない」という。
彼女は、抗がん剤治療で辛い時期を過ごしていた際、愛犬の無償の愛に救われた経験を持つ。治療による脱毛や、何日も着替えていないパジャマ姿ですら、愛犬は彼女を変わらず愛してくれたそうだ。「犬にとって重要なのは、“今”一緒にいられる喜びだけ」と語るAlsarraf氏の言葉は、私たちが忘れかけていた純粋さを思い出させてくれる。
犬の瞳に映るシンプルな世界
Alsarraf氏はこの経験を通して、犬から多くの重要な教訓を得たという。その一つが、「犬は決して批判しない」ということ。
私たちは、失敗を恐れたり、周囲の目が気になったりして、なかなかありのままの自分でいることが難しい。しかし、犬は違う。彼らの視線は、決して私たちを評価したり、落胆させたりしない。ただそこにいるだけで、ありのままの私たちを受け入れ、愛してくれる。
一般社団法人「ペットフード協会」が2022年に実施した全国犬猫飼育実態調査によると、犬を飼育している人の約7割が、「犬は家族の一員」と感じているという。この数字は、犬が単なるペットではなく、家族同様に大切な存在として、人々の心に寄り添っていることを示していると言えるだろう。
競争社会における「共存」の価値
群れで生きる動物である犬から、人とのつながりの大切さをあらためて学んだともAlsarraf氏。犬は、厳しい自然界で生き抜くために、互いに協力し、支え合う本能的な行動様式をもつ。それは、現代社会を生きる私たちにとっても、重要な教訓を与えてくれているのではないか。
現代社会は、とかく個人主義とされがち。きらびやかな成功体験だけが注目され、競争をあおるような風潮もある。しかし、本当に大切なのは肩書きや成果ではなく、人と人との温かいつながりのなかで、支え合い、励まし合いながら生きていくことなのでは?
犬は、私たちに多くのことを教えてくれる。それは、難しい言葉ではなく、日々の行動を通して、そっと語りかけてくれるシンプルな“メッセージ”だ。彼らの純粋な愛情に触れることで、私たちは自分自身を見つめ直し、本当に大切なものに気づくことができるのかもしれない。
👀 GenZ's Eye 👀
長く一緒に暮らしていると、「ああしてくれたら」「こうしてくれたら」と無意識のうちに他者に対して期待を寄せてしまうことがあります。その点、そばに大好きな飼い主がいてくれるだけで、愛犬はなぜか誇らしげ。
共存はするけど、期待はしない。これこそが純粋な愛であり、人々がストレス社会を生き延びる秘訣なのかもしれませんね。