コイントスの裏に潜む「0.8%」の真実。確率50%は幻想だった……

表か裏か──。

運を左右する選択方法として、あるいは賭けごとの興奮を煽る手段として、「コイントス」は古くから人々の命運を決めてきた。その確率は常に50%完全にランダムであり、誰にも予測できないものだと信じられている。

けれど、もしその「常識」が覆るとしたら?

35万757回の検証
わずかな「偏り」が運命を変える

アムステルダム大学のFrantišek Bartoš氏率いる研究チームが、じつに350,757回ものコイントス実験を行い、衝撃的な事実を明らかにした。「Earth.com」に掲載された内容によると、なんとコインの表が出る確率は、私たちが信じて疑わなかった50%ではなく、わずかに高い50.8%だったという。

実験では、48人に46種類の硬貨を投げてもらい、その結果を記録。膨大なデータの分析から、ある興味深い傾向が浮かび上がった。それは、コインは完全にランダムに表裏が出るのではなく、投げ始める前に上を向いていた面と同じ面が出る確率が、わずかに高い傾向が見られたそうだ。研究チームはこの傾向を「同じ面バイアス」と指摘した。

「非ランダム性」を生み出す物理法則

では、この「同じ面が出る偏り」は、一体どのようにして生まれるのだろう。その謎を解き明かすカギは、2007年に提唱された物理モデル(D-H-Mモデル)にある。

物理モデルは、コイン投げにおける「角運動量」に着目する。コインが回転しながら空中に舞う際、その回転運動が表裏の確率に微妙な影響を与えるという。Bartoš氏らの研究チームが行ったシミュレーションでは、コインが表向きで投げ始められた場合、表が出る確率は51%と予測された。これは、実際の実験で得られた50.8%という数値と極めて近い。つまり、コイントスは単なる偶然ではなく、物理法則の影響を受けている可能性が高いと言える。

AI時代における
「ランダム」の再定義

研究結果が示唆するのは、コイントスの結果を左右する目に見えない力の存在だけではない。私たちの日常に深く浸透する「ランダム」という概念そのものへの、根源的な問いだ。

例えば、近年のトレンドとして、人工知能(AI)による意思決定が注目を集めている。膨大なデータとアルゴリズムに基づいて、人間の主観や感情を排除した、より客観的な判断が可能になると期待されるいっぽう、「AIは真の意味でランダムな選択をできるのか?」という新たな疑問も浮上している。

人間がランダムを意図したとしても、そこには過去の経験や無意識の偏見が入り込む余地がある。AIの場合、開発者の意図や学習データの偏りによって、特定の結果に偏る可能性も否定できない。

偶然を楽しむ私たちと
コントロールする未来

コイントスの0.8%は、取るに足らない誤差と捉えることもできるだろう。けれどこの“微細なズレ”は、私たちのランダムに対する認識を揺さぶり、そして「真の偶然性とは何か?」という深淵なテーマへと誘う。

もしかしたら、完璧なランダムは存在しないのかもしれない。それでも、私たちはコイントスに、運命の気まぐれさ、予測不能な展開への期待を託す。その一瞬のきらめきこそが、私たちにとっての「ランダム」であり、人生を彩るスパイスなのかもしれない。

👀 GenZ's Eye 👀

表を向けた状態で投げれば表が出る──。そんなこと言われたら、今度から出てほしい面を上にして投げてしまうこと間違いないです。はい、人間の弱い部分が出ました。

Top image: © iStock.com/derejeb
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